新型コロナウイルスの治療の1つとして、抗体カクテル療法と呼ばれるものがあります。
重症化リスクを下げるための治療法ですが、一体何なのでしょうか。
今回は抗体カクテル療法についてのお話です。
抗体カクテル療法とは
中和抗体薬療法と称されますが、抗体カクテル療法という呼び方の方が浸透しています。
複数の抗体を混ぜ合わせた治療法の為、カクテル療法と呼ばれています。
単一の抗体よりも効果は高いとされています。
抗体とは
ウイルスが感染・増殖するためには、ウイルスのスパイクタンパク質が、ヒトの細胞表面にある受容体に結合する必要があります。
抗体は人の免疫反応で作られる物質で、ウイルスの型に合わせて作られます。
抗体があることによって、ウイルスのスパイクタンパク質が受容体に結合することを防いでくれます。
製剤
現在、新型コロナウイルスで使用が認められている製剤は、ロナプリーブ(中外製薬)と呼ばれているものです。
ロナプリーブは『カシリビマブ』と『イムデビマブ』という2種類の抗体が含有されています。
流通量に限りがあるため、国(厚生労働相)が流通管理を担い、必要に応じ各都道府県へ配分しています。
各都道府県で対象者の基準は定められていますが、臨床試験時の基準を採用している都道府県が多いです。
※各都道府県により、対象者の条件が異なりますので、詳しくは各都道府県HPをご参考下さい。
対象者
新型コロナウイルス感染症陽性者で次に該当する方のうち、同意を得られた方が、抗体カクテル療法の対象者となります。
- 酸素投与を必要としないこと
- 投与日が発症日から7日以内であること
- 本剤(ロナプリーブ)の成分に対し重篤な過敏症の既往歴がないこと
上記に加え、次の重症化リスク因子を少なくとも一つ有していること
〈重症化リスク因子〉
- 50歳以上
- 肥満(BMI30以上)
- 心血管疾患(高血圧を含む)
- 慢性肺疾患(喘息を含む)
- 1型又は2型糖尿病
- 慢性腎障害
- 慢性肝疾患
- 免疫抑制状態
※各都道府県により、対象者の条件が異なりますので、詳しくは各都道府県HPをご参考下さい。
2021年11月4日に厚生労働省の専門部会は、濃厚接触者らへの発症予防薬として適応拡大することを了承しました。近く正式に特例承認される予定です。
→2021年11月5日に特例承認されました。
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効果
新型コロナウイルス感染症の軽症・中等症患者向けの治療で、重症化リスクを低減する効果ができるものという位置付けです。
あくまでも新型コロナウイルスの重症化を防ぐ事を目的としますので、重症化リスクが大きい人が対象者となります。
主なメカニズムは、抗体により新型コロナウイルスの細胞への侵入を防ぎ、増殖を抑えることです。
その為、身体の中のコロナウイルスが増え過ぎてしまっている場合は、充分な効果は望めません。
有効性
海外の臨床試験では、新型コロナウイルスによる感染症に関連のある入院又は理由を伴わない死亡のリスク減少率は70.4%という結果でした。
副作用
現在のところは目立った副作用はありません。
インフュージョンリアクション
インフュージョンリアクションとは、抗体製剤を投与したときに起こることがある体の反応で、過敏症やアレルギーのような症状の事を指します。
(発熱、悪寒、吐き気、不整脈、胸痛、胸の不快感、力が入らない、頭痛、じんま疹、全身のかゆみ、筋痛、喉の痛み、など)
海外の臨床試験では、アナフィラキシーショックは0%、インフュージョンリアクションは0.2%の発現率となっています。
発現率は非常に稀ですが、アナフィラキシーショックやインフュージョンリアクションなどは個人差が大きい為、注意が必要です。
まとめ
- 重症化リスクを抑えることを目的とする。
- 有効率は約70%
- コロナウイルスそのものを消失させる製剤ではない。
- 対象者は各都道府県によって異なる場合がある。
- インフュージョンリアクションに注意
最後に
抗体カクテル療法は、あくまで重症化を防ぐ目的として使用されます。
抗体カクテル療法を使用しても、その後は自身の体調や免疫により大きく左右されます。
日頃から感染予防や免疫力を上げる為に、規則正しい生活を心がける様にしましょう。
ではでは。
2021年11月4日に厚生労働省の専門部会は、濃厚接触者らへの発症予防薬として適応拡大することを了承しました。近く正式に特例承認される予定です。
→2021年11月5日に特例承認されました。
参考文献
ロナプリーブインタビューフォーム ロナプリーブ点滴静注セット300_1_1.pdf
抗体カクテル療法の提供(中和抗体薬) 東京都福祉保健局 (tokyo.lg.jp)
神奈川県における中和抗体薬治療(カクテル療法)の取組み – 神奈川県ホームページ (pref.kanagawa.jp)