【漢方薬】芍薬甘草湯ってなに?どんな時に使うの?

薬局業務
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここでは漢方薬の『芍薬甘草湯』を大まかに解説しています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

※うちの薬局で取り扱っている漢方が『ツムラ』製ですので、ツムラの漢方薬で紹介させていただいてます。

 

先にまとめ

  • 多くはこむら返り(足がつる時)に使う
  • 短期の使用が基本
  • 骨格筋にも平滑筋にも効果あり
  • 予防としても使える
  • カンゾウの分量は葛根湯の3倍
  • 偽アルドステロン症などの副作用に注意
  • 7.5g量を14日間継続で偽アルドステロン症リスクが7.7%

 

漢方の考え方

漢方薬は東洋医学に分類される医療です。

薬理作用のメカニズムに基づく西洋医学に対して、東洋医学は経験則に基づく医療なイメージです。

 

要は、

 

『なんかよくわからんけど、○○な人に使ったら効いた!』

 

というイメージです(;^ω^)

 

むかたけ
むかたけ

…あくまでもわたしのイメージですが…

 

気・血・水

そんな経験則の面が強い漢方薬治療で基本的な考えが『気・血・水』です。

 

ここでいう気・血・水は通常医療で使われる『血』や『水』とは少しニュアンスが異なります。

 

気:目には見えないエネルギー、活力(元気がないとかで使う『気』のこと)

血:体に栄養を与える液体全般の事。

水:体を潤す液体全般の事(鼻水とか色々)

 

ヒトの体は『気・血・水』のバランスが保たれてると健康でいられるというのが、漢方医療の大原則となっています。

 

逆に、『気・血・水』の内どれか一つでも過剰だったり足りなかったりすると、途端に体は不調になります。

 

むかたけ
むかたけ

『気』が足りないと元気がなく、食欲がないとか。
逆に『気』が過剰だと、イライラするとかですね。

 

これらの『気・血・水』の是正を漢方薬で行い、バランス調節して体を健康な状態に傾けようという考えです。

 

その為、

『漢方薬で病気を治す』

のではなく、

 

『漢方薬で体を健康状態にして、体本来の治癒力で病気を治す』

 

といった考え方になります。

 

よく、

『漢方薬で体質を改善する』

 

と言われているのは、このようなことも理由の1つとなっています。

 

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芍薬甘草湯

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

効能又は効果:
急激におこる筋肉のけいれんを伴う痛、筋肉・関節痛、胃痛、腹痛

 

『こむら返り(足がつる時)に使う』

と言っても良いぐらい、頓服で処方されることが多いです。

 

本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス2.5gを含有する。
日局カンゾウ   6.0g
日局シャクヤク  6.0g

 

組成は生薬が2つだけのシンプルな内容となっています。

 

各生薬の働き:

  • カンゾウ:抗炎症、鎮痛
  • シャクヤク:鎮痛、鎮痙

 

痛みやけいれんを抑えるのに特化した生薬が配合されています。

 

ちなみに芍薬甘草湯は骨格筋にも平滑筋にも効果があります。

…使ったことありませんが、もしかしたら『しゃっくり』とかにも効くかもしれませんね(;・∀・)

 

禁忌:

  • アルドステロン症の患者
  • ミオパシーのある患者
  • 低カリウム血症のある患者

 

となっています。

 

基本的にはカンゾウの成分である『グリチルリチン酸』がステロイド骨格に似ている為、ステロイドと似た作用があります。

 

その為、副作用もステロイドと似ていて、偽アルドステロン症が有名です。

 

偽アルドステロン症:
ステロイド様の副作用により、体のミネラル調節に不具合が起きてしまいます。
高ナトリウム血症、低カリウム血症に体が傾きやすくなります。
浮腫みや血圧上昇などの症状が現れることが多いです。

 

他の漢方薬もカンゾウは入っていますが、偽アルドステロン症や低カリウム血症は芍薬甘草湯では特に注意が必要です。

 

なぜなら、芍薬甘草湯のカンゾウの分量は葛根湯の3倍です。

※一日量で葛根湯のカンゾウ量は約0.4g、芍薬甘草湯のカンゾウ量は1.2g

 

芍薬甘草湯1包飲むのは、葛根湯3包を一気飲みするのと同じ感じです(;^ω^)

なので、芍薬甘草湯は、

 

『筋肉のけいれんを抑える効果に全振りしている漢方薬』

 

と言っても過言ではありません。

 

1包内のカンゾウの量が多いので、頓服で使用されることが多いお薬ですが、連続的に使う場合は注意が必要となります。

 

芍薬甘草湯7.5g(カンゾウ(甘草)6.0gシャクヤク(芍薬)6.0gの割合)を14日間連続で服用した結果、65例中5例に偽アルドステロン症が発覚した報告もあります。

 

むかたけ
むかたけ

65例中5例は約7.7%ですね。

 

芍薬甘草湯の特性上、こむら返りの予防として使用しても効果があります。

朝方にこむら返りが起きやすい人は、寝る前に服用して予防効果を期待することも可能です。

 

しかし、連日服用すると副作用の心配もありますので、常用しない方が良いでしょう。

 

むかたけ
むかたけ

あくまで頓服薬の立ち位置ですね。

 

はじめに覚えた漢方薬

ちなみに芍薬甘草湯は、私が薬剤師成り立てだった時に真っ先に覚えた漢方薬です。

 

理由は、

  • 組成がシンプル
  • 使用意図がわかりやすい
  • 使用率が高い
  • 漢方薬で注意しないといけない副作用の代表格

などなどです。

 

先輩薬剤師から、

パイセン

とりあえず、他の漢方薬は後回しで良いから『芍薬甘草湯』だけはすぐ覚えろ。

 

と言われたぐらいです。

 

まとめ

  • 多くはこむら返り(足がつる時)に使う
  • 短期の使用が基本
  • 骨格筋にも平滑筋にも効果あり
  • 予防としても使える
  • カンゾウの分量は葛根湯の3倍
  • 偽アルドステロン症などの副作用に注意
  • 7.5g量を14日間継続で偽アルドステロン症リスクが7.7%

 

最後に

大まかな解説は以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
ツムラ芍薬甘草湯添付文書
漢方製剤活用の手引き‐証の把握と処方鑑別のために‐
洋漢統合処方からみた漢方製剤保険診療マニュアル改定ポケット版

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