【薬局業務】半減期を使えばわかります。薬の残存時間の計算方法。

薬局業務
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私は調剤薬局の薬剤師ですが、日々薬の相談などを受け付けています。

今回は、薬剤師が使用する頻度が多い知識をご紹介します。

 

薬が体から抜ける時間安定する時間を簡単に推測する方法です。

 

今回は半減期を扱った知識となります。

お薬が抜ける時間などが気になる方の参考になれば幸いです。

半減期に関わる知識

私のブログでも何度も出ている『半減期』。

こちらは補足などでチラッと紹介しただけで、しっかりとした説明はしていなかったと思います。

 

正確には『血中濃度半減期』と言いいます。

 

これは、

『体内に入った薬の血中濃度が半分になるまでの時間』

の事を指します。

 

実はこの半減期に関わる知識ですが、調剤薬局業務では滅茶苦茶使います

 

薬剤師でなくても、色んな場面で使える豆知識になりますので、半減期の知識はオススメです(*^^*)

 

薬が消失する時間がわかる。

薬剤師をやっているとよく考えなければならない内容があります。

 

どれくらいの時間で薬が体から抜けるのか?

という内容です。

 

結論から申し上げると、薬が身体から抜けるのはおよそ半減期の5倍の時間とされています。

 

これは何故でしょうか?

半減期の特性から考えればわかりやすくなります(^^)

 

考え方:メカニズム

例えば、ある薬物の半減期が5時間とします。

ある薬物の濃度が100として、これが半分の50になるには5時間。
更にこの50が半分の25になる時間は同じく5時間です。
これを繰り返し、3.125になる頃には、25時間経っており、100-3.125=96.875は消失しています。

 

この頃には、薬は当初の3%程しかないので、消失したと言っても差し支えはないのです。

 

まとめると、

半分の半分の半分の…、を5回繰り返せばほぼ0になるから

 

この知識を使えば、この薬物が身体から消える時間は5時間の5倍で約25時間と推察できます。

 

これが半減期を使った薬が抜ける時間のメカニズムとなります。

 

※図の半減期は2時間です。

ロキソニンの消失時間

ロキソニン血中濃度推移

以前に紹介した鎮痛薬のロキソニンを例にして考えてみましょう。

ロキソニンの半減期は1.22時間です。

 

半減期の5倍でお薬が消失するので、

1.22時間×5倍=6.1時間

 

上の図をご覧いただいてもわかるように、ロキソニンは約6時間で体から消失してるのが確認できます。

この考え方は多くの薬に応用出来るので、とても便利で日常業務で本当に良く使います。

 

定常状態:薬が体に溜まるまでの時間がわかる

この半減期の考えを応用した知識があります。

 

よく血圧糖尿病など、生活習慣病に関わる薬は毎日飲む必要がありますが、効果が出始めるまで時間がかかると言われています。

 

身体に薬が溜まるまで時間がかかる

と表現をするお医者さんもいます。

 

先ほど半減期の5倍で薬はほぼ消失するとお話しました。

 

では、薬が体から消失する前に、決められた間隔で薬を追加投与したらどうなるでしょうか?

 

答えは

血中濃度が一定になる

です。

 

半減期が一定時間以上のお薬は、毎日決められた時間に服用すれば、血中濃度は徐々に上がってきます。

 

多くの薬では、血中濃度に比例して排出されるので、いずれ入ってくる量と出ていく量が釣り合います

これを定常状態といいます。

定常状態:
入ってくる量と出ていく量の釣り合いがとれている状態。

 

半減期のおよそ5倍が定常状態になる時間と言えます。

しっかりとした作用が現れるまで時間がかかると言われているのはこれが理由です。

 

血圧のお薬にノルバスクと呼ばれるお薬があります。
こちらのお薬の半減期は約36時間です。
つまり、36時間×5倍=180時間(7.5日)
ノルバスクが体内で安定した血中濃度になるには約1週間かかるということがわかります。

 

いまいちピンとこないという方は、ペンで実際に書き出すとイメージしやすいかと思います。

半減期24時間
投与間隔24時間(1日)

でやってみるとわかりやすいです。

 

私は初めて聞いたときに意味がわからなかったので、紙に書き出しました( ・ω・)

 

半減期が24時間なので、投与量100だと24時間後には50になっている。

2日目に追加で100を投与すると、残存の50を加えて150になる。

24時間後には150の半分の75になる・・・・・・これを繰り返すと以下の図が出来上がります。

5日~6日にかけて、投与量と排出量が釣り合ってきていることがわかるかと思います。

 

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半減期を計算に使って3以下なら定常状態になる

一般に投与間隔を半減期で割って3以下なら定常状態がある薬と判断できます。

 

投与間隔 ÷ 半減期 = 3以下なら定常状態がある

 

3以下:ノルバスクの場合

先程のノルバスクを例に考えてみましょう。

ノルバスクは1日1回服用のお薬です。

 

その為、投与間隔は24時間。そして、半減期は36時間です。

24時間 ÷ 36時間 = 0.67

 

算出した値が3以下の為、ノルバスクは定常状態があるお薬という判断ができます。

 

4以上:ロキソニンの場合

4以上なら定常状態にならない薬となります

 

ロキソニンは1日3回服用のお薬です。

 

ですので、投与間隔は24時間/3回=8時間となります。

ロキソニンの半減期は1.22時間でした。

8時間 ÷ 1.22時間 = 6.56(4以上)

つまり、ロキソニンは定常状態がないお薬と判断できます。

 

先程、半減期の5倍の時間、つまり6.1時間で体から抜けるとお話しましたね(^^)/

 

ロキソニンは次回の投与の8時間後には体の中から薬がなくなっているということです。

 

定常状態にするためには薬物濃度が一定の濃度以上に残っている必要があるのです。

 

3~4の場合

こちらの場合はお薬そのものがかなり稀なケースです。

例えてみると、投与間隔は24時間、半減期が7時間などであれば、3.43となり、この範囲に収まります。

 

しかし、現実的に1日1回で半減期が7時間しかないお薬を継続的に服用するケースがあまりないのです。

 

このようなお薬を継続的に服用すると、投与初期から定常状態のような挙動を示します

 

定常状態のような挙動は示しますが、次回の投与時には血中濃度が微量の状態です。(約10%)

これが『3~4』のお薬ということになります。

 

定常状態にすることだけが目的であれば、3~4のお薬でも可能です。

 

しかし、次回投与時に血中濃度がほぼない状態であれば、継続的な治療が有益なのか疑問が残るところでも

あります。

 

まとめ

  • 半減期とは血中の薬の濃度が半分になる時間のこと
  • 半減期の5倍の時間で消失または定常状態
  • 定常状態とは、入ってくる量と出ていく量の釣り合いがとれている状態のこと
  • 投与間隔÷半減期=3以下なら定常状態がある薬
  • 投与間隔÷半減期=4以上なら定常状態がない薬

最後に

今回は半減期に関わる、現場で使用している知識を紹介しました。

お薬にもよりますが、

 

半減期の5倍の時間で消失または定常状態』

 

この知識は本当によく使っています。

健常人(成人)の場合であり、肝機能、腎機能などが悪化している場合や高齢者などで半減期や条件が異なりますのでご注意下さい。

 

気になるお薬があれば、半減期を調べてみてはいかがでしょうか?

薬が身体から抜ける時間など、気になる方の参考になれば幸いです。

ではでは。

 

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一般社団法人 日本臨床薬理学会 薬物動態

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