【代謝系】脂質異常症治療薬 フィブラート系、ω-3多価不飽和脂肪酸の使い分け

薬局業務
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここでは脂質異常症治療薬のフィブラート系、ω-3多価不飽和脂肪酸の使い分けをまとめています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

先にまとめ:大まかな特徴

フィブラート系

  • フィブラート系はTG低下とHDL-C上昇作用を併せ持つ
  • 特に高TG血症には最も有効とされている
  • パルモディアはPPARαに選択的に作用する
  • スタチンとフィブラートの併用はOKだが、腎機能に注意
  • 高TG血症かつ低HDL-C血症ではフィブラート系とスタチン系との併用を考慮する
  • フィブラート系の間では、効果に大きな差はない
  • フェノフィブラートは、尿酸低下作用や糖尿病網膜症の伸展抑制に有効
  • ベザフィブラートは、TG高値患者の心筋梗塞再発・突然死の予防期待あり
  • パルモディアだけ肝代謝、CYP関与が多い為、薬物相互作用に注意
  • パルモディアも含めて、フィブラート系全てで腎機能低下例には調節が必要

ω-3系製剤

  • ω-3系製剤の主な作用は、TG低下と僅かなHDL-C上昇
  • ロトリガ1包(2g)でエパデール1800mgと同等の効果
  • ω-3系製剤の主な副作用は、下痢などの消化器症状や出血傾向
  • ロトリガとエパデールでは副作用に大きな差はない
  • ω-3系製剤は食直後に服用しないと吸収が落ちる

脂質異常症治療薬の選択

脂質異常症の治療薬は主としてLDL-コレステロール(LDL-C)、もしくはトリグリセリド(TG)を低下させることを目標にします。

 

主にLDLーCを低下させる薬剤は、スタチン系や小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、陰イオン交換樹脂、プロブコールなどがあります。

また、TGを低下させる薬剤としては、フィブラート系や多価不飽和脂肪酸、ニコチン酸誘導体などがあります。

 

脂質異常症治療薬の薬効分類

日本動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017より

 

  • LDL高値(2a型):スタチンが第一選択、エゼチミブや陰イオンが第二選択
  • LDL,TG両方高め(2b型もしくは3型):スタチン系・フィブラート系・ニコチン酸の選択、または併用
  • TG高値(4型):フィブラート系が第一選択、ニコチン酸や多価不飽和脂肪酸が第二選択

 

フィブラート系の使い分け

フィブラート系は、肝臓にある核内受容体のPPARαを活性化する作用を持ちます。

PPARαは活性化されると、数々のタンパク質の発現を調節することによって脂質代謝を総合的に改善させる効果を持っています。

 

PPARα活性化されると、

  • アポA-Ⅰ、A-Ⅱの産生増加➡HDL-C上昇
  • アポCⅢの産生低下➡コレステロール低下
  • アポCⅢの産生低下・LPL産生増加・β酸化亢進➡TG低下

 

このように、様々な代謝機能が更新し、血清コレステロール値とTG値の濃度を低下させると共に、HDL-Cも上昇させる効果を持っています。

 

『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版』においては、フィブラート系は高TG血症に対して最も効果的な薬剤として位置付けられています。

しかし、薬効群としての記載であり各薬剤の使い分けについては明記されていません

 

2018年に発売されたペマフィブラート(パルモディア)は、PPARαと結合すると、その立体構造を変化させることが特徴です。

立体構造の変化により、TG低下やHDL-C合成促進に関わる遺伝子の発現を高めるように設計された選択的PPARαモジュレーターという特徴を備えています。

 

簡単に言うと、PPARにはα(アルファ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)と種類がありますが、パルモディアはα(アルファ)に選択的に作用することが出来るということになります。

 

禁忌について

スタチン系と同様に、フィブラート系も基本的には妊婦や授乳婦に対しては禁忌扱いとなっています

スタチンとフィブラートの併用に関しては、腎機能に異常がある患者に対しては横紋筋融解症のリスクが高まるということで、以前は原則禁忌となっていました。

しかし、2018年の10月の改定で原則禁忌が削除となりましたので使用は可能です。

ただ、腎機能低下時の併用にはいずれも注意が必要です。

 

『急性冠症候群ガイドライン2018年改訂版』では、高TG血症が冠動脈疾患の危険因子であることは内外の疫学研究家観察研究で立証されています。

高TG血症かつ低HDL-C血症ではフィブラート系とスタチン系との併用を考慮することが示されています

 

