新型コロナウイルスのワクチンには副反応がいくつかありますが、その中でも最近では心筋炎が取り上げられています。
以前から新型コロナワクチンの副反応として、心筋炎の心配はされていました。
2021年12月3日に、新型コロナワクチンの添付文書に心筋炎について改定が記載されました。
今回はコロナワクチンの副反応の心筋炎についてのお話です。
心筋炎・心膜炎とは
心筋炎
心臓は、心筋と呼ばれる筋肉を収縮・弛緩させることで、身体に血液を送るポンプの機能を果たしています。
心筋炎とは、この心筋に炎症が起こることで、心臓のポンプ機能などに障害が生じることを指します。
ポンプ機能に障害が起きる為、不整脈や収縮不全が起きやすくなってしまいます。
心筋炎の原因は、ウイルスや細菌、寄生虫などが多く、他には薬物や膠原病などでも生じることがあります。
風邪のウイルスが原因で発症することがありますので、だたの風邪と間違えやすいです。
いつもの風邪とは違い、身体がだるかったり、めまい、立ちくらみや息切れが気になるようであれば早めの受診をお勧めします。
一般的にウイルス感染による心筋炎は、一過性のことが多く、数週間で回復します。
しかし、重症化してしまうと回復が長引いたり、後遺症で慢性的な心不全になってしまうケースもありますので、注意が必要です。
心膜炎
心臓は剥き出しの状態ではなく、心膜と呼ばれる膜に覆われて保護されています。
心膜炎は、この心膜に炎症が起きている状態を指します。
原因については心筋炎とほとんど同じで、ウイルス感染によるものが多いです。
心膜の炎症は、胸痛を引き起こします。
特に、深呼吸時の胸の痛みが特徴です。
多くは心電図や心エコー検査でわかりますが、症状が軽い場合は検査でもわからない場合もあります。
心筋炎よりも回復までの期間は早く、数日で回復するケースが多いです。
ワクチンによる心筋炎
現在、心筋炎が心配されている新型コロナウイルスのワクチンは、mRNAワクチンのコミナティ筋注(ファイザー製)とモデルナ筋注(モデルナ製)になっています。
心筋炎については、当初から副反応として報告されていましたが、各ワクチンの添付文書上では、
『因果関係は不明であるが、本剤接種後に、心筋炎、心膜炎が報告されている』
という文言でした。
しかし、2021年12月3日の添付文書改定により、
『心筋炎、心膜炎があらわれることがあるため、』
と、『因果関係は不明』などの文言を外して、ワクチンの副反応と認めるような記載に改定されました。
心筋炎の発生率
2021年10月15日の厚生労働省審議会では、ファイザー製とモデルナ製のワクチンによる心筋炎の事例が報告されました。
その結果、
- 両ワクチンとも1回目よりも2回目接種時の方が心筋炎の副反応が多い
- ファイザー製では20代男性に多い
- モデルナ製では10代及び20代男性に多い
- ファイザー製とモデルナ製では、モデルナ製の方が心筋炎の報告頻度が高い
- ファイザー製では2.1件/100万人接種・1.1件/100万回接種の発生頻度
- モデルナ製では6.0件/100万人接種・3.4件/100万回接種の発生頻度
このような報告がありました。
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ワクチン接種は避けるべき?
今回の報告で、心筋炎・心膜炎の発生頻度などが明確となってきました。
ファイザー製よりもモデルナ製の方が、約3倍の副反応の報告となっているのにも注目してしまいます。
しかし、モデルナ製の方が心筋炎のリスクが高いとはいえ、3.4件/100万回接種です。
確率に換算すると、0.00034%と非常に低い確率であることがわかります。
0.00011%(ファイザー製)と0.00034%(モデルナ製)の副反応の差をどのように解釈するかは個人で左右される部分があると思います。
ちなみに、ワクチン接種による心筋炎よりも、実際にコロナウイルスに感染することで発症してしまう心筋炎の方が、発症確率は遥かに高いです。
厚生労働省も、心筋炎を危惧してワクチン接種を避けることよりも、ワクチン接種をすることによるメリットの方が大きいと見解しています。
心筋炎を心配して過度にワクチン接種を避ける必要はないと考えられます。
心配ならファイザー製を
心筋炎の副反応の頻度が低いことはわかりました。
しかし、
それでもやっぱり心配・・・。
という声も多いと思います。
特に、10代や20代の若い男性は、女性や他の年齢層と比較して心筋炎のリスクが高いことがわかっています。
モデルナ製よりもファイザー製の方が心筋炎のリスクが少ないのであれば、ファイザー製を検討することがベストでしょう。
まとめ
- mRNAワクチンには、心筋炎・心膜炎の副反応リスクがある
- 若年の男性に出現しやすい
- ファイザー製よりモデルナ製の方が報告頻度が高い
- ワクチン接種による発症確率より、実際にコロナウイルスに感染して発症する確率の方が遥かに高い
- 心配ならファイザー製を接種
最後に
お薬でもワクチンでも、ありとあらゆる事例にメリットとデメリットは同時に存在しているものです。
メリットとデメリットを天秤にかけて、どれぐらいまでなら許容出来るかは個人やご家族の考え方や価値観によって大きく異なります。
情報の取捨選択をしっかりと行って、自分にとって最良の判断を目指していきたいものですね。
ではでは。
参考文献
令和3年度指示分 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 (pmda.go.jp)
000243862.pdf (pmda.go.jp)
000844075.pdf (mhlw.go.jp)
672212_631341DA1025_1_10 (pmda.go.jp)
400256_631341EA1020_1_08 (pmda.go.jp)
ワクチンを接種すると心筋炎や心膜炎になる人がいるというのは本当ですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)