先日薬局で働いてた時にこんなことがありました。
なんで保険証見せなきゃいけないのよ!?
よくある保険証提示するしない問題ですね。
薬局での保険証提示は義務なのかどうか?
今回は調剤薬局における保険証の提示に関するお話です。
保険証提示
病院でも見せたんだから別にいいでしょ!?
薬局側としても処方せんの内容を確認しないといけなくてですね…
という一連のやり取りはどこの調剤薬局さんでも1度はあると思います。
では、保険証の提示は法律で義務付けられているのでしょうか?
答えは、
『現在は、保険証以外に確認出来る物があれば義務ではない』
です。
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健康保険法
保険証の確認関連は健康保険法施行規則第53条で定められています。
第五十三条
法第六十三条第三項の厚生労働省令で定める方法は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるもの(被保険者が法第七十四条第一項第二号又は第三号の規定の適用を受ける場合(当該適用を受けることについて、保険医療機関等(法第六十三条第三項各号に掲げる病院又は診療所をいう。第九十八条の二第七項、第百三条の二第五項及び第六項、第百五条第四項及び第五項並びに第百六条第一項を除き、以下同じ。)、保険薬局等(法第六十三条第三項各号に掲げる薬局をいう。以下同じ。)又は指定訪問看護事業者(法第八十八条第一項に規定する指定訪問看護事業者をいう。以下同じ。)において、電子的確認(保険者に対し、被保険者の資格に係る情報(保険給付に係る費用の請求に必要な情報を含む。)の照会を行い、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により、保険者から回答を受けた当該情報により確認することをいう。以下同じ。)を受けることができる場合を除く。)にあっては、当該各号に定めるもの及び高齢受給者証)を提出する方法とする。
一 保険医療機関等から療養を受けようとする場合又は指定訪問看護事業者から指定訪問看護(法第八十八条第一項に規定する指定訪問看護をいう。以下同じ。)を受けようとする場合 被保険者証
二 保険薬局等から療養を受けようとする場合 被保険者証又は処方せん
(令二厚労令一六一・全改)
一見、保険証を確認しなければならないように思えます。
しかし、よく見ると保険薬局については
『被保険者証 又は 処方せん』
となっています。
法律用語で『又は』とは、『どちらかいずれを選んでも良い』という意味となります。
法文読解 基礎力養成講座 その1 ~又は・若しくは~ | 法規と条例 | DOWAエコジャーナル (dowa-ecoj.jp)
なので極論、
『保険証か処方せん、どちらか一方の確認でOK』
ということになります。
- 薬局以外の保険医療機関→保険証の確認義務
- 薬局→保険証又は処方せんの確認義務
ちなみに保険薬剤師が守るべきルールを定めた『薬担規則(保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則)』にも同様の内容が明記されています。
保険薬局は、被保険者及び被保険者であつた者並びにこれらの者の被扶養者である患者(以下単に「患者」という。)から療養の給付を受けることを求められた場合には、その者の提出する処方箋が健康保険法 (大正十一年法律第七十号。以下「法」という。)第六十三条第三項 各号に掲げる病院又は診療所において健康保険の診療に従事している医師又は歯科医師(以下「保険医等」という。)が交付した処方箋であること及びその処方箋、法第三条第十三項に規定する電子資格確認(以下「電子資格確認」という。)又は患者の提出する被保険者証によつて療養の給付を受ける資格があることを確認しなければならない。ただし、緊急やむを得ない事由によつて療養の給付を受ける資格があることの確認を行うことができない患者であつて、療養の給付を受ける資格が明らかなものについては、この限りでない。
薬担規則に沿えば、
- 処方箋
- 電子資格(保険証付きマイナンバーカード)
- 保険証
上記のいずれかで確認しなければならないということですね
なので、ここでも極論は処方せんで確認が出来ればOKということになります。
あと、以前に保険証の確認義務が明記されていた健康保険法施行規則第54条に関しては、現在では改定が行われ一部が削除されています。
打消し線の部分が改定により削除されました。
打消し線の部分こそが保険証提出義務の根拠であったとも言えます。
なので、保険証の提出に関しては義務だったものが、他に確認出来る物があれば義務ではなくなったということになります。
でも結局は確認した方がよい
『保険証又は処方せん』などという書き方ですので、処方せんさえだせば保険証は見せなくてもよいことになります。
なので、
処方せんがあれば保険証見せる必要ないじゃん!
義務じゃないなら見せないよ私は!
という方が続出すると思います。
しかし、処方せんの内容が100%正しいとは限りません。
その処方せんは保険証を提出した筈の保険医療機関で作成されたものです。
その為、
『処方せんの保険内容に間違いはない筈』
と、理屈上はこのようになります。
しかし、
現場では処方せんの保険内容は間違えていることが多いです。
保険証を確認する業務や処方作成の業務の大半はヒトの手で行っています。
ヒトの手である以上は
- 記載ミス
- 有効期限確認ミス
- 保険証切り替えミス
などなど、ヒューマンエラーは起こり得ます。
その為、いくら保険医療機関で保険証を確認したとは言え、処方せんに記載されている保険内容が間違えることは良くあるのです。
つまり、その処方せんが保険適応になるかどうかを、保険薬局は義務でなくても確認する必要があります。
保険内容を間違えると保険先にお金の請求できないですしね
ということで、処方せんの保険内容が正しいかどうかの確認には結果として保険証が必要になります。
『厳密に法的義務はないですが、必要なことです』
というちょっとややこしい感じになっています。
変わった時だけ確認
とはいっても毎回毎回保険証を確認してるとさすがに業務に差し支えます。
保険証見せて下さい
保険証見せて下さい
保険証見せて下さい
もう今月3回目の来局よ!
さすがに保険証の内容変わってないわよ!
ですよねー。
まぁでも保険証確認しないと薬渡せないんですよ~
受付するたびにこれだとさすがにね…( ;∀;)
保険証が変わるケースも頻回ではないことが多いですしね~。
しかも、基本的に保険調剤薬局に処方せんを持ってくる時は、病院などの医療機関で保険証を既に提出した後ということになります。
なので、
今日は病院さんで保険証出しました~?
という確認をとることも多いのです。
病院に保険証を見せた=処方せんの保険内容は更新されている。
と見なすことが出来ます。
薬局以外の保険医療機関は保険証確認義務が明記されてますしね
そういったこともあるので、
『保険証の内容が変わったらで良いので、必ず見せて下さいね』
というやり方の保険調剤薬局さんも多いのでしょうね(-ω-)/
最後に
薬局の保険証提出義務については、以前まではしっかりとした法的根拠がありました。
しかし、現在は改定が行われて厳密には義務ではなくなりました。
義務ではなくなったのですが、保険請求等の為に保険証提示はお願いしたいところですね。
薬局側の人間としては、求めがあれば怒らずに見せて貰えると大変ありがたく思います(;^ω^)
ではでは。