【薬局業務】抗うつ薬のSNRIとNaSSAの使い分け

薬局業務
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抗うつ薬には色々な種類があります。

三環系や四環系、SSRIやSNRI、そしてNaSSAです。

 

むかたけ
むかたけ

NaSSAの読み方は『ナッサ』でOKです。

 

どれも脳内の神経伝達物質を補う薬理作用となっていますがその中でもSNRIやNaSSAは混乱する抗うつ薬でもあります。

今回はSNRIやNaSSAの使い分けについてのお話です。

 

SNRIとNaSSA

日本ではSNRIとNaSSAでは以下が承認されています。(2022年12月時点)

SNRI:
ミルナシプラン(トレドミン)
デュロキセチン(サインバルタ)
ベンラファキシン(イフェクサーSR)

NaSSA:
ミルタザピン(リフレックス、レメロン)

 

むかたけ
むかたけ

NaSSAは一種類しかないので、覚えやすいですね。

 

ノルアドレナリンとセロトニン

抗うつの使い分けを知るには、まずは作用点となるノルアドレナリンやセロトニンがどんな役割りをしているか知るのが近道です。

 

簡単にいうと、

ノルアドレナリン:『やる気』
セロトニン:『精神安定』

 

このような役割分担となっています。

 

車に例えると、ノルアドレナリンはアクセル系でセロトニンはブレーキ系なイメージですね( ゚Д゚)

 

これらの役割については下記記事で紹介してますので、よろしければご覧下さい。

【薬局業務】セロトニン、ノルアドレナリンとかよくわからん。SSRIとSNRIの使い分け
セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質がわからないとSSRIやSNRIの作用は混乱しやすいですよね。今回は抗うつ薬の作用機序の土台となる神経伝達物質の作用とSSRI・SNRIの使い分けについてお話します。抗うつ薬で混乱する方の参考になれば幸いです。

 

なので、SNRIではノルアドレナリンもセロトニンも補ってくれますので、『やる気』が出ないようなうつ症状に向いています。

 


うつ病の治療方法と抗うつ薬|銀座心療内科クリニック (ginza-pm.com)より

 

『いやいや、NaSSAもノルアドレナリンとかセロトニン補ってくれるじゃん!』

というような意見がありますが、SNRIとNaSSAの違いは作用点にあります。

 

基本的にSNRIもNaSSAもノルアドレナリンとセロトニンに選択的に作用します。

ただし、NaSSAはセロトニン受容体に対して特異的に作用します。

 

NaSSAの正式名称は、

Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)

となっています。

 

名前の通りセロトニンには特異的に作用するのが特徴です(*´Д`)

 

特異的とは、限定的とか選択的な意味と思っていただければOKです。

 

セロトニンの受容体はいくつか種類がありますが、その中でもうつに関係する受容体は5-HT₁受容体と言われています。

 

その他5-HT₂受容体、5-HT₃受容体は血管系や消化器系に関わる受容体とされています。

  • 5-HT1受容体:中枢
  • 5-HT₂受容体:血管系
  • 5-HT₃受容体:消化器系

 

NaSSAは5-HT₂受容体、5-HT₃受容体を阻害する事で本来5-HT₂受容体、5-HT₃受容体に結合するセロトニンを5-HT₁受容体に充てさせることでセロトニンの効果を増強します。

 

つまり、セロトニンの効果を増強しつつ、SNRIのようなセロトニン系副作用(主に消化器系副作用)を軽減させる事が期待出来ます。

 

 

そして、5-HT₁受容体への選択性が向上することにより、よりノルアドレナリンを制御出来るようになるため、ノルアドレナリンの心血管系の副作用の軽減も期待出来ます。

 

その為、消化器系や心血管系の副作用においてはNaSSAの方が安全性は高いと言えます。

逆に受容体選択性が低いSSRIやSNRIでは、NaSSAに比べると服用後の吐き気や下痢などの消化器系の副作用が目立つことが多いです。

 

