【循環器】β遮断薬の使い分け カルベジとビソプロの違いについて

薬局業務
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここではβ遮断薬、主にカルベジロールとビソプロロールの使い分けをまとめています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

先にまとめ:大まかな使い分け

  • 日本では、カルベジロールとビソプロロールが心不全の適応あり
  • COPDにカルベジロールは投与可
  • カルベジロールのα₁遮断作用とβ遮断作用は1:8
  • ビソプロロールはβ₁選択性があり、カルベジロールは非選択性
  • 代謝系疾患を併発している場合は、カルベジロールの方が使いやすい。
  • 呼吸器系疾患を併発している場合は、ビソプロロールの方が使いやすい。
  • 脂溶性β遮断薬の副作用で、悪夢やインポテンツあり
  • カルベジとビソプロは脂溶性
  • 強心薬やCa拮抗薬(ベラパミルやジルチアゼム)との併用には注意
  • カルベジもビソプロも手術前48時間は休薬させることが望ましい
  • ただし、慢性的にβ遮断薬を使ってる場合は無理に中止しなくても良い
  • ビソノテープ8㎎が経口剤のメインテート5㎎に相当。
  • ビソノテープ貼ったままお風呂OK
  • ビソノテープの調節は、貼付間隔を空けるよりも一日一回貼付のまま減量する方が良い
  • プロプラノロールはリザトリプタンと併用禁忌

心不全リスク減少効果

β遮断薬の中でも、カルベジロールやビソプロロールは、収縮機能不全の慢性心不全患者に対して心血管死、全死亡、心不全入院リスクを減少させることが報告されています。

国内外のガイドラインにおいても、2つはクラス1Aに位置づけられています。

 

COPDにカルベジロールは大丈夫か?

心不全の患者では、高い割合(20~30%)でCOPDを合併することが報告されています。

『急性慢性心不全診療ガイドライン2017年』において、COPDを併存した心不全患者の大多数に、β遮断薬は安全に使用できると記載されています。

 

しかし、『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』では、COPD患者に対する非選択的β遮断薬は気管支痙攣をきたす恐れがあり、中止すべきであると記載されています。

カルベジロールは非選択的β遮断薬に該当しますが、一秒量の低下は認めたものの、COPDの憎悪は認められなかったという報告があります。

 

そのほか、心不全予後改善効果のエビデンスも多い点から、特に慎重な投与を有する薬物には含まれていません。

有効性と安全性に配慮しながら慎重に使用すべきとされています。

むかたけ
むかたけ

とりあえず注意しながらなら、COPD患者に対しても使用出来そうです。

 

心不全にエビデンスがあるβ遮断薬

カルベジロールのα₁遮断作用とβ遮断作用は1:8の割合で、血管拡張作用、抗酸化作用、糖質代謝を悪化させないことがカルベジロールの特徴となっています。

左室駆出率の低下した慢性心不全における大規模臨床試験のエビデンスがあるβ遮断薬は、以下の3つです。

  • カルベジロール(アーチスト)
  • ビソプロロール(メインテート)
  • メトプロロールコハク酸(セロケン)

の3種類です。

 

このうち日本ではカルベジロールとビソプロロールのみが心不全の適応を有しています。

β遮断薬の腎不全に対する効果は、用量に依存するほど大きいとの報告があります。

ですが、これは欧米のデータが中心のため、国内における検討が望まれています。

 

使い分けとしては、

  • 代謝系疾患を併発している場合は、カルベジロールの方が使いやすい。
  • 呼吸器系疾患を併発している場合は、ビソプロロールの方が使いやすい。

このような印象です。

 

用量ごとの適応

カルベジロールとビソプロロールで混乱しやすいのは用量ごとに適応が異なる点です。

低用量では心不全に、高用量では高血圧疾患に使用出来ます。

 

カルベジロール(mg) 1.25 2.5 10 20
本態性高血圧
(軽~中等度)
腎実質性高血圧
狭心症
虚血性心疾患
又は
拡張型心筋症に基づく
慢性心不全

 

ビソプロロール(mg) 0.625 2.5 5
本態性高血圧
(軽~中等度)
心室性期外収縮
狭心症
虚血性心疾患
又は
拡張型心筋症に基づく
慢性心不全
頻脈性心房細動

 

カルベジロールとビソプロロールの適応は、本態性高血圧や狭心症、慢性心不全等は同じです。

 

異なる適応は、以下の適応です。

  • カルベジロール:腎実質性高血圧
  • ビソプロロール:心室性期外収縮、頻脈性心房細動

 

その為、心房細動などでワーファリンやプラザキサなどの抗凝固薬を使用すべき例には、ビソプロロールが比較的選択されやすい傾向にあります。

むかたけ
むかたけ

抗凝固薬は、心房細動などが原因による血栓を抑制してくれる効果があります。

 

