皆さんは消毒用アルコールは日々使ってますか?
新型コロナウイルスの影響で、消毒用アルコールの使用回数は劇的に増えたのではないでしょうか?
今回は消毒用アルコールについてのお話です。
消毒用アルコールの濃度や使い方について紹介しています。
目次
何故アルコールが細菌やウイルスに効くのか?
細菌は細胞壁と呼ばれる膜、ウイルスはエンベロープと呼ばれる膜で包まれています。
アルコールにより膜の構造を変性させることで細胞やウイルスを殺菌、消毒するとされています。
その為、エンベロープを持たないノロウイルスなどにはアルコールは効きにくいのです。
同様の理由で、細胞壁をもたない細菌にもアルコールは効きにくいとされています。
ノロウイルスの処理でアルコールではなく次亜塩素酸が使われているのはこうした理由があるのです。

ちなみに新型コロナウイルスはエンベロープを持っていますので、消毒用アルコールは有効であるとされています。
70%以上でなければ効果がないのか?
アルコールの殺菌効果の至適濃度の範囲というものがあります。
日本薬局方では76.9~81.4%。WHOガイドラインでは60~80%とされています。
一部の抗酸菌でも72%以上でなければ効果がないものもあります。
その為、一般的に
『アルコールの度数は70%以上でなければ効果がない』
という声が聞こえてきますが、低濃度でも効果はあります。
厚生労働省でも消毒用アルコールの濃度は40%以上を推奨しています。
その為、
『市販のアルコール濃度が60%だから低すぎる!』
ということはないのです。
使い方に注意。
消毒用アルコールの使い方には注意が必要です。
消毒薬の効果は『濃度・接触時間・温度』に依存します。
温度に関しては気温などの外的要因が大きいため、自分で調節しづらいですが、基本的には温度が下がるほど殺菌作用は減弱します。
しかし、濃度と接触時間については調節可能です
40~80%のアルコールでは5分足らずで消毒出来ますが、それ以外の濃度ではそれ以上の時間がかかる事は頭に入れておいた方が良いでしょう。
何故濃度が高い方が時間がかかるのか?
先ほど消毒効果は『濃度・接触時間・温度』に依存するとお話しましたね。
ですが、高濃度(80%以上)の物では逆に死滅まで時間がかかってしまいます。(10~30分)
『さっきと話が違うじゃないか!( ゚Д゚)』
と怒られそうですが、これには理由があります。
重合体(ポリマー)の形成
70%が最も良いと言われている理由は、アルコールと水の配分が最も良く、殺菌に非常に効率的な重合体を形成するという点からなのです。
この状態が病原体の膜の変化を起こす前に浸透して、通過して内部まで損傷させる効果を持つのです。
消毒の効果は『濃度・接触時間・温度』とお話しましたね?
濃度が高すぎると浸透に必要な水分子が少なくなり浸透能力が落ちることがあります。
浸透能力の違いにより接触時間が少なくなってしまう為に、殺菌力が落ちる可能性があるということです。
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濃度に合わせた使い方をすれば充分。
市販の40%ぐらいの消毒用アルコールであっても、この原則を使えば充分に消毒効果は見込めます。
逆に80%以上の高濃度でも、使い方を誤れば消毒効果は減弱しますので、ご注意ください。
手指消毒
くどいようですが、消毒の原則は『濃度・接触時間・温度』に依存します。
つまり、細菌やウイルスが一定時間以上アルコールに接触していることが重要となります。
手指消毒でアルコールを手に刷り込むのは、皮膚にアルコールを浸透させて接触時間を増やす為でもあります。
ですので、手にアルコールを付けただけでおしまいにすると、消毒効果が有効でない可能性があります。
掃除
掃除にも消毒アルコールを使うケースがありますが、消毒の原則を理解していれば正しい消毒アルコールの使い方が自然にわかります。
対象に汚れが付着していると、接触の妨げとなる可能性があるため、汚れがある場合はまず汚れを除去します。
最後に消毒用アルコールを使用しましょう。
スプレーの消毒用アルコールを使用した後に、すぐに拭き取る掃除方法を行っている人がいます。
アルコールをすぐに拭き取ると、接触時間が極端に少なくなってしまいます。
拭き取るのではなく、アルコールを薄く拡げるように意識しましょう。
難しければ、拭き物にアルコールを染み込ませて拭いて下さい。
その後、一定時間はアルコールと病原体を接触させてください。
※40~80%アルコールを使用する場合は、数分程は接触させてください。
濃度が表示されていない場合
『濃度の事はわかったけど、そもそも成分に「%」が表示されてないから濃度がわからない!』
こんな場合もあるでしょう。

世の中には臭いをかいで推測する強者もいますが、購入する必要がありますし、現実的ではありませんね。
そんなときはやっぱり成分表を見てください。
消毒用アルコールの成分は大半が『水』と『エタノールorイソプロパノール』です。
成分表の記載に関しては法律で定められている部分があります。
『成分含量の多いものから順に記載する』
という定めがあります。
つまり、エタノールorイソプロパノールが水よりも先に記載されている場合は50%以上の濃度ということです。
この記載であれば、少なくても厚生労働省が推奨する40%以上の濃度にはなります。
逆であれば、50%以下の可能性が高いと判断してください。
最後に
いかがでしたでしょうか?
消毒用アルコールの濃度を気にするよりも、使い方に気を付けた方が良いと個人的には考えます。
皆さんも消毒用アルコールは正しく使いましょうね。
ではでは。
参考文献
花王-アルコールと殺菌の話-
厚生労働省ホームページ
今日の治療薬
(一財)食品分析開発センターSUNATEC-食品工場の微生物制御へのアルコールの利用技術-