【薬局業務】SDA、MARTA、DSS? 抗精神病薬の簡単な使い分け

薬局業務
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先日、後輩薬剤師からこんな相談がありました。

後輩

『抗精神病薬の違いがいまいちわからないです』

 

抗精神病薬って色々種類がありますよね~(;^ω^)

特に非定型抗精神病薬はアルファベットばかりでわかりにくくなるのもわかります。

 

今回は非定型抗精神病薬のSDA、MARTA、DSSの簡単な使い分けについてお話します。

非定型抗精神病薬の区別がつきにくい方の参考になれば幸いです。

 

【精神病】抗精神病薬の使い分け 定型抗精神病薬、SDA,DSA、MARTA、DSS
本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。ここでは抗精神病薬の定型抗精神病薬、SDA,DSA、MARTA、DSSの使い分けをまとめています。私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

以前の記事でも抗精神病薬の使い分けは紹介していますが、今回は大まかな使い分けのお話です(‘ω’)ノ

 

ドパミンとセロトニン

非定型抗精神病薬の使い分けを知るには、ドパミンとセロトニンの役割を知っておくことが重要です。

 

簡単にいうと、脳内でのドパミンやセロトニンは『モチベーション』や『精神安定』に関わるところに作用します。

 

ドパミン:
報酬系に作用し、物事に対する『モチベーション』を高める

セロトニン:
抑制系に働き、ドパミンやノルアドレナリンを調節する『精神安定』に関わる。

 

 

車で例えると、ドパミンはアクセル系でセロトニンはブレーキ系に該当する形です。

 

非定型抗精神病薬は大きくこの2つの神経伝達物質系に作用します。

 

なので、抗精神病薬においては、

ドパミン系:
陽性症状(幻覚,妄想,精神運動興奮など)

セロトニン系:
陰性症状(うつのような感情鈍麻や意欲低下など)

を選ぶことが多いです。

 

正確には、

陽性症状は中脳辺縁系のドパミン作動性神経の興奮によるもの。

陰性症状や認知機能低下は中脳皮質系のドパミン作動性神経の機能低下により発現する。

と言われています。

 

 

セロトニン作動性神経はドパミン作動性神経に対して抑制的に作用します。

その為、セロトニン作動性神経の分布が多い中脳皮質系では、セロトニンを阻害することによりドパミンの放出が保たれ陰性症状や認知機能障害が改善されます。

 

もしこれでこんがらがるようなら、

ドパミン系:陽性症状
セロトニン系:陰性症状

で、まずは区別してOKです(^ω^)

 

SDA

SDAは、serotonin dopamine antagonistと呼ばれるものです。

アンタゴニスト(antagonist)は阻害する意味です(‘ω’)ノ

 

なので、単純に

『セロトニンもドパミンも阻害する薬』

でOKです。

 

MARTA

MARTAは多元受容体作用抗精神病薬(Multi-acting Receptor Targeted Antipsychotics)と呼ばれるものです。

 

横文字だけじゃなくて日本語まで長いやーつですね…( ;∀;)

ぶっちゃけこれが一番混乱する原因になってる気がします…( 一一)

 

SDAはドパミンとセロトニンをメインで阻害する薬でしたが、MARTAはドパミンやセロトニン以外にヒスタミン系やムスカリン系など、様々な受容体(Multi-acting Receptor)を阻害する薬です。

 

なので、

『とりあえずセロトニンもドパミンも様々な受容体を阻害する薬』

というニュアンスでOKです。

 

DSS

DSSはDopamine System Stabilizerと呼ばれているものです。

ドパミン部分作動薬となります。

 

ドパミンが足りなければ補い、多ければ阻害するという薬です。

 

なので、

ドパミンの調整を図る薬

ととればOKです。

 

SDA,MARTA,DSSの特徴

各薬には薬効の特徴と副作用があり、それらを考慮して使い分けが行われています。

 

SDAの特徴

SDAは『セロトニンもドパミンも阻害する薬』です。

実は、SDAはドパミン阻害作用よりもセロトニン阻害作用の方が強めです。

その為、どちらかと言えば陽性症状よりも陰性症状の方に効果が出やすいと言えます。

 

現場では不穏時に処方されることが多いので、主に陽性症状時に使われますが…(*´Д`)

