本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。
ここでは漢方薬の『半夏厚朴湯』を大まかに解説しています。
私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。
※うちの薬局で取り扱っている漢方が『ツムラ』製ですので、ツムラの漢方薬で紹介させていただいてます。
先にまとめ
- 喉のつっかえとストレスには鉄板
- 向精神薬と併用するケースもあり
- めまいや妊婦のつわりにも
- のどの違和感への有効率は77%
- 効果が出るまで1か月は服用するのがおすすめ
- 食前、白湯での服用がおすすめ
漢方の考え方
漢方薬は東洋医学に分類される医療です。
薬理作用のメカニズムに基づく西洋医学に対して、東洋医学は経験則に基づく医療なイメージです。
要は、
というイメージです(;^ω^)

…あくまでもわたしのイメージですが…
気・血・水
そんな経験則の面が強い漢方薬治療で基本的な考えが『気・血・水』です。
ここでいう気・血・水は通常医療で使われる『血』や『水』とは少しニュアンスが異なります。
気:目には見えないエネルギー、活力(元気がないとかで使う『気』のこと)
血:体に栄養を与える液体全般の事。
水:体を潤す液体全般の事(鼻水とか色々)
ヒトの体は『気・血・水』のバランスが保たれてると健康でいられるというのが、漢方医療の大原則となっています。
逆に、『気・血・水』の内どれか一つでも過剰だったり足りなかったりすると、途端に体は不調になります。

『気』が足りないと元気がなく、食欲がないとか。
逆に『気』が過剰だと、イライラするとかですね。
これらの『気・血・水』の是正を漢方薬で行い、バランス調節して体を健康な状態に傾けようという考えです。
その為、
『漢方薬で病気を治す』
のではなく、
『漢方薬で体を健康状態にして、体本来の治癒力で病気を治す』
といった考え方になります。
よく、
と言われているのは、このようなことも理由の1つとなっています。
半夏厚朴湯
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
効能又は効果:
気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症、不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症
組成
本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス2.5gを含有する。
日局ハンゲ 6.0g
日局ブクリョウ 5.0g
日局コウボク 3.0g
日局ソヨウ 2.0g
日局ショウキョウ 1.0g
各生薬の働き:
ハンゲ:鎮咳、制吐作用
ブクリョウ:利水、鎮静、健胃
コウボク:健胃、鎮咳、鎮痰
ソヨウ:発汗、鎮咳、利尿、健胃
ショウキョウ:発汗、解熱作用
主に鎮咳や健胃、利水など、上半身の症状を改善する生薬が集められていますね。
ハンゲ、コウボク、ソヨウ、ショウキョウで『気』の流れを改善し、ブクリョウで『水』の流れを改善する形ですね。
喉のつっかえ
こうした症状の時によく使われます。
喉から胸にかけて違和感があり、不安や不眠などの精神的症状があるときに有効です。
このパターンが多いです。
その為、『喉のつっかえ』と『ストレス』がくれば半夏厚朴湯が鉄板の漢方薬です。
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つっかえ
漢方の世界では、『気』が胸から喉辺りで滞ってしまっているので違和感を感じるとされています。
『気』が滞ってしまい症状が現れることは『気滞』と呼ばれています。
半夏厚朴湯はこの滞っている『気』を散らすことで症状を和らげてくれるとされています。
この『気』を散らし、『気滞』を改善することで精神を安定させる効果が期待出来ます。
その為、不眠や不安などで向精神薬と併用するケースも多いです。
『水』の調整
半夏厚朴湯には、ブクリョウやコウボク、ソヨウといった健胃や利水に関わる生薬が含まれています。
吐き気やめまいにも効果があるので、妊婦さんのつわりにも使われることがあります。

他で効果がなければ、一度試してみてみるのも良いですね。
嗄声症状
嗄声症状があるときにも半夏厚朴湯は有効ですが、喉を潤してくれる麦門冬湯も嗄声には有効です。
- 喉から胸にかけての違和感あり→半夏厚朴湯
- 乾いた咳が出やすい→麦門冬湯
このような使い分けが多いです。
咳のタイプは2つ
という疑問を持つ方もいると思います。
乾いた咳は『痰が絡まない咳』のことです。
乾いた咳は乾性咳嗽と呼ばれていて、湿った咳は湿性咳嗽と呼ばれています。
痰絡みの有無でタイプが分けられます。
1ヶ月は続けてみるのがおすすめ
半夏厚朴湯の喉から胸にかけての違和感への効果を検証したデータもあります。
半夏厚朴湯7.5g分3を2~6週間続けたところ、77.4%に有効であったとされています。
検証では2~6週間続けたとのことですので、1ヶ月は続けてみて欲しいですね(‘ω’)ノ
食前・白湯での服用がおすすめ
半夏厚朴湯にはコウボクやショウキョウといった、芳香性健胃薬が含まれています。
漢方薬の吸収、効果を高めてくれますので、ジュースやオブラートでの服用は避けた方が良く効きます。
ちなみに、『○○湯』という名前の漢方薬は、大体白湯での服用がおすすめとなっています。
あくまでもおすすめというだけですので、お水とかでも構いません(^^)d
まとめ
- 喉のつっかえとストレスには鉄板
- 向精神薬と併用するケースもあり
- めまいや妊婦のつわりにも
- のどの違和感への有効率は77%
- 効果が出るまで1か月は服用するのがおすすめ
- 食前、白湯での服用がおすすめ
最後に
大まかな解説は以上となります。
医療業務の参考になれば幸いです。
ではでは。
参考文献
ツムラ半夏厚朴湯添付文書
漢方製剤活用の手引き‐証の把握と処方鑑別のために‐
洋漢統合処方からみた漢方製剤保険診療マニュアル改定ポケット版