【てんかん】抗てんかん薬の使い分け

医療系
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここでは抗てんかん薬の使い分けをまとめています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

先にまとめ:大まかな使い分け

てんかんの概要

  • 抗てんかん薬治療の原則は単剤投与。
  • 抗てんかん薬によって患者の60%~70%は寛解する
  • 投与回数は半減期に従って決定。
  • 原則は、抗てんかん薬を定常状態にし、血中濃度を安定させること

治療の終了・再発

  • 治療の終了は、発作が消失し脳波の正常化後3年以上経過している場合
  • 治療終了後の発作再発率は成人では50%前後
  • 再発の半数は薬物減量中
  • 1年以上かけてゆっくりと減量を中止した方が再発率は低くなる

発作別治療薬選択

  • 部分発作:カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタムが第一選択
  • 全般発作:バルプロ酸
  • 欠神発作:エトスクシミド
  • ミオクロニー発作:クロナゼパム
  • ゾニサミドは体温上昇に注意

有効性

  • 部分発作への治療継続性ではラモトリギンが長い
  • 全般発作への治療継続性:トピラマート<ラモトリギン≒バルプロ酸
  • 全般発作におけるバルプロ酸の発作抑制効果の優位性は他剤より高い
  • ラコサミドは通常よりも長い時間Na⁺チャネルを抑制する新しい作用機序

重症薬疹

  • 従来:フェニトイン、カルバマゼピン、ゾニサミドで多い
  • 新規:ラモトリギンで多い
  • バルプロ酸との併用や他の抗てんかん薬の併用でリスク増

副作用

  • 精神性副作用:従来の抗てんかん薬<新規の抗てんかん薬

相互作用

  • バルプロ酸とカルバペネム系は併用禁忌(作用機序は不明)
  • カルバマゼピンやフェニトインは代謝酵素誘導が強い為、他の薬剤や抗てんかん薬との併用には注意が必要
  • 新規抗てんかん薬は従来の抗てんかん薬に比べて薬物相互作用が少ない
  • ラモトリギンはバルプロ酸との併用で半減期が延長する恐れがある
  • 抗凝固薬との併用には注意が必要

妊婦のてんかん

  • 妊娠中に抗てんかん薬を服用している女性から出生した子供の奇形発現頻度は、4%~10%程度(通常の2~3倍)
  • バルプロ酸やトピラマートは奇形発現率が高い
  • ラモトリギンやレベチラセタムは催奇形性リスクが低い

高齢者のてんかん

  • 高齢者のてんかん発作抑制率:ラモトリギン・ガバペンチン<カルバマゼピン
  • 高齢者の抗てんかん薬継続率:カルバマゼピン<ラモトリギン・ガバペンチン
  • 60歳以上の新規発症てんかん患者への忍容性:カルバマゼピン<ラモトリギン<レベチラセタム

腎機能低下例

  • 腎機能低下例においては、従来の抗てんかん薬の方が使い勝手が良い
  • スルチアム(オスポロット)、トリメタジオン(ミノアレ)が、腎機能低下例で禁忌

てんかんの症状

てんかんは脳細胞が過剰興奮することによって起こる反復性の脳疾患で過剰興奮が起こります。

 

てんかんの症状はいくつもあります。

ひきつけやけいれん、ボーっとする、体がピクッとなる、意識を失ったまま動きもある、などの症状が見られます。

これらは脳波異常が生じる部位によって異なります。

てんかん薬はこれらの症状を抑え、かつ副作用なくQOLを改善することを目的として使用されます。

 

原則は単剤投与

抗てんかん薬によって患者の60%~70%は寛解すると言われています。

薬剤治療の原則は単剤投与です。

 

てんかん薬は国内にたくさんありますが、特定希少難治てんかんに対して使用可能な新規抗てんかん薬もあります。

小児期に発症するレノックスガストー症候群に対して、併用療法でルフィナミドを使用出来ます。

 

ドラベ症候群に対しては、クロバザム及びバルプロ酸ナトリウムとの併用療法でスチリペントールがそれぞれ承認されているのが現状です。

 

定常状態にして血中濃度を安定させること

投与法に関しては、発作型に応じて単剤により発作抑制を試みます。

投与回数は半減期に従って決定します。

 

『てんかん診療ガイドライン2018』より

 

