皆様は飲む日焼け止めというものをご存知でしょうか?
服用することで日焼け止めの効果が得られるというものです。
日焼け止めというと、外出前にお肌に塗るイメージが強いかと思います。
塗るのではなく、飲む日焼け止めに効果はあるのでしょうか?
少し調べてみました。
日焼けの経過
日焼けは主に2段階の経過を辿ります
サンバーン
大量の太陽光線を浴びた後に、肌が赤くなり、酷い人だと火傷のようになるケースもあります。

むかたけの代表的なサンバーンです
サンタン
紫外線を浴びた後、皮膚が黒くなる現象のことです。
日焼けの最中に黒くなる場合(即時型)や、2~3日後に表皮内にメラニン色素が産生されて生じるケース(遅延型)があります。
即時型は数時間程度で元に戻る事が多いですが、遅延型の場合は、継続的にメラニン色素が産生されるため、皮膚色が元に戻るまでに数ヶ月かかります。1)
メラニン色素による暗色化は表皮による酸化作用によって生じます。
塗る日焼け止め
日焼け止めはこの紫外線をお肌から防御することで、その効果を発揮してくれます。
日焼け止めには主に2種類の製剤をバランス良く配合することで、防御力を発揮します。
紫外線吸収剤
紫外線から吸収したエネルギーを熱、蛍光あるいは燐光などに転換して放出する製剤です。
紫外線のエネルギーを別の形で放出して、お肌まで届かないように出来るということです。
紫外線散乱剤
酸化チタンや酸化亜鉛などの、金属酸化物がよく使われています。
金属による高い屈折率による、光の散乱・反射が防御メカニズムとなります。2)
日焼け止めのSPFやPAとは何とか
SPF
Sun Protection Factor(サンプロテクションファクター)の略で、紫外線によって起こる急性の炎症(サンバーン)の防止効果の程度を表しています。
SPFの数値単位は、20分~25分を1単位とします。
つまり、「SPF1」は何もつけない状態より、20~25分程日焼けするのを遅らせるということになります。
「SPF10」で計算すると、約20分×10=200分=3時間~4時間は日焼け止め効果があるということになります。
PA
Protection grade of UVA(プロテクショングレイドオブUVA)の略で、UVA(長波長紫外線)防止効果の程度を意味します。防止効果の程度は+、++、+++、++++の4種類で表し、+が多いほどその防止効果は高くなります。
「SPF」「PA」とは? | カネボウ化粧品 (kanebo-cosmetics.co.jp)より
MED
MEDは24時間後に皮膚に紅斑を生じさせるのに必要な最小紫外線量のことをさします。
日焼け止めの臨床効果で良く使われる値で、
「MEDが〇倍になったので日焼け止め効果がある」
といった表現が使われます。
言い換えると、日焼けに必要な紫外線量が増えたので、日焼け止めとしての効果があるということになります。
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飲む日焼け止めの効果
飲む日焼け止めの主成分はアスタキサンチンと呼ばれる成分です。
このアスタキサンチンは自然界の甲殻類や魚類の成分として広く存在しているもので、非常に強い抗酸化力を持っているとされています。
このアスタキサンチン含有飲料を使った実験は数多くあります。
- お肌のくすみが気になる30~50代の日本人女性20名を対象に、アスタキサンチン3㎎摂取群とプラセボ群に分けました。
それぞれ2ヵ月後のお肌の影響を確認。お肌の水分量や粘弾性、キメの項目でプラセボと比べて有意に優れていた。 - 20代~30代の女性にアスタキサンチン3mgを1ヶ月摂取で、紫外線によるお肌の暗色化の軽減が報告。4)
- アスタキサンチン4㎎の摂取を2ヵ月間行った結果では、シワやお肌の保湿性および粘弾性に効果があった事の報告。5)
- 健康成人にアスタキサンチン6mgの摂取を2か月間行った結果、シワ、お肌の粘弾性および水分蒸発量の減少が有意に確認できた報告。6)

