- 私のブログの記事の多くは医療に関わることです。
もしかしたら血圧が高めの方もいるのではないでしょうか?
今回は血圧を測る理由や、数値の意味についてのお話です。
血圧が高くて気になる方や興味がある方は、是非ご一読ください。
目次
血圧とはなにか
メディアなどでも良く言われてますね。
その理由を説明してもらおうとすると、
と、正確な理由を言えない方もいるのではないでしょうか?
血圧とはポンプである心臓から出た血液が、血管にかける圧力のことを指します。
水道のホースを例にしますと、蛇口が心臓、ホースが血管、流れ出る水が血液だとします。
蛇口を捻ると水道のホース内を伝って水が出ます。
蛇口を更に捻ったり、ホースを細めたりすると、水のホースに対する圧(力)が増します。
この圧力が血圧です。
何で血圧は上がるのか?
血液には酸素や栄養素が豊富に含まれています。
血液を身体の隅々にまで送り届けなければ、細胞は栄養不足で壊死してしまいます。
身体の細胞の壊死は生死に関わる程に重要な事です。
こういった細胞壊死で有名な疾患では、心筋梗塞があります。
血液を短時間で身体の隅々まで送り届けるには、ポンプから出てくる血液に勢いが必要です。
勢い良く血液が出れば、血管にかかる圧力は必然的に高くなります。
血圧がある程度高くないと、身体の隅々まで血液を送り届ける事が難しくなってしまいます。
高過ぎると何故いけないのか?
また水道のホースに例えてみましょう。
蛇口が心臓、ホースが血管、流れ出る水が血液だとします。
ホースから水が出ている箇所を細めるとどうなるでしょう?
きっと水は行き場を失い、ホースの中の圧力は強まると思いますが、破れはしないでしょう。
これはホースが頑丈に出来ているからです。
もし、ホースの素材が脆ければどうなるでしょうか?
きっと亀裂が入ったり、穴が空いたりするかもしれません。
血管というものは身体の隅々まで巡り、血液の圧にも耐えられるように弾力性や伸縮性に優れたゴムのようなものです。
そんな弾力性に優れる血管でも、力を加え続ければやがて劣化し、次第に弾力性や伸縮性を失ってきます。

これは極論ですが、弾力がなくなってすぐにブチンと切れてしまう使い古しの輪ゴムをイメージしていただければわかりやすいと思います。
そんな血管に勢い良く血液を流すとどうなるでしょうか?
更に劣化が進み、弾力性や伸縮性を失い硬くなっていきます。
ホースの圧力が上がれば当然、根本の蛇口の方にも圧力が返ってきます。
ここでいう蛇口は身体でいうと心臓です。
例えの蛇口であれば金属製なので、多少圧力がかかり続けていても問題はありません。
しかし、心臓だとそうはいきません。
血管と同様に徐々に弾力性や伸縮性が弱くなります。
心臓は死ぬまで、休まず血液を送り出し続けます。
少しの圧力でも長期間にわたり、力を加え続ければ少なからず影響は出てしまいます。
その為、血圧が高いと心血管疾患の発症確率が上がってしまうので、血圧を下げないといけないという事になります。
急激な血圧低下の危険性
アナフィラキシーショックというものをご存知でしょうか?
身体が異物に対して急激な免疫反応を起こしてしまうことで起きるショックのことです。
ショックは、血圧の急激な低下に身体が耐えられなくなり死に至るというものです。
冬のお風呂場などで、脱衣所との気温差が大きすぎて大きな血圧の変動を起こし、倒れてしまう事故などがあります。これもショックに当たります。(ヒートショックといいます)
出血が酷すぎる場合の出血性ショック死も、血液が足りず低血圧になることが原因です。
上とか下ってなんのこと?
血圧を測るときに上とか下とかありますが、これは『収縮期血圧』と『拡張期血圧』のことを指します。
心臓は身体に血液を送り出すポンプの役割をしています。
心臓がギュッと収縮すると、心臓から勢い良く血液が送り出されます。
この時に送り出された血圧が『収縮期血圧』
収縮が終わった心臓は、次に送り出す血液を溜めながら拡張していきます。
この時の血圧が『拡張期血圧』です。
- 収縮期血圧 心臓の最初の収縮で送り出された血液の圧力
- 拡張期血圧 収縮期血圧後に送り出された血液の圧力
血圧が120/90mmHgの場合
『上:収縮期血圧が120mmHg』『 下:拡張期血圧が90mmHg』となります。
何で拡張期血圧が必要なのか?
