最近、後輩薬剤師からこんなことを言われました。
ドクマチールとグラマリールって、たまにごっちゃになりますよね~
確かに…(;^ω^)
今でこそ使い分けが頭の中ではっきりしていますが、私も薬剤師に成り立ての時は混乱してました。
今回はドクマチールとグラマリールの違いについてのお話です。
ドグマチールの方が先輩
歴史的に見てみれば、1979年にドグマチールで精神疾患の適応承認がされ、その後1987年にグラマリールで精神疾患の適応承認がされました。
なので、約10年ほど早くドグマチールの方が精神疾患で使われはじめています。
一番の違い
一番の違いは消化器疾患への承認の有無です。
ドグマチール(スルピリド)もグラマリール(チアプリド)も、ベンザミド系の薬剤です。
その為、2つとも精神疾患の適応があります。
しかし、消化器疾患の適応があるのはドグマチールのみとなっています。
実は、ドグマチールは1979年に精神疾患の適応承認がされましたが、それより前の1973年に消化器疾患(胃・十二指腸潰瘍)の適応承認がされていました。
その為、ドグマチールは元々は消化器疾患のお薬としてスタートした歴史があります。
治療域が違う
次の違いは、適応の範囲です。
ドグマチールとグラマリールは似たお薬です。
しかし、ドグマチールの方が適応の範囲は広いです。
ドグマチール (スルピリド) |
グラマリール (チアプリド) |
|
効能効果 | ・胃、十二指腸潰瘍 ・統合失調症 ・うつ病、うつ状態 |
・脳梗塞後遺症に伴う攻撃的行為,精神興奮,徘徊,せん妄の改善 ・特発性ジスキネジア及びパーキンソニズムに伴うジスキネジア |
用法 | ・胃、十二指腸潰瘍 1日150mg を 分3 ・統合失調症 1 日 300~600mg を分割投与(1200mgまで) ・うつ病、うつ状態 1 日 150~300mgを分割投与(600mgまで) |
1日 75~150mg を分 3 パーキンソニズムに伴うジスキネジアの患者では,1 日 1 回,25mg から投与が望ましい |
半減期(hr) | 3 | 3.91 |
グラマリールは適応上は『脳梗塞後遺症に伴う…』やジスキネジアなど、使用する上で何らかの制限があります。
しかし、ドグマチールは胃・十二指腸潰瘍だけではなく、統合失調症やうつ病・うつ状態など幅広く使用出来ることが特徴です。
分量で適応が異なる
ドグマチールは使用する分量で適応が変わるタイプのお薬です。
少量では消化器疾患に使用でき、高用量になると精神疾患に使用出来ます。
ドクマチール100mgと200mgは胃・十二指腸潰瘍の適応はありません。
その為、
『胃・十二指腸潰瘍の人に100mgを半分に割って50mgで調剤しよう!』
という調剤をすると、レセプトで切られる可能性がありますので、ご注意下さい。
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褐色細胞種に対して
褐色細胞種に対して禁忌となっている方はドグマチールです。
これはドグマチール(スルピリド)による急激な血圧上昇の恐れがあるからです。
グラマリールでは褐色細胞種の患者に対して禁忌にはなっていませんが、慎重投与扱いとなっています。
薬理作用や動態に大きな差はなし
薬理作用や薬物動態に関しては2つとも大きな差はありません。
精神疾患に作用する際には、両者とも脳内のドパミン受容体に作用します。
主にD₂遮断作用ですね。
ドグマチールの消化器作用に関しては、視床下部交感神経中枢に作用し、胃粘膜血流の改善や防御因子の分泌亢進、末梢D₂遮断による消化管運動促進作用などがあります。
胃粘膜への血流改善により、食欲改善効果もあると言われています。
その為、食欲がないうつの患者にはまず少量のドグマチールを使用して食欲の改善を図る使い方をするケースが多いです。
食事による栄養でうつ病が改善するケースもありますしね。
血中濃度の立ち上がりや半減期なども似た形となっています。
ドグマチール (スルピリド) |
グラマリール (チアプリド) |
|
効能効果 | ・胃、十二指腸潰瘍 ・統合失調症 ・うつ病、うつ状態 |
・脳梗塞後遺症に伴う攻撃的行為,精神興奮,徘徊,せん妄の改善 ・特発性ジスキネジア及びパーキンソニズムに伴うジスキネジア |
用法 | ・胃、十二指腸潰瘍 1日150mg を 分3 ・統合失調症 1 日 300~600mg を分割投与(1200mgまで) ・うつ病、うつ状態 1 日 150~300mgを分割投与(600mgまで) |
1日 75~150mg を分 3 パーキンソニズムに伴うジスキネジアの患者では,1 日 1 回,25mg から投与が望ましい |
半減期(hr) | 3 | 3.91 |
効果に優劣はある
グラマリールのインタビューフォームからの情報では、
『血液-脳関門の関与がないとされる部位での抗ドパミン作用はスルピリドより弱く,チアプリドの脳内への透過性はスルピリドに優る』
という一文があります。
つまり、
消化管等の抗ドパミン作用はドグマチールが優勢
脳内への移行性はグラマリールが優勢
ということになっています。
まとめ
- 消化器適応はドグマチール
- ドクマチール100mgと200mgは胃・十二指腸潰瘍の適応はなし
- 褐色細胞腫に対しドグマチールは禁忌、グラマリールは慎重投与
- 末梢抗ドパミン作用はドグマチール>グラマリール
- 脳内への透過性はグラマリール優勢
最後に
うちの薬局でよく使われるのがドグマチールとグラマリールでしたので、今回はその違いについてのお話でした。
ご参考になれば幸いです。
ではでは。