【糖尿病】DPP-4阻害薬の使い分け

薬局業務
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここでは糖尿病治療薬のDPP4-阻害薬の使い分けをまとめています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

先にまとめ:全体の使い分け

  • DPP-4阻害薬は単独投与での低血糖リスクは低い
  • エクアは、HbA1cの低下率が大きい報告あり
  • HbA1c改善に関しては、ジャヌビア≒エクア≒ネシーナ
  • エクアの肝障害を除き、DPP-4阻害薬の間で副作用に差はない
  • SU剤との併用で低血糖リスク増
  • ジゴキシンの併用には血中濃度に注意が必要
  • DPP4-阻害薬とACE阻害薬との併用で血管腫のリスク増
  • エクアとスイニーは1日2回投与が必要
  • トラゼンタとテネリアは腎機能低下時にも調節不要

糖尿病治療薬の選択

1型の場合はインスリン製剤が絶対的な適応になりますが、2型の場合は段階を踏みます。

いきなりSU剤を使うDr.もいますが、ガイドラインに沿うとビグアナイド系(メトホルミン)が第一選択になってます。

ちなみに『アメリカ糖尿病学会』『ヨーロッパ糖尿病学会』『日本糖尿病・生活習慣病ヒューマン学会』全部が推奨してますが、現場の主治医の判断に任せてる印象です。

 

ビグアナイド系(メトホルミン)は、インスリン分泌を促進することなく血糖を改善してくれます。

80歳以上や腎機能に問題があれば、DPP-4阻害薬も第一選択になります。

 

『糖尿病標準診療マニュアル』では、

  • 最初数ヶ月は食事・運動療法で様子を見ます。
  • それでダメなら薬を使います。
  • 薬を使う場合は基本的には1剤使って様子見。
  • 数ヶ月様子見てダメならもう1剤追加。

このような使い方をします。

 

詳しくはこちらをどうぞ。

糖尿病標準診療マニュアル – 一般社団法人 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会 (human-data.or.jp)

 

評価判定に一番使われる指標は、HbA1c<7%に近づいてるかどうかです。

  • 年齢や腎機能に問題なければ、ビグアナイドを選択。
  • ダメならDPP4阻害薬を上乗せ。
  • それでもダメなら、SU剤、SGLT2阻害薬、αグルコジターゼ阻害薬、チアゾリジン系などを組み合わせる。

このような形です。

 

ただ、心血管疾患の既往や心不全、微量アルブミン尿、蛋白尿、肥満を有する場合などには、SGLT2阻害薬を優先して使用する場合もあります。

また、eGFR が十分に保たれていない場合は GLP-1受容体作動薬の追加を推奨している場合もあります。

 

SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬による心血管イベントの抑制効果は、心血管疾患の低リスク者では微小との報告があります。

その為、患者の背景に応じて使用する薬剤も変わってくるので、現場のDrの判断になる形です。

 

ちなみに欧米人はインスリン抵抗性が多いのに対して、日本人はインスリン分泌不全が多いのが特徴です。

なので、まずは食事や運動で身体のインスリン機能の改善化を図ります。

 

 

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DPP-4阻害薬

DPP-4阻害薬は、食後に消化管から分泌されるインクレチンの血糖降下作用を利用した薬剤です。

食べ物を摂取すると消化管のインクレジンホルモンであるグルカゴン様ペプチド(GLP-1)グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)の分泌が促進されます。

 

GLP-1はグルコース刺激によりインスリン分泌を増強し血糖値を低下させるのに加え、グルカゴンの分泌阻害作用や胃排出の遅延や満腹感の誘発の作用を持ちます。

むかたけ
むかたけ

要は、GLP-1やGIPは血糖値を下げる作用があるということです。

 

しかし、GLP-1はDPP-4によって急速に分解されるので、血症中の半減期はわずか数分です。

 

そのため、DPP-4を阻害すると、活性型GLP-1の分解が抑制され血中のインスリン濃度の上昇と血糖値の低下が生じます。

DPP-4阻害薬の特徴

DPP-4阻害薬の特徴として、活性型のGLP-1および活性型のGIPの濃度を高めて、血糖値降下作用を発揮するため単独投与での低血糖リスクは低いです。

 

『糖尿病標準診療マニュアル』でも推奨されているように、薬剤が必要であればまずメトホルミンから開始して、それでも効果がみられない場合には DPP-4阻害薬を上乗せするといった治療ステップを踏むことが多いです。

ジャヌビア≒エクア≒ネシーナ

DPP-4阻害薬の中でも、ビルダグリプチン(エクア)はHbA1cの低下率が大きい事が報告されています。

DPP-4阻害薬同士を比較した報告はありませんが、シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ)、ビルダグリプチン(エクア)、アログリプチン(ネシーナ)を比較した試験ではHbA1c7.0%未満の達成率は3群ともに同等でした。

 

むかたけ
むかたけ

HbA1c改善に関しては、ジャヌビア≒エクア≒ネシーナの結果ですね。

 

DPP-4阻害薬自体は低血糖を起こしにくいですが 、SU剤との併用で重症低血糖を起こす報告が相次いだことから日本糖尿病学会では注意喚起がされています。

副作用

ビルダグリプチンは国内外で重篤な肝機能障害が報告されていて、唯一禁忌の項目に重度な肝機能障害と記載されています。

 

その他においては、DPP-4阻害薬の間で副作用に差はないとされています。

 

相互作用

相互作用については、基本的にDPP-4阻害薬に併用禁忌はありません。

しかし、シタグリプチンはジゴキシンとの併用でジゴキシンの血中濃度が上昇したとの報告があります

また、ビルダグリプチンはACE阻害薬との併用で血管腫の頻度が高くなった報告があります。

代謝

DPP-4阻害薬の作用時間は、半減期により比較することが可能です。

薬剤名 半減期(hr)
シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ) 9.6
エクア(ビルダグリプチン) 1.8
ネシーナ(アログリプチン) 17
トラゼンタ(リナグリプチン) 105
テネリア(テネグリプチン) 24
スイニー(アナグリプチン) 6.2
オングリザ(サキサグリプチン) 6.5

 

ビルダグリプチン(エクア)とアナグリプチン(スイニー)が1日2回製剤となっていて、それ以外は1日1回製剤となっています。

オングリザの活性代謝物の半減期は約7時間となっています。

 

腎機能低下例

DPP-4阻害薬は腎排泄型薬剤で腎機能障害時には用量の調節が必要ですが、リナグリプチン(トラゼンタ)は主に胆汁排泄型なので腎機能低下による用量調節が不要です。

トラゼンタ以外には、テネリアは腎排泄型ではありますが、こちらも腎機能低下時には用量調節不要です。

むかたけ
むかたけ

トラゼンタとテネリアは腎機能低下時にも使いやすい印象です。

ちなみに透析性に関してはビルダグリプチンのみが透析により除去されますが、他のものに関しては透析により除去されません。

 

まとめ:全体の使い分け

  • DPP-4阻害薬は単独投与での低血糖リスクは低い
  • エクアは、HbA1cの低下率が大きい報告あり
  • HbA1c改善に関しては、ジャヌビア≒エクア≒ネシーナ
  • エクアの肝障害を除き、DPP-4阻害薬の間で副作用に差はない
  • SU剤との併用で低血糖リスク増
  • ジゴキシンの併用には血中濃度に注意が必要
  • DPP4-阻害薬とACE阻害薬との併用で血管腫のリスク増
  • エクアとスイニーは1日2回投与が必要
  • トラゼンタとテネリアは腎機能低下時にも調節不要

最後に

大まかな使い分けは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)

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