実際の血管を流れる血液というのは、水が流れるように流れている訳ではありません。
その為、心臓の収縮が終わると同時に血液の流れは停滞する恐れがあります。
そのままだと心臓が収縮し終わる度に血流は停滞し、低血圧を繰り返す事になってしまいます。
先ほどお話したように、過度な低血圧や血流の停滞は身体にとって死活問題です。
心臓が2つあり、交互に血液を送り出せば解決しますが、残念ながら心臓は1つしかありません。
それを解消するために、身体は心臓以外のポンプを使います。
それは心臓から出た血液が最初に到達する太い血管です。
これは大動脈と呼ばれる血管です。
大動脈は心臓から出た血液が最初に通る血管です。
その為、大動脈は非常に弾力性や伸縮性に優れています。
心臓から出た血液の約半分が、大動脈に溜まります。
心臓が拡張して血液を送り出せない間は、大動脈に溜まってた血液が徐々に送り出されます。
水風船をイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。
水風船に水を溜めて、口を開いても少しの間は溜まった水を吐き出し続けます。
これと似たような事が大動脈でも起こっているのです。
- 心臓から勢いよく血液が出る。(収縮期血圧)
- 出た血液の約半分は大動脈に溜められる。
- 心臓が拡張している間に、大動脈に溜められた血液が徐々に吐き出される。(拡張期血圧)
心臓が1回収縮するごとに、この流れが繰り返されています。
上と下の差はなんで測るのか?
この質問は意外と多いです。
上と下の差は、大動脈の動脈硬化が進んでいるかどうかの指標で用いられます。
この、上と下の差の事を『脈圧』と呼びます。
一般的には65未満の脈圧であれば問題ないとされていますが、それ以上であれば動脈硬化が進んでいる可能性があるとされています。
上と下の差が広いと危険である理由
先ほどお話した上と下の血圧の意味を整理してみましょう。
『上』は心臓から出た血液の血圧
『下』は大動脈から出た血液の血圧
そして、全体的に血圧が高い状態が続くことは危険という事でした。
脈圧が小さいケース
上と下の差である脈圧が小さいケースはどういう時でしょうか?
おそらく、通常よりも下の血圧が高いケースが多いと思います。
つまり、『大動脈から出た血液の勢いが強い』ということです。
血液を勢い良く出せる血管というのは、弾力性や伸縮性が優れているということになります。
下の血圧が高い:大動脈の弾力性や伸縮性が優れている(大動脈は良い状態にある)
脈圧が大きいケース
では逆に、脈圧が大きいケースはどうでしょうか。
脈圧が高い場合は、おそらく下の血圧が低いケースが多いです。
下の血圧が低いということは、大動脈からの血液の勢いが小さい。
つまりそれは、大動脈の弾力性や伸縮性が失われてきている可能性があるということです。
- 脈圧が大きい:大動脈の弾力性や伸縮性が失われてきている可能性がある
- 脈圧が小さい:大動脈の弾力性や伸縮性が優れている
脈圧はあくまで今現在の動脈硬化のリスク指標であり、将来におけるリスク指標ではない事をご留意ください。
血圧を毎日測るのは何故?
というご質問もありますが、毎日測るのは平均をとるためでもあります。
血圧というのは常に変動しており、一定ではありません。
運動しているときの血圧は軽く200を越える事もありますし、緊張した時や不安に思うなどの精神的な事でも血圧は変動してしまいます。
診察時に病院の先生の前だと緊張して、一時的に血圧が上がることもありますし、逆に下がることだってあります。
たまに来る患者さんでこんな人もいます。
ハハッ!笑しゃないだろう… と思いますが、一時的な血圧の上昇であれば、人間そう簡単には死にません。
時の場合にもよりますが…。

でもこの患者さんのことはちょっと心配になりました。
血圧が一時的に高いということはさほど問題ではありません。
日常的に血圧が高い状態が続くことが問題となります。
その為、日常生活内での血圧を測定し、その平均を知る必要があるのです。
具体的にどれぐらいまで下げれば良いのか?
「高血圧治療ガイドライン2019」では、
- 診察時に140/90
- 家庭時に135/85
これを越えると高血圧症と言われます。
一般的な降圧目標は
- 75歳未満:130/80、
- 75歳以上:140/90
とされています。
血圧を下げる最大の目的は、心血管疾患のリスクを下げることです。
その人の生活習慣や基礎疾患の有無により目標とする血圧は変わってきます。
その為、先ほどの基準以下であっても、人によっては更に血圧を下げないと危険と判断される人もいるということです。
最後に
今回は血圧の基準や下げ方よりも、メカニズムに焦点を当ててお話をしました。
血圧を下げる目的は心血管疾患の予防がメインですので、血圧の数字ばかりに気をとられないように注意してくださいね。
ではでは。