  • 半減期が12時間以下の場合は1日3回以上の服用。
  • 半減期が24時間前後の場合は1日2回が目安。
  • 半減期が48時間以上であれば1日1回が目安。

 

このような投与回数が目安となります。

投与回数が少なすぎると血中濃度が安定しないため、十分な効果が期待できなくなる恐れがあります。

 

原則は、抗てんかん薬を定常状態にし、血中濃度を安定させることになります。

 

その為、飲み忘れが心配な患者に対しては、半減期が長い製剤が使いやすいとされます。

 

治療の終了と再発

治療の終了に関しては、発作が消失し脳波の正常化後3年以上経過している場合は抗てんかん薬の減量中止が可能となっています。

 

治療終了後の発作再発率は成人では50%前後で決して低くはありません。

再発の半数は薬物減量中に生じます。

 

1年以上かけてゆっくりと減量を中止した方が再発率は低くなる傾向にあるようです。

抗てんかん薬の漸減は3ヶ月~6ヶ月以上かけることが望ましいとされています。

 

小児のてんかんに関しては、治療終結後の再発率は成人に比べて低い傾向にあります。

特に、特発性部分てんかんはほとんど再発せず治療を終結しやすいです。

 

一方で、若年性のミオクロニーてんかんは極めて高確率で再発します。

小児期発症のてんかんに比べ思春期発症の場合は再発率が高めとなっています。

 

運転免許

運転免許証の取得は専門医による適性検査を受けることによって可能です。

ただし、2年以上発作が抑制されている場合に限られます。

 

抗てんかん薬の作用機序

主な従来の抗てんかん薬

  • フェノバルビタール(フェノバール)
  • フェニトイン(ヒダントール等)
  • エトスクシミド(エピレオプチマル等)
  • ベンゾジアゼピン系(マイスタン等)
  • カルバマゼピン(テグレトール)
  • バルプロ酸(デパケン等)
  • ゾニサミド(エクセグラン)

 

主な新しい抗てんかん薬

  • ガバペンチン(ガバペン)
  • トピラマート(トピナ)
  • ラモトリギン(ラミクタール)
  • レベチラセタム(イーケプラ)
  • ペランパネル(フィコンパ)
  • ラコサミド(ビムパット)

 

抗てんかん薬の作用機序は、グルタミン酸系興奮性伝達物質の抑制とGABA系抑制伝達物質の賦活化に大別されます。

 

 

興奮性神経系に作用

カルバマゼピン、フェニトイン、ラモトリギン、ラコサミドはNa⁺チャネルを阻害。

ガバペンチン、エトスクシミド、ゾニサミドはCa²⁺チャネルをそれぞれ阻害することにより興奮性神経伝達物質の放出を抑制し抗てんかん作用を示します。

トピラマートは両チャネル阻害作用のほか、グルタミン酸受容体のAMPA受容体阻害作用を有します。

 

  • Na⁺チャネル阻害:カルバマゼピン、フェニトイン、ラモトリギン、ラコサミド
  • Ca²⁺チャネル阻害:ガバペンチン、エトスクシミド、ゾニサミド

 

 

ペランパネルはシナプス後膜に存在するAMPA受容体を選択的に阻害することが特徴です。

レベチラセタムはシナプス前膜のシナプス小胞タンパク(SV2A)に結合し、グルタミン酸の放出を抑制することで薬効を発揮します。

 

抑制性神経系に作用

フェノバルビタールやベンゾジアゼピン系の薬剤はGABAA 受容体に結合し、GABA の抑制効果を増強することで、脳の過剰活動を抑えます。

バルプロ酸はGABAを分解するGABAトランスアミナーゼを阻害することにより脳内GABA濃度を高めることで、抑制系を増強します。

バルプロ酸に関しては、その他にも興奮系神経を抑制する作用も併せ持ちます。

 

 

興奮性神経系 抑制性神経系
Na⁺ Ca²⁺ SV2A グルタミン酸受容体 GABAA受容体 GABA代謝阻害
従来型 フェノバルビタール
フェニトイン
エトスクシミド
ベンゾジアゼピン系
カルバマゼピン
バルプロ酸
ゾニサミド
新規 ガバペンチン
トピラマート
ラモトリギン
レベチラセタム
ペランパネル
ラコサミド

 

