【認知症】AChE阻害薬(アリセプトやレミニール)、NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)の使い分け

薬局業務
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここでは認知症薬のAChE阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)、NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)の使い分けをまとめています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

先にまとめ:大まかな使い分け

  • 中等度認知症では、改善効果は『AChE阻害単剤<AChE阻害+メマンチン』
  • AChE阻害では3剤間で有効性に明確な差はない
  • 有効性よりも、副作用、忍容性、使いやすさから薬剤選択する
  • AChE阻害では消化器症状・不整脈・易攻撃性・不眠が多い
  • 特に悪心嘔吐、食欲不振、下痢などの頻度は多い
  • ドネペジルとガランタミンでは副作用の差はない
  • メマンチンでは浮動性めまい・傾眠・頭痛が多い
  • 副作用は開始時および増量時に出現しやすい
  • 副作用が多い場合はリバスチグミンが推奨
  • AChE阻害は肝代謝、メマンチンは腎排泄
  • ガランタミンとメマンチンは腎機能低下例には調節が必要

AChE阻害とNMDA受容体拮抗

認知症薬は比較的新しいお薬です。

1999年にドネペジルが発売されました。

その後、2011年にガランタミン、リバスチグミン、メマンチンが続いて発売された経緯となっています。

 

作用機序から、認知症薬は大きく2つに分けられます。

 

コリンエステラーゼ(AChE)阻害薬

  • ドネペジル(アリセプト)
  • ガランタミン(レミニール)
  • リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)

 

アルツハイマー型認知症では、コリン作動性ニューロンが障害されるため、認知機能に関係するアセチルコリンの量が減ることで、記憶・学習機能の障害があらわれるとされています。

アセチルコリンを分解する酵素には、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)があります。

 

AChEが過剰に働くことで、脳内のアセチルコリンは減少し、更に記憶・学習機能の障害があらわれてしまいます。

コリンエステラーゼ(AChE)阻害薬は、AChEを阻害することで、脳内のアセチルコリンの減少を防ぎ、認知症抑制効果を発揮します。

 

NMDA受容体拮抗薬

  • メマンチン(メマリー)

 

脳内の神経興奮伝達物質であるグルタミン酸という物質がNMDA受容体に作用することで、記憶や学習に関わっています。

アルツハイマー型認知症では、通常よりもグルタミン酸が過剰に働いているとされています。

 

過剰なグルタミン酸の働きにより、NMDA受容体も過剰に活性化することによって、神経細胞の障害や記憶・学習機能の障害があらわれるとされています。

メマンチンはNMDA受容体の過剰な活性化を抑えることで、認知症抑制効果を発揮します。

 

メマンチンはAChE阻害薬と併用が推奨

メマンチンは原則として、認知症症状が中等度以上で使用可能です。

使用には他のAChE阻害薬との併用が推奨されています。

 

軽度認知症には弱い印象ですが、中等度以上でのAChE阻害との併用療法はAChE阻害単剤に比べてわずかに認知機能改善効果が高かった報告もあります。

むかたけ
むかたけ

認知症機能改善効果:AChE阻害単剤<AChE阻害+メマンチンですね。

特にドネペジルとの併用は認知機能の他、興奮、攻撃性、易刺激性、食欲を、優位に改善させる効果があると示されています。

 

認知症の重症度によって使える薬が違う

ガランタミンとリバスチグミンは、重度の認知症に対する適応はなく、中等度までとなっています。

なので、AChE阻害ではドネペジルだけが高度認知症に使用可能なのが現状です。

 

ちなみに、レビー小体型の適応もドネペジルのみとなっています。

 

ドネペジル ガランタミン リバスチグミン メマンチン
効能・効果 アルツハイマー型認知症(AD)症状の進行抑制
ADの適応重症度
×
× ×
レビー小体型認知症 × × ×

 

有効性よりも使いやすさ重視

ガイドラインでは、基本的にはAChE阻害の中から1つ選択することが推奨されており、3剤で有効性に明確な差はないとされています。

米国医師会のガイドラインでは有効性よりも、副作用、忍容性、使いやすさから薬剤選択するように記載されています。

 

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副作用

AChE阻害の副作用は、アセチルコリン作動系の賦活化による消化器、循環器、中枢神経症状があります。

特に悪心嘔吐、食欲不振、下痢などの頻度は多く、開始時および増量時に出現しやすいです。

 

