アメリカ食品医薬品局(FDA)は、2021年10月26日にファイザー製の新型コロナウイルスワクチンを、5歳~12歳未満の子供向けに緊急使用許可に賛成すると発表しました。

FDAは日本でいう厚生労働省のようなものです。
そして、2021年11月現在、既にアメリカでは子ども向けのワクチン接種が進んでいます。
現在、ファイザー製のワクチンは12歳以上への使用が許可されています。
アメリカで12歳未満への使用が進めば、日本にもその流れがやってくる可能性は高いです。
我が子に新型コロナウイルスのワクチン接種をさせるか、悩む親御さんは多いと思います
今回は、子どもへの新型コロナワクチン接種に関するお話です。
お子さまのワクチン接種に悩む方は、今回のお話が参考になれば幸いです。
風邪の原因ウイルスにもコロナウイルス
コロナウイルスと聞くと、新型コロナウイルスを連想しますが、コロナウイルスは何種類もあります。
風邪の原因となっているウイルスの約1~2割はコロナウイルスです。
ほぼ全員がこのウイルスに5歳程までに感染し、免疫を獲得しています。
子どもにとっては風邪扱い
基礎疾患リスクを持つ人や高齢者にとっては、重症化リスクが大きいと言われる新型コロナウイルスですが、健康な子どもにとっては風邪とさほど変わりはありません。
10歳未満の感染者数が増えてきた時期もありましたが、重症化に至った子どもはほとんどおらず、10歳未満の死亡例はゼロです。
10代後半に2名の死亡例が確認されているのみとなっていますが、こちらの2名は重症化リスク因子があったとのことです。
リスク因子を持つ場合は注意が必要
普通の風邪のコロナウイルスでも
- 2歳未満
- 基礎疾患あり
- 高齢者
などの重症化リスクがある人には注意が必要です。
2歳未満の場合、まだ気道や肺が未発達なことが多いです。
その為、未発達な状態で呼吸器に炎症が続くと、呼吸器不全や後遺症等に繋がりやすくやります。
子どもが重症化しにくい理由
一般的には、子どもは高齢者と比べて重症化しにくいと言われています。
その理由はいくつかあります。
子どもの場合、
- 風邪のコロナウイルスに対する免疫が新型コロナウイルスに対しても有効に働く可能性がある。
- 感染症対策での生ワクチン接種を繰り返している為に、自然免疫が強化されている。
など、様々な要因が考えられます。