ラコサミド:新しい作用機序

てんかんでのNa⁺チャネル遮断薬では、カルバマゼピン、フェニトイン、ラモトリギン、ゾニサミドなどがあります。

 

これらの薬剤は、数ミリ秒以内の急速なNa⁺チャネル不活性化を増強することにより抗てんかん作用を示すとされています。

 

一方、2016年に承認されたらラコサミドは、数秒からまたはそれ以上の間Na⁺チャネルを阻害する緩徐な不活性化を促進する不活性化から回復に時間を要することから、より長い時間Na⁺チャネルを抑制することができるとされています。

 

この作用は従来のNa⁺チャネル遮断薬とは新しく異なる作用機序となっています。

 

ビムパット錠 インタビューフォームより

有効性

抑制作用カルバマゼピンとラコサミドとの単剤療法における国際共同第三層試験では、6ヶ月後の発作消失率に関して、カルバマゼピン情報群に対するラコサミド群の非劣性が報告されています。

 

また、小児の部分発作に対して両者で比較した試験はなく、カルバマゼピンが汎用されていますが、小児においても成人と同等の有効性を示したとする報告があります。

 

『てんかん診療ガイドライン2018』では、部分発作に対しては第一選択がカルバマゼピン、ラモトリギンなどで、第二選択としてラコサミドが推奨されています。

 

しかし、米国のてんかん治療専門家の意見をまとめた『エキスパートオピニオン2016』では、カルバマゼピンなどと同等の位置づけとして、ラコサミドを第一選択としています。

副作用

ラコサミドの添付文書では、浮動性めまい、眠気、複視、消化器症状などが記載されており、これらの副作用は用量依存的に発現します。

また、心電図の PR 間隔を延長する事から心伝達系の副作用に注意が必要となります。

 

重大な副作用には、TENやスティーブンス・ジョンソン症候群などの記載がありますが、カルバマゼピンに比べて頻度は低い傾向です。

また、頻度不明ではありますが、無顆粒球症の報告もあることから発熱喉の痛みや倦怠感、喉の初期症状にも注意する必要があります。

 

主な使い分け

抗てんかんの使い分けについては、発作型分類によって異なります。

てんかん診療ガイドライン2018より

 

『てんかん診療ガイドライン2018』では部分発作に対してはカルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム 次いでゾニサミド、トピラマートを第一選択としています。

 

全般発作に対してはバルプロ酸が第一選択薬とされますが、欠伸発作にしては対してはエトスクシミドが選択されます。

ミオクロニー発作にはクロナゼパムも同様に第一選択薬として挙げられています。

 

英国国立医療技術評価機構(NICT) のガイドラインにおいては、部分発作の第一選択薬にカルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム全般発作の第一選択薬にバルプロ酸、ラモトリギンを挙げています。

国際抗てんかん連盟によるエビデンスレビューにおいては、成人に対する部分発作に対してカルバマゼピン、フェニトインに加えレベチラセタム、ゾニサミド、高齢者の場合にはガバペンチン、ラモトリギンを推奨しています。

 

なお、フェニトインについては血中濃度が指数関数的に上昇するため注意が必要です。

 

  • 部分発作:カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタムが第一選択
  • 全般発作:バルプロ酸
  • 欠神発作:エトスクシミド
  • ミオクロニー発作:クロナゼパム

 

ゾニサミドの体温上昇に注意

ゾニサミドは幅広く様々な発作型に有効ではありますが、副作用に注意が必要となっています。

発汗の減少により体温が上昇することがあるため、炎天下での運動や高温環境での仕事は控えるように指導が必要です。

 

各薬剤の有効性

部分発作

発症抑制作用において部分発作について、カルバマゼピン、ガバペンチン、ラモトリギン、オクスカルバマゼピン(日本未発売)、トピラマートで比較した試験では、治療の継続性はラモトリギンで長い結果となりました。

 

12ヶ月の寛解率はカルバマゼピンとラモトリギン、トピラマート、オクスカルバマゼピンとの間に有意差はないとする報告があります。

 

また、レベチラセタムとカルバマゼピンを比較した試験においては、6ヶ月後の発作消失率に関してカルバマゼピン徐放群(日本未発売)に対するレベチラセタム群の非劣性が報告されています。

 

