【抗血栓】P2Y12拮抗薬プラビックスとエフィエントの違い

医療系
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

 

ここでは抗血小板薬であるプラビックス(クロピドグレル)エフィエント(プラスグレル)の違いについてのお話です。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

抗血栓薬の大まかな使い分けはこちらをご参考ください👇

 

先にまとめ

  • プラビックスを改良したものがエフィエント
  • プラビックスはCYP2C19で代謝されて薬効発揮
  • 日本人の約20%はCYP2C19の働きが弱いので、プラビックスには薬効の個人差がある
  • エフィエントはCYP2C19に影響しないのでプラビックスよりも、個人差が改良されている
  • 作用発現の速さはプラビックス<エフィエント
  • お財布にやさしいのはプラビックスで後発もある(2024年時点)
  • 適応領域はプラビックスの方が広く(心臓、脳、末梢)、エフィエントには末梢適応はなし(2024年時点)

 

プラビックスとエフィエント

プラビックスとエフィエントの違いですが、簡単に言ってしまえば、

 

プラビックスを改良したものがエフィエント

 

という事になります。

 

プラビックスは臨床では幅広く使用されていますが、効き目に個人差がある薬として有名です。

その理由として、『CYP2C19』が関係します。

 

プラビックスはそのままでは薬効はなく、主に肝臓のCYP2C19の代謝を受けて初めて薬効を発揮します。

このCYP2C19ですが、実は日本人の18~23%は遺伝的にCYP2C19の働きが弱いと言われています。

その為、プラビックスは日本人に対しては効き目に個人差が出やすいとされています。

 

むかたけ
むかたけ

代謝酵素が働く人と働かない人で治療効果に差が出てしまうということですね💦

 

対して、エフィエントはCYP2C19などの影響をあまり受けることなく薬効が現れます

代謝経路の影響を受けにくいので、エフィエントの方がプラビックスよりも血小板抑制作用の発現も早いとされています。

その為、プラビックスに比べて個人差が現れにくく、安定した治療効果が期待出来ると言えます。

 

ちなみに、プラビックスやエフィエントは『バイアスピリン』と併用することもありますが、プラビックス+バイアスピリンよりも、エフィエント+バイアスピリンの方が治療成績が良かった報告もあります。

 

エフィエントはCYP2C19にはあまり影響しませんので、プラビックスで併用注意が必要な薬剤(オメプラゾールやリファンピシン)に対しても、併用時の相互作用のリスクが減ることとなります✨

 

そんなんだったらもうプラビックスより全部エフィエント使った方が良くね?

という声が上がりそうですが、プラビックスの利点もあります。

 

それは薬価適応です。

プラビックスを改良したものがエフィエントなので、プラビックスの方が先に発売されました。

その為、薬価はプラビックス<エフィエントになります。

2024年4月1日時点薬価
プラビックス錠75mg:66.9円
エフィエント錠3.75mg:254.3円

 

プラビックスにはジェネリック医薬品もあるため、患者のお財布的には後発クロピドグレルを使用した方が助かる場面も多いです。

 

プラビックスとエフィエントとでは、30日分にかかるお金(薬剤料のみ)は3割負担で大体1,620円違います(2024年4月1日時点)

プラビックス錠75mg(薬価66.9円)とエフィエント錠3.75mg(薬価254.3円)で比較。それぞれ1錠分1で30日分服用した場合の薬剤料

ちなみに後発クロピドグレル錠75mg「SANIK」(薬価35.5円)で比較した場合は1,890円違います

むかたけ
むかたけ

年間で2万円近く変わるのはなかなか大きな差ですね…

 

そして適応症ですが、2024年時点では、プラビックスの方がエフィエントよりも、多く適応があります。

プラビックスの適応は『心臓』、『脳』、『末梢』の3つの領域で使えますが、エフィエントは『心臓』と『脳』の2つです。

 

プラビックスの適応症
『心臓』:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患(急性冠症候群・安定狭心症・陳旧性心筋梗塞)
『脳』:虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)の再発抑制
『末梢』:末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制

 

エフィエントは発売当初(2014年)は『心臓』領域の適応症しかありませんでした。

それから2021年に『脳』領域の『虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)』が適応拡大されましたが、『末梢』領域の『末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制』は適応拡大されていない状況です。

むかたけ
むかたけ

使える領域に関してはまだプラビックスに分がある形ですね

まとめ

  • プラビックスを改良したものがエフィエント
  • プラビックスはCYP2C19で代謝されて薬効発揮
  • 日本人の約20%はCYP2C19の働きが弱いので、プラビックスには薬効の個人差がある
  • エフィエントはCYP2C19に影響しないのでプラビックスよりも、個人差が改良されている
  • 作用発現の速さはプラビックス<エフィエント
  • お財布にやさしいのはプラビックスで後発もある(2024年時点)
  • 適応領域はプラビックスの方が広く(心臓、脳、末梢)、エフィエントには末梢適応はなし(2024年時点)

 

最後に

大まかな違いは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

 

参考文献
今日の治療薬2024
各薬剤添付文書

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