【代謝系】脂質異常症 スタチン系の使い分け

薬局業務
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここでは脂質異常症治療薬のスタチン系の使い分けをまとめています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

先にまとめ:大まかな特徴

  • LDL-C低下作用:スタンダードは20~30%、ストロングは40~50%
  • TG低下作用は10~20%と弱い
  • 用量を倍にしても効果は倍にはならない(6%ルール)
  • フルバスタチンのみ夕食後服用、それ以外は指定なし
  • プラバスタチンはCYP関与がない為、他薬剤と併用しやすい
  • 一般的に半減期はスタンダード(約2時間)<ストロング(約10時間以上)
  • アトルバスタチンには尿酸値低下作用が期待されている
  • アトルバスタチンは水溶性、3A4代謝なので、相互作用に注意
  • ピタバスタチン、ロスバスタチンは脂溶性だが、CYP関与なし(もしくはほぼない)
  • 安全性はスタンダードでもストロングでも差はない
  • 腎機能低下例はロスバスタチンのみ減量
  • 国内での試験ではストロング間で効果に差はないが、海外ではロスバスタチンの方が強い結果が出た
  • ロスバスタチンがHMG-CoA還元酵素との結合力が最も強力と言われている
  • LDL-C低下目的:ロスバスタチンが優先

脂質異常症治療薬の選択

脂質異常症の治療薬は主としてLDL-コレステロール(LDL-C)、もしくはトリグリセリド(TG)を低下させることを目標にします。

 

主にLDLーCを低下させる薬剤は、スタチン系や小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、陰イオン交換樹脂、プロブコールなどがあります。

また、TGを低下させる薬剤としては、フィブラート系や多価不飽和脂肪酸、ニコチン酸誘導体などがあります。

 

脂質異常症治療薬の薬効分類

日本動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017より

 

  • LDL高値(2a型):スタチンが第一選択、エゼチミブや陰イオンが第二選択
  • LDL,TG両方高め(2b型もしくは3型):スタチン系・フィブラート系・ニコチン酸の選択、または併用
  • TG高値(4型):フィブラート系が第一選択、ニコチン酸や多価不飽和脂肪酸が第二選択

 

スタチン系の使い分け

ストロングとスタンダード

スタチン系はコレステロール合成の律速酵素であるHMGーCoA還元酵素を拮抗的に阻害してコレステロール合成を阻害します。

 

現在の日本では、6種類のスタチンが承認されていてLDLーCを下げる作用の強さでスタンダードとストロングに分けることができます。

 

名前の通りですが、ストロングスタチンはスタンダードスタチンに比較してLDLーC低下作用が強力です。

 

LDLーCが高い場合はスタンダードやストロングにかかわらずスタチン系は第一選択で、管理目標や併用薬により薬剤が選択されていきます。

 

一般的には、スタンダードスタチンは LDLーCを20%~30%を低下させ、ストロングスタチンを40%~50%低下させる作用を持っていると言われています。

 

ロスバスタチンの通常量5㎎の方が、プラバスタチンの一日最大量20 ㎎よりも強力であるという報告があります。

むかたけ
むかたけ

ロスバスタチン通常量>プラバスタチンMAX量ですね。

 

スタチンの6%ルール

スタチン系の作用に関しては『スタチンの6%ルール』と呼ばれているものがあります。

これは、スタチン系の用量を2倍に増やしても、単純に2倍のLDLーC低下率が得られるわけではなく、6%程度の低下に留まることでそう呼ばれています。

 

スタチンのTG低下作用は弱め

肝臓でのコレステロール生合成低下は同時に、VLDL合成分泌の抑制を介してTGを低下をもたらしますが、その効果は10%~20%程度と言われています。

 

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スタチンは夕食後か?

スタンダードスタチンの血中半減期は約2時間ですが、ストロングスタチンに関しては約10時間以上と非常に長いです。

そのためプラバスタチンのように1日2回の服用が必要な製剤もあります。

 

スタンダードスタチンの中でも、フルバスタチンは夕食後の服用が必要といわれています。

 

よく、

医師
医師

『スタチン系に関しては夕食後に服用しなければいけない』

 

というような説明をされる方がいますが、これはスタンダードスタチンのフルバスタチンが当てはまる内容になっています。

 

ストロングスタチンに関して言えば、1日1回どのタイミングで服用してもLDLーCの低下の成績は変わらないと言われています。

 

代謝

スタンダード

スタンダードスタチンの中で水溶性のものはプラバスタチンのみです。

プラバスタチンはCYP関与がないため、他の薬剤との併用しやすいことが特徴です。

 

逆にスタンダードスタチンの中でもシンバスタチンは CYP3A4で代謝されるので、アゾール系抗真菌薬やリトナビルなどを服用している患者 は併用禁忌となるため、注意が必要です。

 