全般発作

全般発作についてバルプロ酸、ラモトリギン、トピラマートで比較した試験では、治療の継続性がバルプロ酸がトピラマートに比べて長いがラモトリギンとは有意差がなく、12ヶ月の寛解率はバルプロ酸で良好であったとの報告がある

 

また、てんかん診療ガイドラインでは、バルプロ酸の発作抑制効果の優位性は他剤より高いとされています。

しかし、催奇形性、新生児の IQ への影響があるため妊娠可能年齢女性においてはバルプロ酸以外の薬剤を考慮すると記載されています。

 

成人期に持ち越すことが予想される10代の女性患者では、妊娠時も安心して服用続けられる薬剤を選択することを考慮する必要があります

 

  • 部分発作への治療継続性ではラモトリギンが長い
  • 全般発作への治療継続性:トピラマート<ラモトリギン≒バルプロ酸
  • 全般発作におけるバルプロ酸の発作抑制効果の優位性は他剤より高い

 

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重症薬疹

抗てんかん薬で注意すべき副作用には重症薬疹があります。

従来のてんかんでは、フェニトイン、カルバマゼピン、ゾニサミドに重症薬疹が多いとされています。

 

新しいてんかん薬ではラモトリギンで重症薬疹発症率が高いとされています。

 

また、ラモトリギンに関しては、2015年に重篤な皮膚障害についてブルーレターが出ています。

急な増量や、バルプロ酸との併用や他の抗てんかん薬で薬疹の起用があることがリスク要因として挙げられています。

 

服用開始から1か月程度は、発熱や口腔内などの粘膜疹を伴う紅斑やびらんなどの皮膚症状がないか患者の状態を確認しておく必要があります。

 

精神性副作用

易刺激性や攻撃性など行動面の副作用は、従来の抗てんかん薬よりも新規の抗てんかん薬で多い印象です。

 

てんかんを有する成人で、抗てんかん薬の精神面および行動面の副作用を調査した研究があります。

ペランパネル、トピラマート、特にレベチラセタムで多くの易刺激性攻撃性の副作用がみられたと報告があります。

 

一方、カルバマゼピンでは少なかったとの報告もあります。

Na⁺チャネル阻害作用を有するラコサミドでも精神症状作用が少ないと報告されています。

 

  • 精神性副作用に関しては新規の抗てんかん薬で多い傾向にある

 

代謝や相互作用

抗てんかん薬は併用薬には特に注意が必要です。

前述したように、てんかんの薬物治療の基本は、抗てんかん薬の血中濃度を安定に保つことです。

 

その為、代謝や相互作用などで抗てんかん薬の血中濃度が極度に不安定になる恐れがある薬は併用禁忌や併用注意となります。

 

バルプロ酸はカルバペネム系抗菌薬との併用でバルプロ酸の血中濃度が著明に低下し、てんかん発作を誘発させるため併用禁忌に指定されています。

むかたけ
むかたけ

ちなみにこの相互作用の作用機序はわかっていません。

 

各薬剤の併用

酵素誘導作用を持つカルバマゼピンは、抗真菌薬のボリコナゾールや、肺高血圧治療薬のタダラフィル、マシテンタン、C型肝炎治療薬のエルパスビルなどと併用禁忌とされています。

その他、フェニトイン、フェノバルビタールにも酵素誘導作用があるため、併用薬には注意が必要となります。

 

カルバマゼピンはCYP1A2 、2C9 、3A4 誘導するため 、ボリコナゾール 、タダラフィル 、エルパスビル の血中濃度低下のため併用禁忌とされていますが、その他、イソニアジド 、フルボキサミン、 ベラパミル、オメプラゾールなど多くの薬剤の代謝に影響することが報告されています。

 

また、カルバマゼピンはCYP3A4の自己誘導を行うことも知られており、1ヶ月~3ヶ月程度は自身の血中濃度も低下します

 

その他の抗てんかん薬との相互作用については、フェニトイン 、フェノバルビタールの併用でカルバマゼピンの血中濃度低下がみられ、バルプロ酸 、ラモトリギン 、エトスクシミド、ゾニサミド 、クロバザム、トピラマートとの併用でこれらの薬剤の血中濃度低下が見られています。

 

なお、長期投与時と長期投与時では血中濃度が異なるため注意が必要です。

 

