本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。
ここでは漢方薬の『五苓散』を大まかに解説しています。
私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。
※うちの薬局で取り扱っている漢方が『ツムラ』製ですので、ツムラの漢方薬で紹介させていただいてます。
先にまとめ
- 五苓散は主にバラバラになった水分の分布を本来の状態に戻す
- 下痢嘔吐など、『水』が出ていきやすい人に効きやすい
- 妊娠時のつわりにも
- 二日酔いには事前に服用しておくのがおすすめ
- 消化器の改善効能はビャクジュツ
- 水分バランスを整える効能はソウジュツ
漢方の考え方
漢方薬は東洋医学に分類される医療です。
薬理作用のメカニズムに基づく西洋医学に対して、東洋医学は経験則に基づく医療なイメージです。
要は、
『なんかよくわからんけど、○○な人に使ったら効いた!』
というイメージです(;^ω^)
…あくまでもわたしのイメージですが…
気・血・水
そんな経験則の面が強い漢方薬治療で基本的な考えが『気・血・水』です。
ここでいう気・血・水は通常医療で使われる『血』や『水』とは少しニュアンスが異なります。
気:目には見えないエネルギー、活力(元気がないとかで使う『気』のこと)
血:体に栄養を与える液体全般の事。
水:体を潤す液体全般の事(鼻水とか色々)
ヒトの体は『気・血・水』のバランスが保たれてると健康でいられるというのが、漢方医療の大原則となっています。
逆に、『気・血・水』の内どれか一つでも過剰だったり足りなかったりすると、途端に体は不調になります。
『気』が足りないと元気がなく、食欲がないとか。
逆に『気』が過剰だと、イライラするとかですね。
これらの『気・血・水』の是正を漢方薬で行い、バランス調節して体を健康な状態に傾けようという考えです。
その為、
『漢方薬で病気を治す』
のではなく、
『漢方薬で体を健康状態にして、体本来の治癒力で病気を治す』
といった考え方になります。
よく、
『漢方薬で体質を改善する』
と言われているのは、このようなことも理由の1つとなっています。
五苓散
五苓散(ごれいさん)
効能又は効果:
口渇、尿量減少するものの次の諸症
浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病
『水』の不調に関わる疾病によく使用されますが、
日常生活では、
『二日酔いの時には五苓散!』
と言われるほど二日酔い時に使用されます。
本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス2.0gを含有する。
日局タクシャ 4.0g
日局ソウジュツ 3.0g
日局チョレイ 3.0g
日局ブクリョウ 3.0g
日局ケイヒ 1.5g
生薬の組み合わせは、『水』を整える役割の生薬が多いです。
各生薬の働き:
タクシャ:利水
ソウジュツ:健胃、整腸、利尿
チョレイ:利水
ブクリョウ:利尿、鎮静、健胃
ケイヒ:発汗促進、解熱
『水』の流れをブクリョウやソウジュツで改善し、冷えにより膀胱の働きが悪くなっている為、ケイヒで体表を温めて、タクシャやチョレイで膀胱の働きを改善するといったところでしょう。
二日酔いに
五苓散は身体の水分バランスを整えてくれる作用があります。
二日酔いの時の吐き気や頭痛はアルコールの代謝物であるアセトアルデヒドや水分バランスの不調により引き起こされるとされています。
つまり、二日酔いの原因の一つは身体の水分バランスの不調によるものです。
五苓散は身体の余分な水分を排泄し、水分バランスを整えることで二日酔いの頭痛などを改善してくれます。
水毒は身体の水分の分布がアンバランスになることによって生じます。
五苓散は主にバラバラになった水分の分布を本来の状態に戻す効果を発揮してくれます。
漢方医学でも、二日酔いは水毒として有名です。
特に嘔吐や下痢など、身体の中の『水』が外に出ていきやすい状態な時は、五苓散がうまく噛み合って作用してくれます。
飲んだ日の翌日に吐き気だけではく、下痢にもなりやすい人にはうってつけな漢方薬となっています。
つわりにも
吐き気や嘔吐に関しては、妊娠時の『つわり』があります。
五苓散はつわりのときの吐き気や嘔吐対策で使用される数ある漢方薬の中の1つでもあります。
妊婦さんにも安心してお使いいただけるので、試して見るのもアリです。
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二日酔いには3回服用がおすすめ
五苓散には予防的な効果も期待出来ます。
二日酔いが発生してから服用するより、出来れば事前に服用しておいた方が良いです。
私の先輩薬剤師もよく五苓散を飲んでますが、
『お酒を飲む前に1回。
飲んだその日の寝る前に1回。
朝起きた時にまた1回』
この布陣が最強。
このように三段重ねで服用することが多いようです。
お酒も漢方もよく飲む先輩やね…
アルコール頭痛
五苓散の他、市販で買えるアルコール頭痛薬に『アルピタン』があります。
こちらも生薬が配合されていて、ベースとなっている漢方薬は五苓散となります。
しかし、ツムラの五苓散の配合とは異なり、『ソウジュツ』の代わりに『ビャクジュツ』が使用されています。
ツムラの五苓散にはソウジュツが入っています。
ソウジュツとビャクジュツ
効果としては、ソウジュツ(蒼朮)もビャクジュツ(白朮)も消化器を健やかにする効能や、水分バランスを整える効能を持っていますが、消化器への効能はビャクジュツの方が良いといわれています。
一方で、水分バランスを整える効能はソウジュツが良いとされています。
患者の病態によって使い分けられる形ですね。
ビャクジュツの方が胃腸機能を向上させるので、飲食が必須の二日酔い等には良いかもしれませんね。
飲食を伴わない水毒であれば、ソウジュツの方が向いてそうですね。
まとめ
- 五苓散は主にバラバラになった水分の分布を本来の状態に戻す
- 下痢嘔吐など、『水』が出ていきやすい人に効きやすい
- 妊娠時のつわりにも
- 二日酔いには事前に服用しておくのがおすすめ
- 消化器の改善効能はビャクジュツ
- 水分バランスを整える効能はソウジュツ
最後に
大まかな解説は以上となります。
医療業務の参考になれば幸いです。
ではでは。
参考文献
ツムラ五苓散添付文書
漢方製剤活用の手引き‐証の把握と処方鑑別のために‐
洋漢統合処方からみた漢方製剤保険診療マニュアル改定ポケット版
「アルコール頭痛」の症状とアルピタンのメカニズム|アルコールによる不調を改善|アルピタンシリーズ|小林製薬 (kobayashi.co.jp)