その為、SSRIのパロキセチンやSNRIのデュロキセチンなど、お薬によっては徐々に用量を増やしていく使い方をします。

 

傾眠と食欲亢進

傾眠

副作用の少ないNaSSAですが、SNRIよりもNaSSAの方がおきやすい副作用があります。

それは眠気です。

 

この眠気はNaSSAの抗ヒスタミン作用によるものと考えられています。

NaSSAにはH₁受容体遮断作用も確認されています。

 

しかし、現場ではこの副作用を逆手にとっているケースが多いです。

というのも、うつの患者さんは少なからず不眠で悩んでいる人がいます。

なので、うつ症状で不眠に悩む患者にはNaSSAがうってつけのケースになり得ます。

 

食欲亢進

NaSSAの副作用で特徴的なのは、傾眠の他に食欲亢進もあります。

これも抗ヒスタミン作用により生じるものと言われています。

 

ヒスタミンは覚醒や食欲に関係する脳内の神経伝達物質です。

その為、NaSSAはSSRIやSNRIと比べて食欲増進の副作用も出やすいとされています。

 

作用や親和性を-~5の6段階で評価したものです。

再取り込み阻害作用 受容体親和性
5-HT NA α₁ mACh H₁
三環系 アミトリプチリン 3 3 3 3 4
クロミプラミン 4 3 3 3 3
イミプラミン 3 3 3 3 3
ノルトリプチリン 2 4 3 2 3
トリミプラミン 1 2 3 3 5
アモキサピン 2 3 3 2 3
四環系 マプロチリン 1 4 3 2 4
SARI トラゾドン 2 3 2
SSRI フルボキサミン 4 2 1
パロキセチン 5 3 1 2
セルトラリン 4 2 2 1
エスタシロプラム 4
SNRI ミルナシプラン 2 2
デュロキセチン 4 4 1 1 1
ベンセラファキシン 4 4
NaSSA ミルタザピン 1 2 2 4
SRIM ボルチオキセチン 4

 

ちなみにNaSSAのH₁受容体への効きは三環系に匹敵しますので、眠気や食欲亢進になるのもしょうがないです(;^ω^)

 

ただ、こちらに関しても傾眠の副作用と同様に逆手にとるケースもあります。

うつの患者さんには食欲が出ない人もいます。

そんな患者さんに対してもNaSSAは向いていると言えます。

 

SNRI:やる気が出ないうつ患者
NaSSA:他の抗うつ薬の副作用が心配、不眠や食欲がない患者

 

 

このような形で使い分けているケースが多いです。

 

NaSSAの方が作用発現が早い

SNRIや他の抗うつ薬は再取り込みを阻害することで神経伝達物質を溜める作用がメインなので、効果が出るまでに時間がかかります。

大体2~3週間程と言われています。

 

しかし、NaSSAはセロトニン受容体に直接的に作用する形となるので1週間程で効果が出るとされています。

なので、効果発現までにかかる時間に関しては、NaSSAの方が短いというのも特徴の1つとなっています。

 

有効性も忍容性も優れて効果発現も早いとなると、

『もうNaSSAだけで良くね?』

 

となりますが、現場ではNaSSAを使ってもダメな事も多くあります。

効かなかったり眠気が出過ぎたり体重増加とかですね(;^ω^)

 

そんなときはSSRIやSNRIへの変更も充分に考えられますし、何だったらSSRIやSNRIとNaSSAを併用するケースもあります。

 

Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis (thelancet.com)より

13ミルタザピン(NaSSA)よりも8エスシタロプラム(SSRI)の方が有効性と忍容性良いっていう研究結果もありますしね(;^ω^)

 

最後に

NaSSAはSNRIより優れている面もあります。

だからといって現場ではNaSSA中心に使っているというわけでもないです。

患者に合わせた薬剤選択がされてる印象です。

 

SNRIやNaSSAの使い分けの参考になれば幸いです。

ではでは。

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