新規抗てんかん薬は従来の抗てんかん薬に比べて薬物相互作用が少ないです。

ただ、注意が必要なものもあり、ラモトリギンはバルプロ酸と併用時にグルクロン酸抱合で競合した結果、ラモトリギンの代謝障害が起こるため、半減期が約2倍に延長すると報告されています。

 

また、グルクロン酸抱合を誘導するカルバマゼピン 、フェニトイン、 フェノバルビタール、 プリミドンとの併用では、ラモトリギンの血中濃度が低下します。

そのため、薬剤を併用することによりラモトリギンの投与量が異なるので注意が必要です。

 

ペランパネルについても 、カルバマゼピン、 フェニトイン 、との併用によりペランパネルの血中濃度が低下することが報告されているため、酵素誘導薬の併用の有無で用量が異なります。

 

ラコサミドは酵素誘導はなく、相互作用が少ないとされているが、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールなど酵素誘導作用を有する薬剤の併用により、ラコサミドのAUCが25%程度低下するという報告もあります。

 

  • カルバマゼピンやフェニトインは代謝酵素誘導が強い為、他の薬剤や抗てんかん薬との併用には注意が必要
  • 新規抗てんかん薬は従来の抗てんかん薬に比べて薬物相互作用が少ない
  • ラモトリギンはバルプロ酸との併用で半減期が延長する恐れがある

 

抗凝固薬との併用には注意が必要

抗てんかん薬以外の薬剤との相互作用については脳卒中の既往のある患者に対する抗凝固薬と抗てんかん薬の相互作用には注意が必要です。

酵素誘導するカルバマゼピン、 フェニトイン、 フェノバルビタールは、ダビガトラン 、アピキサバン、リバーロキサバンの併用で血中濃度が有意に低下するため同時服用は禁忌とされています。

 

 

妊婦に対して

妊娠中に抗てんかん薬を服用している女性から出生した子供の奇形発現頻度は、4%~10%程度とされています。

一般人口の場合の2%~5%と比べておよそ2倍~3倍高い結果となっています。

 

各国で行われた大てんかん薬単剤の奇形発現率を調査した結果により、バルプロ酸が最も催奇形性リスクが高い結果となっています。

てんかん診療ガイドライン2018より

 

フェノバルビタール、フェニトインや新規抗てんかん薬ではトピラマートで奇形発現率が高い傾向があります。

一方で、ラモトリギンやレベチラセタムは催奇形性リスクは低く、妊婦に対して比較的安全に使用できるとされています。

 

てんかん診療ガイドライン2018より

胎盤通過率は、臍帯血中の抗てんかん薬濃度/母体中の抗てんかん薬濃度で表されます。

胎盤通過率が1以上の物は、抗てんかん薬の濃度が母体内の濃度以上に胎児に流れる恐れがあります。

多くの抗てんかん薬は胎盤通過率が高い為、注意が必要です。

 

  • バルプロ酸やトピラマートは奇形発現率が高い
  • ラモトリギンやレベチラセタムは催奇形性リスクが低い

 

葉酸低下

抗てんかん薬では、血中の葉酸を低下させる作用が少なからずあります。

その為、神経管閉鎖障害のリスクが高まるので、妊娠前から1日に400㎎~600㎎程度の葉酸の補充が望ましいとされています。

 

高齢者のてんかん

高齢者のてんかんでは、65歳以上の新規発症てんかん患者に対して、カルバマゼピン、ラモトリギン、ガバペンチンの12ヶ月間の発作抑制率と投与継続率を比較した研究があります。

この結果では、発作抑制率でカルバマゼピンが上回りましたが、投与継続率ではラモトリギン、 ガバペンチンが優れているとする報告があります。

 

また、60歳以上の新規発症てんかん患者に対しては、徐放性カルバマゼピン(日本未発売)、ラモトリギン、レベチラセタムの58週間の有効性を比較した試験があります。

発作抑制率は3剤間で差はなかったのですが、副作用による中止の割合はカルバマゼピンで32.2%、ラモトリギンで26.3%、レベチラセタムで17.2%とレベチラセタムの忍容性が示されています。

 

  • 高齢者のてんかん発作抑制率:ラモトリギン・ガバペンチン<カルバマゼピン
  • 高齢者の抗てんかん薬継続率:カルバマゼピン<ラモトリギン・ガバペンチン
  • 60歳以上の新規発症てんかん患者への忍容性:カルバマゼピン<ラモトリギン<レベチラセタム

 