 

MARTAの特徴

MARTAは『とりあえずセロトニンもドパミンも様々な受容体を阻害する薬』です。

 

陽性症状と陰性症状のどちらにでも効果がありそうですが、SDAと比較して更にドパミンよりもセロトニン系の方が強めに作用する印象です。

 

なので、陽性症状よりも陰性症状に効きやすい薬となっています。

 

ドパミン系控えめなので、錐体外路症状などのパーキンソニズムが出やすい人向けと言えます。

 

特徴としては眠気や食欲亢進です。

これはムスカリン系やヒスタミン系など様々な受容体を阻害する副作用として現れます。

 

なので、現場では不眠であったり、不穏で寝てくれない人に向けて使うことが多いです。

 

抗うつ薬と使用意図が似ていることもあるので、オランザピンに関してはうつ病や双極性障害の適応もあります。

逆にMARTAでうつ病の適応があるのはオランザピンのみなので、ご注意ください。

 

食欲亢進作用が特徴的ですので、基本的に糖尿病患者には禁忌となっています。

ちなみにこの食欲亢進作用からの血糖コントロール不良は5HT₂c受容体阻害作用や抗ヒスタミン作用が原因で食欲が亢進し、グルコーストランスポーターの低下から末梢細胞への糖の蓄積を阻害することが原因とされていますが、詳細はよくわかっていません。

 

糖尿病性ケトアシドーシスに関しては全く危険因子のない症例での糖尿病性ケトアシドーシス発症の報告があり、また薬剤の投与量が少量でも発症したという報告もあったそうです。

う~ん…原因わからんですね(*´Д`)

 

ただ、糖尿病性ケトアシドーシスは血糖コントロール不良状態に感染症が契機となって発症することが多いと考えられていますので、肺炎とか感染症関連には注意した方が良いでしょう。

 

DSSの特徴

DSSは『ドパミンの調整を図る薬』です。

 

一見、ドパミン系にしか作用しなさそうですがそういうわけでもありません。

5HT₁A受容体部分アゴニスト作用、5HT₂A受容体アンタゴニスト作用があり、セロトニン系にも作用してドパミン系の調整を図ります。

 

ちなみに5HT₁A受容体や5HT₂A受容体は陰性症状や認知機能に関わる受容体です。

 

ドパミンもセロトニンにも部分的に作用するので、非常に治療域が広く副作用も少ないことが特徴です。

 

セロトニン系を介してドパミンの調整をうまく図ってくれるので、統合失調症だけでなくうつ病や他の適応もあります。※アリピプラゾールのみ

 

副作用は少なめですが、部分的にとはいえドパミン刺激作用を持っています。

その為か鎮静作用は弱めで消化器症状や不眠症状が現れることがあります。

 

使い分け

SDA:『セロトニンもドパミンも阻害する薬』

定型抗精神病薬に比べれば陽性症状よりも陰性症状向きの薬ですが、MARTAやDSSに比べるとまだ陽性症状向きと言えます。

なので、現場では不穏症状に対して良く使用されています。

錐体外路症状の心配がある人は避けた方が良いでしょう。

 

MARTA:『とりあえずセロトニンもドパミンも様々な受容体を阻害する薬』

SDAに比べると陽性症状よりも陰性症状よりな薬となっています。

現場では、副作用の眠気を利用して、夜中不穏で寝てくれない人に良く使う印象です。

食欲亢進の副作用があるので、糖尿病には禁忌です。

予備軍の患者であっても避けた方が無難です。

 

DSS:『ドパミンの調整を図る薬』
ドパミンもセロトニンにも部分的に作用するので、非常に治療域が広く副作用も少ないです。

セロトニン系を介してもドパミン系の調整を図るので、実質陽性症状にも陰性症状にも効きますが、うつに対しては治療抵抗性のみが適応です。※アリピプラゾールのみ

 

現場では、そこまでひどくない気分の乱れに使ってみたり、とりあえず使ってみて様子みようという使い勝手の良い薬な印象です。

 

最後に

簡単に使い分けをご紹介しましたが、あくまでも使い分けが現場が私の職場圏なのでご参考程度に(^_^;)

非定型抗精神病薬の区別がつきにくい方の参考になれば幸いです。

ではでは。

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