副作用

β遮断薬の重大な副作用として、心不全や完全房室ブロック、高度徐脈洞不全症候群が挙げられます。

また喘息発作の誘発はβ₂遮断に基づくものであり、特に非β₁受容体選択性の薬剤で注意が必要となります。

ビソプロロールはβ₁選択性があり、カルベジロールは非選択性となっています。

 

脂溶性のβ遮断薬では悪夢やインポテンツなどの発生が報告されています。

  • 脂溶性:カルベジロール、ビソプロロール、プロプラノロール
  • 水溶性:アテノロール、アロチノロール、ラベタロール

 

なので、悪夢などの副作用で日常生活に支障をきたすようであれば、水溶性のβ遮断の使用も検討します。

 

心不全治療においてβ遮断薬を開始導入する際は、心不全を一時的に悪化させる可能性が否定できません。

なので、状態が安定している際に少量から導入し、増量はゆっくり段階的に行う必要があると言えます。

 

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相互作用

一部は除きますが、β遮断薬は併用禁忌に該当する薬剤は存在しません。

 

ジゴキシンやカルシウム拮抗薬のベラパミルジルチアゼムとの併用時には特に高度の徐脈や心ブロック、心不全の憎悪に注意が必要です。

なお、カルベジロールは主に2D6や2C9で代謝され、ビソプロロールは主に2D6や3A4で代謝されます。

 

手術前の休薬

手術予定患者においてβ遮断薬は術中の心臓負担を増強する事が予想されています。

添付文書上、術前休薬24時間もしくは48時間、薬剤により異なるが規定されています。

ちなみにカルベジもビソプロも手術前48時間は休薬させることが望ましいとされています。

 

しかし、『高血圧治療ガイドライン2019』では、β遮断薬で慢性的に治療中の場合は術前も治療を継続すると記載されています。

この規定は心臓手術における手術期のβ遮断薬の使用は、心室及び上室不整脈のリスクを減少させるとの報告があります。

 

一方、非心臓手術の術前に新たに開始した場合脳卒中死亡低血圧徐脈のリスクが増加したとの報告に基づくものである。

むかたけ
むかたけ

要は、慢性的にβ遮断薬を使ってる場合は無理に中止しなくても良いということです。

 

ちなみに、β遮断による心負荷は心臓の機能を抑える働きと、グリコーゲン分解抑制によるものです。

テープ剤

ビソノテープ(ビソプロロール)はβ遮断薬の初のテープ製剤で、経口投与不能な患者にも使用が可能な利点があります。

血中濃度が持続し安定した降圧効果を期待出来る製剤となっています。

むかたけ
むかたけ

ちなみに貼ったままお風呂に入っても大丈夫です。

 

ビソノテープ8㎎が経口剤のメインテート5㎎に相当します。

 

腎機能低下例に対して

腎機能低下患者に対しては慎重投与となっています。

中等度の腎機能低下者では、AUCが約2倍に上昇し半減期を25時間に延長させるので、注意が必要です。

高度腎機能低下患者では、AUCが約2.9倍に上昇し半減期も27.8時間に延長します。

 

貼付間隔を空けるよりも一日一回貼付のまま減量する方が良いとされています。

むかたけ
むかたけ

製剤からの放出が1日でほぼ完了するので、間隔を空けると血中濃度にムラが生じるからっぽいですね。

 

経口剤と同様に、規格により適用が異なるので、適応症の注意は必要です。

動機時や片頭痛などにも使われるプロプラノロール(インデラル)ですが、代謝系が片頭痛治療薬のリザトリプタンとかぶっていることもあり併用禁忌となっているので注意が必要です。

 

まとめ:大まかな使い分け

  • 日本では、カルベジロールとビソプロロールが心不全の適応あり
  • COPDにカルベジロールは投与可
  • カルベジロールのα₁遮断作用とβ遮断作用は1:8
  • ビソプロロールはβ₁選択性があり、カルベジロールは非選択性
  • 代謝系疾患を併発している場合は、カルベジロールの方が使いやすい。
  • 呼吸器系疾患を併発している場合は、ビソプロロールの方が使いやすい。
  • 脂溶性β遮断薬の副作用で、悪夢やインポテンツあり
  • カルベジとビソプロは脂溶性
  • 強心薬やCa拮抗薬(ベラパミルやジルチアゼム)との併用には注意
  • カルベジもビソプロも手術前48時間は休薬させることが望ましい
  • ただし、慢性的にβ遮断薬を使ってる場合は無理に中止しなくても良い
  • ビソノテープ8㎎が経口剤のメインテート5㎎に相当。
  • ビソノテープ貼ったままお風呂OK
  • ビソノテープの調節は、貼付間隔を空けるよりも一日一回貼付のまま減量する方が良い
  • プロプラノロールはリザトリプタンと併用禁忌

最後に

大まかな使い分けは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)

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