多くの実験で効果が確認出来ているようですね。
お肌のバリア機能が低下してしまうと、皮膚の水分量も減少してしまいます。
皮膚の水分量はお肌の粘弾性やキメに直結します。
アスタキサンチンの摂取によりバリア機能が維持され、皮膚からの水分量の減少が抑えられることで、キメの改善に繋がっているとされています。
具体的には、紫外線により誘発される炎症性物質(インターロイキンやプロスタグランジン)の分泌をアスタキサンチンにより抑えられることがメカニズムとして報告されています。3)
報告に基づいたアスタキサンチンの効果
- 炎症性物質を抑えることで、お肌のバリア機能を維持。
- バリア機能の維持により水分を保持することで、日焼けを軽減する
- 抗酸化作用でメラニンによる暗色化を防ぐ
実際に日焼け効果は期待できるのか?
某アスタキサンチンのサプリメントでも
『プラセボと比較してMEDが5倍になった』
と同様の表現をしています。
しかし、MEDが5倍になったのは確かでも、日焼け止めとしての効果が十分にあるかは疑問が残ります。
日本化粧品技術者会では、
『あるUVケア化粧品を塗布したときのMEDが、塗布しないときのMEDの何倍にあたるかを示す数字がSPFとなる。』
とされています。
化粧品用語集 | ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ (sccj-ifscc.com)より
プラセボと比べてMEDが5倍であるなら、SPFも5倍の数値になります。
SPFが5倍ということは、20分の5倍=100分間紫外線を遅らせる数値ということになります。
つまり、MEDが5倍ということはSPF5と同じぐらいということになります。
日常的な紫外線対策で使用する日焼け止めはSPF10以下です。
SPF5であるならば、塗る日焼け止めと比べると効果は劣ると推測されます。
全く日焼け止め効果がないわけではなさそうですが、日焼け止めとして使用する際は、塗る日焼け止めと併用する形が最も良いのかもしれません。
あくまでも自身の水分量による日焼けの軽減なので、飲まないよりは飲んだ方が効果あるというスタンスの方が良さそうです。
内側から暗色化を防ぐ為に、飲む日焼け止めを使うとより効果的と思われます。
まとめ
- 絶対的に日焼けや暗色化を抑えるものではない。
- 自分の保湿力等を利用して日焼けを防ぐタイプなので、日焼けそのものに対しては塗るタイプを使用した方が効果は高い。
- お肌の水分量に左右されるため、外出前だけの服用では日焼けに対する効果は難しい。
- バリア機能の効果を期待するには、少なくても1ヶ月以上の継続服用が必要

「飲まないよりは飲んだ方が良い」
「塗る日焼け止めの効果が足りない場合に使用」
「日焼け止め<お肌の手入れで使用」
このような印象になりました。
最後に
私も海に行くことが多いので、日焼け止めはよく使っています。
日焼け止めを使わないと悲惨なことになる環境などでは、少しでも日焼けは防ぎたくなるものです。
日焼けが酷かったり、気になる人は検討してみても良いかと思います。
ではでは。
参考文献
1)日焼け止めの科学(1994)
2)日焼け止め化粧料の特性と有用性評価(2014)
3)アスタキサンチン含有飲料の肌におよぼす影響(2016)
4)紫外線による成人女性の肌の暗色化に対する内服アスタキサンチンの軽減効果(2011)
5)Phetcharat L,Wongsuphaswat K,Winther K.The effectiveness of a standardized rose hip powder,containing seeds and shells of Rosa canina,on cell longevity,skin wrinkles,moisture,and elasticity.Clinical Interventions in Aging 2015;10:1849-1856
6)Tominaga K,Hongo N,Karato M,et al.Cosmetic benefits of astaxanthin on humans subjects.Acta Biochimica Plonica 2012;59(1):43-47.