これらの副作用は、急激な血中濃度の上昇によるものが多いとされています。

その為、副作用が多い例ではリバスチグミンが推奨されます。

 

リバスチグミンの赤みやかぶれ

貼り薬であるリバスチグミンは、血中濃度が緩やかに上がるので、副作用は少なめとされています。

 

しかし、たまに貼ったところの赤身やかぶれの副作用が現れることが多いです。

 

対策としては、

  • 貼付部位を毎回変える
  • 貼付箇所、貼付予定箇所には保湿剤を塗っとく

などすると、かぶれの副作用予防になります。

 

赤みやかぶれには、リンデロンなどのステロイド性抗炎症外用薬を用いることが多いです。

 

ドネペジルとガランタミンに差はない

飲み薬のドネペジルとガランタミンでは副作用の差はないとされています。

消化器症状の他、循環器では不整脈が、中枢神経では易攻撃性、不眠などが報告されています。

 

むかたけ
むかたけ

現場としては、ドネペジルの興奮、易攻撃性の副作用はよくみかけます。

 

メマンチンでは浮動性めまいや傾眠、頭痛が多い印象です。

多くは開始時や増量時におきやすいとされています。

 

むかたけ
むかたけ

夜間に不穏が起きている人に、ドネペジル→メマンチンへ変更すると、不穏が良くなり眠れるようになったケースはよくあります。

 

ちなみに、2020年6月メマンチンにも房室ブロックや洞性徐脈等の徐脈性不整脈が重大な副作用に追加されました。

なので、メマンチン服用中には動悸や息切れ、めまいの症状に注意が必要です。

 

相互作用

AChE阻害薬は、コリン作動性のベタネコールや、ほかのAChE阻害薬と併用注意になっています。

併用すると悪心嘔吐、腹痛、徐脈のリスクがある為、併用時には副作用に注意が必要です。

 

ドネペジルやガランタミンはCYP3A4、2D6で代謝されるので、イトラコナゾールなどの併用で作用増強の恐れがあります。

リバスチグミンはCYPの関与はないため、これらの心配はいりません。

 

ドネペジル ガランタミン リバスチグミン メマンチン
漸増期間 3→5mg:1~2w 4wごと 4wごと 1wごと
5→10mg:4w
半減期(hr) 89.3 9.4 2.68 63.1
代謝
肝・腎低下時調節 必要なし 必要あり 必要なし 必要あり

 

メマンチンは腎排泄で、一部カチオン輸送系で排泄されます。

モルヒネやアトロピンとの併用でメマンチンの血中濃度が上昇する可能性があります。

 

その他、尿アルカリ化のアセタゾラミドなどでも上昇します。

また、ドパミン遊離を促進するので、抗パーキンソン病薬との併用には注意が必要となっています。

 

腎機能低下例への投与

腎機能低下例においては、ドネペジルとリバスチグミンが腎機能正常者と同じように扱うことができます。

 

ガランタミンは 3/4に減量し最大は1日16mgまでとしています。

クレアチニンクリアランスが10未満になった場合、2/3減量又は低用量から慎重投与となっています。

FDAでは、クレアチニンクリアランスが9未満の場合では使用は推奨されていません。

 

メマンチンに関しては、クレアチニンクリアランスが30以上であれば問題なく使うことができるが、30未満になった場合は10 mgまでが推奨されています。

認知症新薬

2020年12月には新薬のアデュカヌマブが承認申請されました。

これはアミロイドβタンパク質を標的とし、このタンパク質を除去することで認知症の進行抑制、遅延が期待されています。

既存の対症療法とは異なり、初の根本的治療となる可能性があるお薬です。

 

まとめ:大まかな使い分け

  • 中等度認知症では、改善効果は『AChE阻害単剤<AChE阻害+メマンチン』
  • AChE阻害では3剤間で有効性に明確な差はない
  • 有効性よりも、副作用、忍容性、使いやすさから薬剤選択する
  • AChE阻害では消化器症状・不整脈・易攻撃性・不眠が多い
  • 特に悪心嘔吐、食欲不振、下痢などの頻度は多い
  • ドネペジルとガランタミンでは副作用の差はない
  • メマンチンでは浮動性めまい・傾眠・頭痛が多い
  • 副作用は開始時および増量時に出現しやすい
  • 副作用が多い場合はリバスチグミンが推奨
  • AChE阻害は肝代謝、メマンチンは腎排泄
  • ガランタミンとメマンチンは腎機能低下例には調節が必要

最後に

大まかな使い分けは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)

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