【ED】勃起不全治療薬の使い分け バイアグラ、レビトラ、シアリス

薬局業務
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここでは勃起不全治療薬の、バイアグラ、レビトラ、シアリスの使い分けをまとめています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

先にまとめ:大まかな使い分け

  • 有効性や安全性はいずれも同等
  • タダラフィルの副作用は背中の痛みが特徴的
  • 副作用の大半は一過性で軽度
  • 心血管系や抗真菌薬との併用には注意
  • タダラフィルが最も併用禁忌が少なく、抗不整脈薬との併用も可
  • いずれも重度の肝機能障害には禁忌
  • 腎機能に応じて用量調節の必要あり
  • 透析禁忌はバルデナフィルのみで、他は使用可
  • シルデナフィルは食後で効果が減弱
  • 食事の影響は、シルデナフィル>バルデナフィル=タダラフィル
  • いずれも性的刺激なしでは効果が出ない
  • 性的な興奮と無関係な勃起が4時間以上続くようであれば治療が必要
  • 性行為直前ではなく、1時間前の服用が望ましい

 

PDE-5阻害薬

性的な刺激があると、神経終末や内皮細胞からNO(一酸化窒素)が遊離されます。

このNOが海綿体内のcGMPを増加させ、血流量を増すことで勃起という生理減少を引き起こします。

しかし、この勃起に不可欠なcGMPを分解してしまう酵素があります。

 

それがPDE-5(ホスホジエステラーゼ5)と呼ばれる酵素です。

勃起不全治療薬はこのPDE-5を阻害してcGMPを増やし、勃起不全を治療することから、PDE-5阻害薬と総称されています。

主なお薬

勃起不全治療薬主に3つ使用されています。

  • シルデナフィル(バイアグラ)
  • バルデナフィル(レビドラ)
  • タダラフィル(シアリス)

 

薬理作用は3つとも同じで、海綿体のPDE-5(ホスホジエステラーゼ5)阻害による作用です。

 

シルデナフィル
(バイアグラ)
バルデナフィル
(レビトラ)
タダラフィル
(シアリス)
効能効果 勃起不全
用量 25~50mg 開始10mg最大20mg 開始10mg最大20mg
食事の影響 あり なし なし
併用禁忌 硝酸薬、sGC刺激剤、アミオダロン 硝酸薬、sGC刺激剤、抗HIV薬、抗真菌薬、抗不整脈薬 硝酸薬、sGC刺激剤
排泄経路 糞中 糞中 糞中・尿中
半減期(hr) 3.3 3.2 14~15

 

元々シルデナフィルは狭心症の薬として開発が進められていましたが、臨床試験では有効性が認められず、副作用の陰茎勃起が報告されてました。

そこで狭心症治療薬から勃起不全治療薬へ路線変更し開発を進め、日本でも1999年に勃起不全治療薬として承認されることになりました。

その後、2004年にバルデナフィル、2007年にタダラフィルが承認された経緯となっています。

 

むかたけ
むかたけ

路線変更考えた人は天才ですね

 

有効性や安全性

3剤間を直接比較した臨床試験はなくあくまでも報告という形になりますが、有効性や安全性はいずれも同等とされています。

その為、使い分けは食事の影響や半減期、副作用、相互作用等で左右されます

 

PDE-5阻害薬で有名な副作用は頭痛やほてり、消化不良、鼻閉、眼症状などがあげられます。

『バイアグラ飲んだ後、視界に違和感があった…』

などの話は有名ですね。

 

タダラフィルでは背中の痛みの頻度が他2剤よりも多く、特徴的な副作用と言われています。

仮に副作用が起きても、どれも一過性で軽度で済むことが大半です。

しかし、中には突発性難聴虚血性の視神経症などもあるので、副作用の疑いがある際はすぐに相談した方が良いでしょう。

 