フルバスタチンとシンバスタチンは脂溶性でヒップ代謝に関わってくるため薬物間相互作用に注意する必要があります。

安全性においては、ストロングスタチンでもスタンダードスタチンでも差はないと言われています

 

ストロング

ストロングスタチンは現在アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンの3種類が承認されています。

最も古いものはアトルバスタチンで、世界的にも使用実績が豊富で広く使用されています。

 

アトルバスタチンの特徴は、尿酸低下効果が示唆されているということです。

アトルバスタチンに関しては CYP3A4で代謝されるため、薬物間相互作用が他の2剤と比べて多いことが特徴です。

 

ロスバスタチンは水溶性で用量幅が広く、CYPの影響をほとんど受けないため相互作用が少ないことが特徴です。

CYP2C9やCYP2C19で代謝されますが、寄与度はそんなには高くありません。

 

ピタバスタチンは脂溶性ですが、ロスバスタチンと同様にCYPの影響をほとんど受けません。

ロスバスタチンとピタバスタチンは免疫抑制薬のシクロスポリンと併用禁忌であることも注意しなければいけません。

 

副作用

一般的に、脂溶性の薬剤は細胞膜の透過性に優れているので組織移行性が高い反面、副作用が起こる可能性が高いということも念頭に置いておく必要があります。

 

ストロングスタチンの半減期においては、ロスバスタチンが最も高く20.2時間、ピタバスタチンは11時間、アトルバスタチンは9.4時間という形になっています。

 

薬剤名 性質 半減期(hr) 代謝
スタンダード プラバスタチン(メバロチン) 水溶性 2.7 CYP関与なし
フルバスタチン(ローコール) 脂溶性 1.3 CYP2C9
シンバスタチン(リポバス) 脂溶性 1.3 CYP3A4
ストロング ロスバスタチン(クレストール) 水溶性 20.2 CYP2C9,CYP2C19
ピタバスタチン(リバロ) 脂溶性 11 ほぼCYP関与なし
アトルバスタチン(リピトール) 脂溶性 9.4 CYP3A4

 

腎機能低下例への投与は、基本的にスタチン系はロスバスタチン以外は減量の必要はありません。

クレアチニンクリアランスが30未満の場合は、ロスバスタチンは2.5mgから開始し、最大量は5mgまでが推奨されています。

血症中濃度が3倍になった報告もありますで、注意が必要です。

ロスバスタチンが最も強力

『急性冠症候群診療ガイドライン 2018改訂版』では2次予防における脂質代謝異常改善薬投与の推奨として、ストロングスタチンを忍容可能な最大用量で投与することが第一選択であり、推奨度は最も高いとされています。

国内のガイドラインにおいてもストロングスタチンの3剤の使い分けについては明記されていません。

なので、総じてストロングスタチンは全て高コレステロール血症の第一選択とされています。

 

国内のストロングスタチン3剤の有効性を比較した試験では、ロスバスタチン(2.5㎎)、アトルバスタチン(10㎎)、ピタバスタチン(2㎎)で16週間服用した後のLDL-Cの変化率に有意差はみられなかったという報告があります。

ただ、海外ではロスバスタチン(5㎎/10㎎) はアトルバスタチン10㎎、プラバスタチン20㎎、シンバスタチン20㎎、との直接比較で有意にLDL-Cを低下させています。

 

ロスバスタチンは用量幅が広い為LDL-C値を大きく低下させる必要がある場合は有用だと思われています。

 

スタチン系の構造式を踏まえた基礎研究では、ロスバスタチンがコレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素との結合力が最も強力であることが示唆されています。

その為、LDL-Cの低下を目的とする場合は、ロスバスタチンを選択することが有用である可能性が高いと思われています。

まとめ:大まかな特徴

  • LDL-C低下作用:スタンダードは20~30%、ストロングは40~50%
  • TG低下作用は10~20%と弱い
  • 用量を倍にしても効果は倍にはならない(6%ルール)
  • フルバスタチンのみ夕食後服用、それ以外は指定なし
  • プラバスタチンはCYP関与がない為、他薬剤と併用しやすい
  • 一般的に半減期はスタンダード(約2時間)<ストロング(約10時間以上)
  • アトルバスタチンには尿酸値低下作用が期待されている
  • アトルバスタチンは水溶性、3A4代謝なので、相互作用に注意
  • ピタバスタチン、ロスバスタチンは脂溶性だが、CYP関与なし(もしくはほぼない)
  • 安全性はスタンダードでもストロングでも差はない
  • 腎機能低下例はロスバスタチンのみ減量
  • 国内での試験ではストロング間で効果に差はないが、海外ではロスバスタチンの方が強い結果が出た
  • ロスバスタチンがHMG-CoA還元酵素との結合力が最も強力と言われている
  • LDL-C低下目的:ロスバスタチンが優先

最後に

大まかな使い分けは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)

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