本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。
ここでは時間依存性と濃度依存性の抗生剤の使い分けをまとめています。
私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。
先にまとめ:大まかな使い分け
時間依存性
- どれだけの時間抗生剤を暴露させられるか
- 時間依存性は一回量を増やすよりも1日の投与回数を増やした方が効きが良い
- ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系(一部除く)、テトラサイクリン系が該当
濃度依存性
- 高濃度を短期間で与えることで効果が高まる
- 濃度依存性は一度に高濃度を使用した方が効果が高まる
- ニューキノロン系、アミノグリコシド系が該当
その他
- 使い分けには臓器移行性も考慮すること
- 【肺】マクロライド、ニューキノロン、テトラサイクリン、リンコマイシン
- 【肝臓、胆汁】マクロライド、ニューキノロン、テトラサイクリン、リンコマイシン、ペニシリン系の一部、セフェム系の一部
- 【腎、尿路】ペニシリン、セフェム、モノバクタム、カルバペネム、アミノグリコシド、ニューキノロン、グリコペプチド
- 【髄液】クロラムフェニコール、ペニシリン、カルバペネム、セフェム系の一部、ニューキノロン
- 【マクロファージ等の血球】
マクロライド系、ニューキノロン、テトラサイクリン、クリンダマイシン
時間か濃度か
抗生剤にはいくつかのタイプがあります。
タイプ分けとして重要となってくるのは、
『抗生剤の効かせ方』
の違いです。
タイプは大きく2つです。
『時間依存性』と『濃度依存性』です。
時間依存性
時間依存性は原因となる菌に
『どれだけの時間抗生剤を暴露させられるか』
で効果が高まります。
時間依存性の抗生剤は、
- ペニシリン系
- セフェム系
- マクロライド系(一部除く)
- テトラサイクリン系
となります。
これらのお薬は、一回量を増やすよりも1日の投与回数を増やした方が効きが良いです。
なので、
というケースでも
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『何とか3回に分けて飲んで下さい』
とお願いすることが多いです。
というお話は良く耳にしますが、これは少しでも長く菌に抗生剤をぶつける為でもあります。
一度に大量を与えても効果が出にくいのが特徴です。
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じわじわとダメージを与える系ですね。
濃度依存性
濃度依存性は原因となる菌に、
『高濃度を短期間で与えることで効果が高まる』
このようなタイプです。
濃度依存の抗生剤は、
- ニューキノロン系
- アミノグリコシド系
となります。
時間依存のように回数を分けて暴露時間を増やしても対して効果は高くありません。
一度に高濃度を使用した方が効果が高まる特徴があります。
なので、この手のお薬は1日1回の服用が多いです。
という患者にも、
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『菌をやっつけられなくなるから、出来たら1日1回で飲んじゃって下さい』
と説明してます。
夜に来局し、クラビット(レボフロキサシン)が朝食後に処方されてる方には、
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『今日の夜に一回飲んで、明日の朝にまた一回飲んでも構いません。
服用の間隔が近くなりますが、問題ありません。』
と、お話することも多いです。
もちろん、許容分量でかつDr.も暗黙の了解です。
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一点集中系ですね。
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臓器移行性
内服の抗生剤は、服用後に血中に入り全身を巡ります。
しかし、抗生剤毎に臓器への移行性の良し悪しがあります。
『同じ菌には効くけれど、症状の箇所によって使う抗生剤が違う』
というのはこうした理由もあります。
臓器移行性が良好な抗生剤
【肺】
マクロライド、ニューキノロン、テトラサイクリン、リンコマイシン
【肝臓、胆汁】
マクロライド、ニューキノロン、テトラサイクリン、リンコマイシン、ペニシリン系の一部、セフェム系の一部
【腎、尿路】
ペニシリン、セフェム、モノバクタム、カルバペネム、アミノグリコシド、ニューキノロン、グリコペプチド
【髄液】
クロラムフェニコール、ペニシリン、カルバペネム、セフェム系の一部、ニューキノロン
【マクロファージ等の血球】
マクロライド系、ニューキノロン、テトラサイクリン、クリンダマイシン
臓器移行性を利用したお薬も…
マクロライド系のアジスロマイシンは、3日の投与で効果が7日間持続します。
これもマクロファージに取り込まれやすい特性を利用したものになります。
経験則ですが…
現場として抗生剤の使用頻度が多いのは、
ペニシリン系:風邪や幅広い感染症領域、ピロリ
セフェム系:風邪や幅広い感染症領域、口腔外科領域
マクロライド系:呼吸器系領域、副鼻腔炎、ピロリ
テトラサイクリン系:皮膚領域
ニューキノロン系:呼吸器系領域、泌尿器系領域
こんな感じの傾向にあるイメージです。
クラビット単発の処方せんの場合は、ほぼ間違いなく膀胱炎だったりとかそんな感じです。
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あくまで私の経験上ですので、ご参考までに…
まとめ:大まかな使い分け
時間依存性
- どれだけの時間抗生剤を暴露させられるか
- 時間依存性は一回量を増やすよりも1日の投与回数を増やした方が効きが良い
- ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系(一部除く)、テトラサイクリン系が該当
濃度依存性
- 高濃度を短期間で与えることで効果が高まる
- 濃度依存性は一度に高濃度を使用した方が効果が高まる
- ニューキノロン系、アミノグリコシド系が該当
その他
- 使い分けには臓器移行性も考慮すること
- 【肺】マクロライド、ニューキノロン、テトラサイクリン、リンコマイシン
- 【肝臓、胆汁】マクロライド、ニューキノロン、テトラサイクリン、リンコマイシン、ペニシリン系の一部、セフェム系の一部
- 【腎、尿路】ペニシリン、セフェム、モノバクタム、カルバペネム、アミノグリコシド、ニューキノロン、グリコペプチド
- 【髄液】クロラムフェニコール、ペニシリン、カルバペネム、セフェム系の一部、ニューキノロン
- 【マクロファージ等の血球】
マクロライド系、ニューキノロン、テトラサイクリン、クリンダマイシン
最後に
大まかな使い分けは以上となります。
医療業務の参考になれば幸いです。
ではでは。
参考文献
今日の治療薬2022
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)