フィブラート間で効果に差はなし

フィブラート系3つを直接比較した臨床試験はありませんが、各薬剤の最大用量でTG低下作用の比較をした結果があります。

  • ベザフィブラート400㎎/日 はフェノフィブラート160㎎/日と同等。
  • ペマフィブラート0.4㎎/日 はフェノフィブラート160㎎/日 と同等。

と、報告があります。

ただし、心血管イベント抑制効果に関する検証はされていません。

 

フェノフィブラートはTG低下作用以外にも『高尿酸血症・痛風治療ガイドライン第3版』においては、『尿酸低下作用を有する』とあります。

『糖尿病治療診療ガイドライン2019』では糖尿病網膜症の伸展抑制に有効である可能性があると記載があります。

 

ベザフィブラートは『安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン2018年改訂版』において、TGが高めの患者の心筋梗塞再発・突然死に対する有用性を示唆するデータが引用されています。

 

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代謝

フィブラート系は全て腎機能低下例には注意

フェノフィブラートとベザフィブラートは主に腎排泄型ですが、ペマフィブラートは胆汁排泄型となっています。

しかし、ペマフィブラートの審査報告書には腎機能障害患者で正常腎機能検査と比較して暴露量の比上昇が認められたことから横紋筋融解症のリスクが否定できず既存のフィブラート系と同様の注意喚起が妥当と判断されました 。

そのため、腎機能障害が中等度以上では禁忌、軽度では慎重投与とされています。

 

ペマフィブラートは肝代謝であることから、主にCYP関与が多いです。

CYP2C8、CYP2C9やCYP3A4、CYP3A7、他にも様々な代謝系酵素との関与が認められておりますので薬物間相互作用には注意が必要です

尚シクロスポリンやリファンピシンなどは併用禁忌扱いとなっています

 

ω-3多価不飽和脂肪酸の使い分け

多価不飽和脂肪酸の中でもω‐3系ω-6系があります。

ω-3系やω-6系は、n-3系、n-6系との表記されます。

 

 

イコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)は、ω-3系の不飽和脂肪酸で魚の油などに多く含まれています。

 

ω-3多価不飽和脂肪酸は、肝臓内での脂肪酸合成及びVLDLの合成を抑制してTGを低下させます。

また、僅かながらHDL-C上昇効果もあります。

 

主な副作用は、下痢などの消化器症状や肝機能障害があるほか抗血小板作用するため出血傾向にも注意が必要と言われています

エパデールとロトリガ

現在、ω-3多価不飽和脂肪酸の製剤は、 エパデールとロトリガが販売されています。

ロトリガの2gはエパデール1800㎎と同等の効果があると言われています。

 

ロトリガとエパデールの違いは、含有しているω-3系脂肪酸の比率が異なります。

 

エパデールのω-3系脂肪酸はEPAのみとなっていますが、ロトリガはEPAだけではなくDHAも含有しています。

むかたけ
むかたけ

ちなみにロトリガ2g中にはEPAが930mg、DHAを750mgが含有しています。

 

DHAはEPAよりも脳や心臓へ移行しやすい為、脳梗塞予防により効果があることが特徴です。

 

EPAは、血小板凝集抑制効果がDHAより高いので、1日3回のエパデールの方が出血リスクが大きいと思われますが、副作用については大きな差は見られなかったとのことです。

 

どちらの製剤も空腹時には吸収率が低下するためにともに食直後の服用が必要となります

 

まとめ:大まかな特徴

フィブラート系

  • フィブラート系はTG低下とHDL-C上昇作用を併せ持つ
  • 特に高TG血症には最も有効とされている
  • パルモディアはPPARαに選択的に作用する
  • スタチンとフィブラートの併用はOKだが、腎機能に注意
  • 高TG血症かつ低HDL-C血症ではフィブラート系とスタチン系との併用を考慮する
  • フィブラート系の間では、効果に大きな差はない
  • フェノフィブラートは、尿酸低下作用や糖尿病網膜症の伸展抑制に有効
  • ベザフィブラートは、TG高値患者の心筋梗塞再発・突然死の予防期待あり
  • パルモディアだけ肝代謝、CYP関与が多い為、薬物相互作用に注意
  • パルモディアも含めて、フィブラート系全てで腎機能低下例には調節が必要

ω-3系製剤

  • ω-3系製剤の主な作用は、TG低下と僅かなHDL-C上昇
  • ロトリガ1包(2g)でエパデール1800mgと同等の効果
  • ω-3系製剤の主な副作用は、下痢などの消化器症状や出血傾向
  • ロトリガとエパデールでは副作用に大きな差はない
  • ω-3系製剤は食直後に服用しないと吸収が落ちる

最後に

大まかな使い分けは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)

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