腎機能低下例

腎機能低下例 備考
従来型 フェノバルビタール 不要 蛋白結合率が低下するので要注意
フェニトイン 不要 重度腎障害では減量も検討
エトスクシミド 不要
ベンゾジアゼピン系 不要 マイスタンは慎重投与
リボトリールは不要
カルバマゼピン 不要
バルプロ酸 不要
ゾニサミド 不要
新規 ガバペンチン 減量
トピラマート 減量
ラモトリギン 減量 重度腎障害では50%減量
レベチラセタム 減量
ペランパネル 不要
ラコサミド 減量 重度腎障害でAUC59%上昇の報告アリ

第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOKを基に作成

 

肝機能低下時には、各薬剤で対処がわかれます。

腎機能低下例においては、従来の抗てんかん薬の方が使い勝手が良い印象です。

 

抗てんかん薬の中では、スルチアム(オスポロット)、トリメタジオン(ミノアレ)が、腎機能低下例で禁忌となっています。※表にはありません。

フェニトインやフェノバルビタールは重度の腎機能低下例には禁忌となっていますが、根拠が乏しいともされています。

 

他の抗てんかん薬は、減量等の措置を行えば重度の腎機能低下例にも透析例にも使用可能です。

しかし、中には薬物動態データが満足にないお薬もありますので、注意が必要です。

まとめ:大まかな使い分け

てんかんの概要

  • 抗てんかん薬治療の原則は単剤投与。
  • 抗てんかん薬によって患者の60%~70%は寛解する
  • 投与回数は半減期に従って決定。
  • 原則は、抗てんかん薬を定常状態にし、血中濃度を安定させること

治療の終了・再発

  • 治療の終了は、発作が消失し脳波の正常化後3年以上経過している場合
  • 治療終了後の発作再発率は成人では50%前後
  • 再発の半数は薬物減量中
  • 1年以上かけてゆっくりと減量を中止した方が再発率は低くなる

発作別治療薬選択

  • 部分発作:カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタムが第一選択
  • 全般発作:バルプロ酸
  • 欠神発作:エトスクシミド
  • ミオクロニー発作:クロナゼパム
  • ゾニサミドは体温上昇に注意

有効性

  • 部分発作への治療継続性ではラモトリギンが長い
  • 全般発作への治療継続性:トピラマート<ラモトリギン≒バルプロ酸
  • 全般発作におけるバルプロ酸の発作抑制効果の優位性は他剤より高い
  • ラコサミドは通常よりも長い時間Na⁺チャネルを抑制する新しい作用機序

重症薬疹

  • 従来:フェニトイン、カルバマゼピン、ゾニサミドで多い
  • 新規:ラモトリギンで多い
  • バルプロ酸との併用や他の抗てんかん薬の併用でリスク増

副作用

  • 精神性副作用:従来の抗てんかん薬<新規の抗てんかん薬

相互作用

  • バルプロ酸とカルバペネム系は併用禁忌(作用機序は不明)
  • カルバマゼピンやフェニトインは代謝酵素誘導が強い為、他の薬剤や抗てんかん薬との併用には注意が必要
  • 新規抗てんかん薬は従来の抗てんかん薬に比べて薬物相互作用が少ない
  • ラモトリギンはバルプロ酸との併用で半減期が延長する恐れがある
  • 抗凝固薬との併用には注意が必要

妊婦のてんかん

  • 妊娠中に抗てんかん薬を服用している女性から出生した子供の奇形発現頻度は、4%~10%程度(通常の2~3倍)
  • バルプロ酸やトピラマートは奇形発現率が高い
  • ラモトリギンやレベチラセタムは催奇形性リスクが低い

高齢者のてんかん

  • 高齢者のてんかん発作抑制率:ラモトリギン・ガバペンチン<カルバマゼピン
  • 高齢者の抗てんかん薬継続率:カルバマゼピン<ラモトリギン・ガバペンチン
  • 60歳以上の新規発症てんかん患者への忍容性:カルバマゼピン<ラモトリギン<レベチラセタム

腎機能低下例

  • 腎機能低下例においては、従来の抗てんかん薬の方が使い勝手が良い
  • スルチアム(オスポロット)、トリメタジオン(ミノアレ)が、腎機能低下例で禁忌

最後に

大まかな使い分けは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)

てんかん診療ガイドライン2018

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