先日、担当施設のスタッフさんから連絡がありました。
ということで、皮膚科に受診してもらった結果、やはり『疥癬(かいせん)』でした。
せっかくですので疥癬についてまとめてみました。
今回は疥癬治療についてのお話です。
疥癬の原因
疥癬の原因はヒゼンダニと呼ばれるダニです。
大きさはオスとメスで違い、メスの方が大きいです。
メスは0.4㎜でオスは0.2㎜です。
髪の毛の太さが0.1㎜前後なので、肉眼では見えるか見えないかですね( ゚Д゚)
身体に引っ付くのは主にメスの方になります。
メスが卵を産み付け、孵化することでどんどん増えていきます。
そんなエイ○アンのようなヒゼンダニですが、弱点はあります。
- 熱に弱い
- 人から離れると生きていけない
- 寒いと動きが鈍くなる
などなどです。
なので、基本的には人から人への感染です。
人の身体から離れた場合、数時間で取り付く力を失います。
基本的に人に感染するヒゼンダニは人を宿主にする特定のダニとなります。
その為、ペットから疥癬がうつることはありませんのでご安心下さい。

ノミのように跳ねもしないのでそこもご安心を。
疥癬トンネル
ヒゼンダニは足の吸盤を使って人にとりつきます。
そして、前述したように卵を生みながら進みます。
このヒゼンダニの通り道を『疥癬トンネル』と呼びますが、これは疥癬の特徴的な症状になります。
疥癬の病型分類 | マルホ 医療関係者向けサイト (maruho.co.jp)より
もし痒みが酷い状態で『疥癬トンネル』が確認された時は、疥癬を強く疑った方が良いでしょう。
手のひらや指の間にトンネルが出来ることが多く、肘や陰部、わきの下、おしりなどにも出来ることがあります。
通常と角化型
一般的に疥癬は2つに分けられます。
1つは通常の疥癬です。
そしてもう1つは『角化型』と呼ばれる疥癬です。
角化型は疥癬が重症化したものと思っていただいてOKです。
角化型疥癬はカキ殻状の角質が特徴的です。
通常 | 角化型 | |
ヒゼンダニの寄生数 | 1000以下(最大) ※患者の半数はメス成虫が5匹以下 |
100万~200万 ※1000万以上になる事も |
患者の免疫力 | 正常 | 低下している |
感染させる力 | 弱い | 非常に強い |
主な症状 | 疥癬トンネル、小丘疹、小結節 | 角質増殖、疥癬トンネル、小丘疹、小結節 |
症状の出やすいところ | 手指、胸、腹、太もも | 手、足など |
かゆみ | 強い(夜間→不眠) | 不定 |
通常であれば隔離の必要なし
通常疥癬か角化型疥癬で対処も異なります。
通常疥癬であれば部屋の隔離までは必要ありません。
しかし、角化型疥癬の場合は隔離の必要があります。
衣類、シーツなどは加熱処理をしたり、粘着テープなどで落屑を回収後、電気掃除機を丁寧にかけるなどの対処が必要になります。
通常疥癬 | 角化型 | |||
患者のサービス継続 | 職員の準備 (手袋やガウン) |
患者のサービス継続 | 職員の準備 (手袋やガウン) |
|
入所施設 (老人ホームやグループホーム等) |
〇 | × | 〇 (個室管理) |
〇 |
通所施設 (デイサービスや職場、学校等) |
〇 | × | 〇 (治療開始1~2週間) |
〇 |
在宅事業 (訪問等) |
〇 | × | 〇 (個室管理) |
〇 |
フロチャートは下記サイトがわかりやすかったです(‘ω’)ノ
疥癬対策マニュアル | マルホ 医療関係者向けサイト (maruho.co.jp)
確定診断出来ないことが多い
疥癬の診断として、ヒゼンダニの存在を確認する必要があります。
ものすごく痒みが酷く、疥癬疑いが濃厚な状態で受診しても、ヒゼンダニが確認出来なければ疥癬と診断されないケースもあります。

肉眼では見えないので、採取するポイント次第ではダニはいませんのでね…
ちなみにヒゼンダニが見つかって疥癬と診断される確率は10~60%です。
その為、1度受診して疥癬診断ではなかったことに安心して他の人に移ってしまうことは良くあります。
1度の受診で疥癬の診断がつかなくても、痒みが続くようであれば何度も受診して確認してもらいましょう。
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内服薬は1種類
疥癬の治療には内服薬と外用薬で対処します。
内服薬はイベルメクチンと呼ばれるお薬で、疥癬に有効な内服薬はこれしかありません。

イベルメクチンは感染中のヒゼンダニを死滅させる働きがあります。
飲み方は体重に応じた量を1回服用するだけでOKです。
食事の影響を受けやすいので、出来れば空腹時に服用します。
薬飲んだけど痒みが引かない
というケースが大半ですが、疥癬の痒みの大半は取りついたヒゼンダニの糞や脱皮の殻などのアレルギー反応によるものです。
その為、薬で死滅したヒゼンダニの死骸がアレルギー反応を起こして痒みが生じます。
皮膚のターンオーバーにより死骸などが落ちるまではしばらく痒みは続きます。

2~4週間は様子を見ましょう。
イベルメクチンを2回以上使用
検査で卵などが見つかり、複数回イベルメクチンを使用することもあります。
残念ながらイベルメクチンは成虫には効果がありますが、卵には効果がありません。
卵が孵化するのに3~5日かかります。
イベルメクチンは服用後も3~4日は効果がありますが、孵化したヒゼンダニにイベルメクチンが効かないということもあります。
その際は、最低でも1週間は間隔をあけてから服用しましょう。
ステロイド入り外用薬はNG
痒みに対しては外用薬で対応します。
良く使用されるのは、オイラックスです。
オイラックスクリームに関しては、保医発第0921001号により適用外使用が審査上認められているので大体はオイラックスクリームで対処することになります。
ということで、ステロイド外用薬を使いたくなりますが疥癬にはNGです。
ステロイドの免疫抑制作用により症状が悪化する恐れがあります。
その為、オイラックスHなどのステロイド入りはNGとなります。
症状を確認しながら臨機応変に対応しましょう。
いつまで気を付ける?
内服薬を使用すると他の人への感染力はほぼなくなります。
しかし、ヒゼンダニが生きている間や衣服やタオルなどからの感染の可能性もあります。
痒みがなくなるまでは疥癬の対処を続けるようにしましょう。
一般的には、2~4週間程で対策を解除することが多いです。
長引く際には再度受診するようにしましょう。
まとめ
- ヒトから離れると感染力激減
- 疥癬トンネルがあれば疥癬の可能性大
- 確定診断の確率は高くない
- 通常は隔離の必要はないが、角化型では隔離が必要
- 痒みは死骸や糞のアレルギー反応が大半
- イベルメクチンは卵には効かない
- イベルメクチンを複数回使用する場合は1週間は間隔を空けること
- 疥癬状態でのステロイド塗布はNG
- 内服後もタオルやバスマット等の共用には注意
最後に
1度疥癬が発生するとなかなか終わりません。
1つのフロアで疥癬騒ぎが収まるまで数カ月かかったこともあります。
疑いがあれば早めに受診するようにしましょうね(;^ω^)
参考になれば幸いです。
ではでは。
参考文献
疥癬(かいせん) 東京都福祉保健局 (tokyo.lg.jp)
疥癬対策マニュアル | マルホ 医療関係者向けサイト (maruho.co.jp)