薬剤師が医師の訪問診療に同行するケースは良くあります。
何故なら薬剤師が薬の管理をしている以上、処方日数についても薬剤師が把握してないといけないからです。
正直、
『訪問診療で医師から何を一番質問される?』
と問われたら、間違いなく
『何日分処方すれば良いか?』
ということだと思います。
今回は往診同行時の日数調整の方法についてのお話しです。
薬局業務の参考になれば幸いです。
いつから薬始める?
まず考えないといけないことは、処方される追加薬をいつから始めるか?
ということです。
それには定時薬の飲み始めを把握しておく必要があります。
定時薬とは?
血圧の薬など毎日服用する薬で、継続服用(使用)している薬のことを指します。
この定時薬ですが、多くの場合は数日間は余裕を残している状態にしています。
例えば、7月1日時点で患者さんの定時薬の残りは7月5日まである状態という形です。
何故そんな残薬を残すような真似をするのか?
その理由はいくつかありますが、最も大きな理由は、
『災害時に医療機関が機能不全に陥った時の為』
これが大きいです。
この『災害時』とは地震などもそうですが、大雨や大雪などで交通機関が麻痺して薬局から薬をお届け出来なくなるケースも想定されています。
薬局都合の理由としては、単純に仕事量的に間に合わなくて、薬を切らさないように保険として手持ちを持っていてもらうということも理由もあります。
今日から?定時薬から?
さて、本題だったいつから始めるか?という点です。
私が同行している訪問診療医は14日分を定時的に処方しています。
この辺りは30日分であったり、医師によって色々異なります
追加する薬を定時薬から開始する場合は、純粋に14日分でOKです。
しかし、今日から始めるということであれば、14日分だと定時薬に比べて足りなくなってしまうことになります。
定時薬に繋げる?
今日から追加する薬を定時薬に繋げるか、飲み切るかで対処は変わってきます。
追加する薬を飲み切るなどの指示であれば定時薬に合わせる必要はないため、日数を気にする必要はありません。
しかし、定時薬に繋げる指示が出た場合は、定時薬の残薬を確認しておく必要があります。
7月1日時点で患者さんの定時薬の残りは7月5日まである状態ということであれば、本日14日分処方される定時薬の終了日は7月6日から14日後の7月19日までとなります。
つまり今日から定時薬の終了まで19日分ある計算になります。
その為、追加薬に関しては定時薬よりも5日分多い19日分で処方してもらう必要があります。
※定時処方が21日分の時なら今日からの追加薬の処方は26日分にしてもらえればOKです。
薬を増量する場合
1錠→2錠の場合
最も面倒なのは、定時薬にある薬を増量するケースです。
定時薬でA薬を1錠飲んでるとします。
医師から、
『A薬を1錠から2錠に増やしたいけど、何日分で処方すれば良い?』
こんな質問が急にきたときは正直焦ります。
定時薬から増やすということであれば、単純に14日分でOKです。
しかし、今日から増やすということであれば話は変わってきます。
何故なら、19日分で処方してもらうと薬が余ってしまうからです。
定時薬で既にA薬は1錠入っている為、A薬2錠19日分だと合計38錠薬を渡す計算になります。
7月6日以降の定時分に関しては、単純に2錠14分なので28錠必要です。
しかし、7月1日から7月5日の5日間に関しては、既に残薬として5錠手持ちがあるのです。
その為、7月1日から7月5日の5日間は1錠足せば2錠の服用となるため、必要錠数は5錠となります。
7月1日から7月5日に必要なのは5錠。
7月6日以降の定時分14日分で必要なのは28錠。
合計33錠が今回の処方で必要になります。
その為、必要数の33錠で処方してもらう為に、A薬2錠17日分(34錠)で処方してもらう形となります。
偶数なので、端数1錠出てしまいますがこれは削り切れないので仕方がないですね(^_^;)
2錠→3錠の場合
たまにあるのが、
『2錠から3錠に増やして。
で、今日から開始』
という例です。
これも先程と同じ計算方法でやると、
定時分で必要なのは3錠×14日で42錠。
今日から定時までの5日分で5錠。
合計47錠必要という計算になります。
その為、47錠にするために、A薬3錠18日分(48錠)で処方してもらう形となります。
処方を分けて貰う手も…
処方医さえ許してくれるのであれば、処方の出し方を変えてもらうのも手です。
増える薬に別の規格があるようであれば、継続服用にしてもらいます。
1錠から2錠に増やす場合
①A10mg1錠 5日分
②A20mg1錠 14日分
①を飲み切った後に②を開始
このような形ですね。
しかし、場合によってはお会計が上がる場合もありますので注意が必要です(^_^;)
最後に
必要ない薬を処方されてしまうと、患者さんのお会計も医療費も高くなってしまうので、極力避けねばなりません。
そうした適正な医療の形を提供するのも薬剤師の役目ですので、日数調節もしっかりしないとですね。
薬局業務の参考になれば幸いです。
ではでは。