0~1歳までに接種するワクチンだけでも20種類以上あります。
『子どもは風邪の子』とは良く言ったもので、子どもは風邪には慣れていると言って良いでしょう。
お年寄りは重症化しやすい
逆に高齢者が重症化する理由は、
- 重症化のリスク因子(肥満、高血圧、糖尿病、呼吸器疾患など)が多い。
- 免疫系統の老化の為に、新型コロナウイルスのような、新たな病原体に効果的な対応が出来ず時間がかかる。
- 免疫の対応が間に合わない為、炎症反応が持続して重症化に至りやすくなる
このような理由があげられます。
お年寄りにありがちの、
これは免疫でも同じことが言えます。
昔の病原体に対する免疫は健在ですが、新しい病原体に対しては物覚えが悪いので、重症化しやすいということになります。
新型コロナウイルスのダメージは免疫次第
新型コロナウイルスは、本来は風邪のウイルスと同じようなものです。
- 子どもがかかれば、風邪の症状で済む事が多い。
- 思春期以降に感染した場合は、免疫が過剰に反応してしまうケースが多い。
- 高齢者や基礎疾患がある人が感染すると、重症化し命に関わるリスクがある。
このように感染する年齢層により症状が異なります。
その為、新型コロナウイルスの症状の重さは、ウイルスそのものの強さではなく、個人の免疫強度によって決まってきます。
新型コロナよりも他のウイルスの方が心配
子どもにとっての新型コロナを他の呼吸器感染症と比べてみると
新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスの重症度を致死率で表したデータがあります。
罹ったときの死亡率を表したものになります。
国や年齢毎の統一性にかける為、完全な比較にはなりませんが、新型コロナウイルスによって子供の命が失われる事は極めて稀だということがわかります。
子どもの場合、インフルエンザの致死率はコロナと比べて桁違いに高いです。
RSウイルスに関しては更に高い結果となっています。
人口10万人当たりの死亡率でも、新型コロナに比べてインフルエンザやRSウイルスの方が遥かに高い致死率ということになっています。
メディアでは新型コロナウイルスに焦点が向いている為に、RSウイルスが流行しても大した話題になっていないことが現状です。
新型コロナウイルスは、子どもにとっては基本的に風邪の域を出ないことがわかります。
子どものワクチン接種は社会の為
かつてのインフルエンザワクチン接種
ワクチン接種をすれば、新型コロナウイルスが身体の中に侵入してもすぐに免疫が反応してくれる事になります。
そして、家族間による感染リスクを下げることにも繋がります。
新型コロナウイルスの厄介なところは、身体的ではなく社会的にも影響を与えてしまうところです。
それも自分だけではなく周囲の人間にも及びます。
かつて日本では、1962年~1987年までの約15年間は学童に対してのインフルエンザワクチンの接種は強制でした。
しかし、
などの意見により半強制に変わり、1994年以降は廃止になった経緯があります。
その結果、学級閉鎖が相次ぎました。
その後、ワクチンが見直され、任意接種に切り替えた時点から学級閉鎖の件数が改善されました。
このような過去があります。
子どもの感染拡大を抑制することは、結果的には社会への流行を食い止める事にも繋がります。
過去にインフルエンザ流行で、学童へのワクチン接種が進んだ結果、インフルエンザによる高齢者の死亡数が減った記録もあります。
経済的に自立した大人であればとにかく、子どもは1人きりでは生きていけません。
保育園や幼稚園、小学校、友達との交流や家族など、必ず誰かしらと接することになります。
子どもはあらゆることに興味津々で、どこでも触り手に取ります。
感情を表に出しやすい為に、飛沫も多い為、大人よりも感染が拡大しやすいと言えます。
感染拡大の流れ
インフルエンザでは、学校の流行が家庭に持ち込まれ、それが社会の流行に繋がる恐れがあります。
逆に、社会の流行が家庭に持ち込まれる恐れもあります。
それは、新型コロナウイルスの場合も同様です。
社会の流行が家庭に持ち込まれ、それが子どもの感染に繋がり、学校などで流行するケースが多いです。
日本小児科学会によると、2021年5月11日時点で、子どもの先行感染者の約80%が家庭内での感染とされています。
さらに、家庭内感染のうち、両親や祖父母が先行感染者であった割合が約93%と、小児患者の大部分が成人からの感染であることが示されています。
新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスも、高齢者が重症化しやすい点は同じです。
しかし、新型コロナウイルスは大人には多いですが、子どもには多くはありません。
大人は経済的にも仕事を休めないなど、自ら『密』に飛び込まなければならないケースが多いことが要因の1つにあげられます。
その為、インフルエンザよりも新型コロナウイルスの方が、社会から家庭に流行する傾向にあります。
子ども達は新型コロナに感染しても、風邪で済むケースが多く重症化することは稀です。
その為、感染対策や子どもへのワクチン接種は大人(社会)の為と言っても過言ではありません。
イギリスではこうしたことからも、濃厚接触者であっても、登校を拒否するようなことはなくなっています。
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メリットとデメリットを把握する
2021年6月に日本小児科学会は、
- 子供の感染の大多数は周囲の大人から感染している為、大人の感染対策が重要
- 重症化リスクを持つ子ども達のワクチンを推奨
- 健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(感染拡大予防等)とデメリット(副反応等)を本人と養育者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要
と提言しています。
その為、子ども達に接する職種の大人は、優先的にワクチン接種や特に感染対策が必要となります。
重症化リスクを持つ子ども
重症化リスクを持つ子ども達は、
- 先天性心疾患
- 肥満
- 重度の神経学的障害
- 慢性呼吸器不全
- ダウン症候群やその他の染色体異常
- 重度の発達障害
- 小児がんやその他の免疫不全状態
などとされています。
このような子ども達は、ワクチンの副反応で熱や倦怠感が出たりすると、辛くなることがあります。
しかし、ワクチンによる副反応よりも新型コロナウイルスにかかった時のリスクの方が脅威となります。
その為、主治医と良く相談し、体調を崩した時でもきちんと対処出来るようにする必要があります。
ワクチンのメリットとデメリットをしっかりと把握し、本人と養育者の両方が十分に理解し、納得の上で接種することが重要です。
健康な子どもへのメリットは少ない
圧倒的にメリットが大きい高齢者や、基礎疾患がある大人達と比べて、健康な子ども達のワクチン接種のメリットはさほど多くはありません。
子どもの感染の多くは、命に関わることは稀で、後遺症が残ることは少ないという報告もあります。
その反面、デメリットは少なくないでしょう。
ワクチンの副反応での痛みや熱は、高齢者と比べると多い傾向にあります。
アナフィラキシーは若い女性に多く、心筋炎や心膜炎は若い男性に多いとされています。
メリットが圧倒的に上回る大人とは状況が異なります。
健康な子ども(学童)であれば、急ぐ必要はありませんが、ハイリスクの子どもの場合は、主治医と相談の上で接種を検討してください。
12歳未満へのワクチン接種は?
現在、海外では生後6ヵ月~11歳への治験が実施されています。
大人量、2/3、1/3の量に分けて年齢別に有効で安全な量を確認しようとしていましたが、治験が進むにつれてかなり減量されています。