相互作用

PDE-5阻害が血流に関わる薬理作用のため、心血管系のお薬との飲み合わせには注意が必要です。

中でも、狭心症発作時に使用するニトログリセリン系やその他のNO薬との併用は禁忌扱いとなっています。

 

むかたけ
むかたけ

過度な血圧低下の危険がありますのでね…

 

その他、脳梗塞や心筋梗塞をここ最近(6ヵ月以内)にした方も禁忌扱いです。

CYP3A4で主に代謝されるため、抗真菌薬との併用には注意です。

抗不整脈薬との併用に関しては、機序不明ですが、QTc延長が起きることがあります。

唯一タダラフィルは抗不整脈薬との相互作用がないとされています。

 

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肝・腎機能低下時

基本的には3剤とも重度の肝機能障害の人には禁忌扱いです。

主な代謝が肝臓になるため、軽度から中度の肝臓低下時に関しても、用量の調節を検討した方が良いでしょう。

むかたけ
むかたけ

健常人の最大量の半分以下で使うイメージですね。

PDE-5阻害薬は主に糞中に排泄されますが、腎機能低下時にはAUCやCmaxの増加が確認されていますので、腎機能に応じた調節が必要となります。

3剤の中でもバルデナフィルに限っては透析患者には使えず、禁忌となっています。

 

服薬指導の注意点

食事の影響

3剤の中でも食事の影響を受けやすいのはシルデナフィルです。

食後すぐに服用すると、AUCやCmaxが低下してしまいます。

 

むかたけ
むかたけ

薬効が薄くなり効果が遅れるということですね。

バルデナフィルとタダラフィルに関しては食事の影響は受けないとされています。

 

食事の影響は、

シルデナフィル>バルデナフィル=タダラフィル

イメージ的にはこのような形ですね。

 

飲んでも効かない?

『飲んだけどダメだったよ!?』

という方もいらっしゃいますが、PDE-5阻害薬は飲んだだけでは効果は実感出来ません。

 

いずれのお薬も『性的刺激』がないと効果はないのです。

 

勃起不全治療薬で思い違いをされている方の多くは、

『飲んだだけで元気になる!』

ということです。

 

その為、飲んだけど効果がなかったということでやめてしまう方もいます。

飲んで自動的に効果が出るわけではないことはしっかりと説明するようにしましょう。

 

むかたけ
むかたけ

ちなみに飲んだからといって性欲が増える訳でもありません。

 

逆に性的な興奮とは無関係に勃起が4時間以上続いてしまうようなら、何らかの治療が必要になりますので、すぐに医療機関に相談しましょう。

 

直前に服用

他にも、性行為の直前に服用する方もいらっしゃいます。

 

このようなケースも、

『飲んだけどダメだったよ!?』

ということになりやすいです。

 

内服薬の為、お薬が吸収されて陰茎部に効果が現れるまでにはタイムラグがあります。

そのタイムラグは約30分~1時間とされています。

 

その為、各PDE-5阻害薬の用法は

『性行為の約1時間前に服用』

とされています。

 

むかたけ
むかたけ

用法用量はしっかりと説明しましょう。

まとめ:大まかな使い分け

  • 有効性や安全性はいずれも同等
  • タダラフィルの副作用は背中の痛みが特徴的
  • 副作用の大半は一過性で軽度
  • 心血管系や抗真菌薬との併用には注意
  • タダラフィルが最も併用禁忌が少なく、抗不整脈薬との併用も可
  • いずれも重度の肝機能障害には禁忌
  • 腎機能に応じて用量調節の必要あり
  • 透析禁忌はバルデナフィルのみで、他は使用可
  • シルデナフィルは食後で効果が減弱
  • 食事の影響は、シルデナフィル>バルデナフィル=タダラフィル
  • いずれも性的刺激なしでは効果が出ない
  • 性的な興奮と無関係な勃起が4時間以上続くようであれば治療が必要
  • 性行為直前ではなく、1時間前の服用が望ましい

最後に

大まかな使い分けは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)

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