おそらく、効きすぎて副反応も強かったのだと推察されます。
現在、アメリカでは5~11歳にファイザー製ワクチンを、大人量の1/3の量(10μg)で接種が進められています。
日本でも対象年齢が引き下げられる可能性は高いです。
重症化リスクを持つ子どもにとっては良い知らせですが、健康な子どもにとっては十分な注意が必要になると考えられます。
乳幼児の副反応には注意が必要
副反応は年齢依存性のものである可能性があります。

若いほど副反応が出やすいということですね。
その為、乳幼児では注意が必要になるかもしれません。
小さい子どもでは、熱を出すと痙攣を起こすことがあります。
これは熱性けいれんと呼ばれています。
痙攣は通常数分以内に治まりますが、稀に痙攣が続いてしまうことがあり、これは重積発作と呼ばれています。
痙攣重積の後には脳症を起こすことも稀にあります。
熱性けいれんも重積も、日本の子どもは欧米の子と比べて発症しやすい傾向にあります。
ということには必ずしもなりませんので、乳幼児の副反応には注意すべきと考えられます。
子どものコロナワクチンの有効性
海外では90%の有効性が確認されていると報告されています。
大人の有効性も90%以上とされていますので、ほぼ同等と言えます。
5~11歳への臨床試験での投与量は、12歳以上への投与量の1/3と少量です。
と言う声は非常に多いです。
親の立場であれば、我が子に副反応の恐れがあるワクチンを打たせるのは不安でしょう。
しかし、
と言う声があるのも事実です。
この2つで悩む方は非常に多いと思います。
子どもへのワクチン接種が、インフルエンザワクチン接種のように義務ではなく任意なのであれば、副反応報告が出てから判断したいところです。
新型コロナウイルスは、健康な子どもにとっては風邪と変わりありません。
子どもの身体だけの問題に留まるのであれば、打たなくても問題はないでしょう。
しかし、周りの環境が複雑に絡み合うと、途端に選択肢が増えます。
その為、
- メリットとデメリットを天秤にかけたときに、メリットが優位であるようであれば接種。
- 明らかにデメリットが優位になるようであれば検討
このような選択が良いかもしれませんね。

まとめ
- 新型コロナウイルスは、健康な子どもとっては風邪と同じ
- 子どもにとってのワクチン接種は社会の為
- 重症化リスクを持つ場合は、主治医と相談
- 常にメリットとデメリットを考えて接種を検討する
最後に
ワクチン接種に感じては、個人、家族の裁量や価値観で左右されることが多いです。
その為、それぞれの考えに沿って、あらゆる情報を取捨選択する必要があります。
今後の情報にも目を光らせた方が良いかもしれませんね。
ではでは。
参考文献
長崎大学大学院歯薬学総合研究科 小児科学 森内浩幸教授 メディカルナレッジ講演より
ホーム|日本小児科学会 (jpeds.or.jp)