今回はカルボシステイン(ムコダイン)とアンブロキソール(ムコソルバン)の違いについてお話します。
医療業務の参考になれば幸いです😄
同じ作用…?
薬剤師であれば一度は去痰薬の説明をする時に、カルボシステイン(ムコダイン)とアンブロキソール(ムコソルバン)の説明を求められたことはないでしょうか?
私も薬剤師としての新人時代に、
『カルボシステインもアンブロキソールも、両方痰の切れを良くする薬です』
『どう違うんですか?』
と質問されたことがあります。
カルボシステインもアンブロキソールもいわゆる『痰の切れを良くするお薬』であることは間違いありません。
その為、両剤とも作用も同じと思っている方もいると思います💦(というか私がそうでした😓)
カルボシステインとムコソルバンの違い
痰の成分はほとんどが水分です。
水分が約94%、粘性成分のムチンが約5%の比率となっています。
ムチンはたんぱく質の鎖と糖の鎖が合わさった構造となっていて、糖には2つの成分があります。
シアル酸(酸性の糖)とフコース(中性の糖)があり、これらの比率で粘度が決まってきます。
シアル酸/フコースの比率が下がってくると、痰の粘度が増します。
カルボシステインは粘稠度を下げる
カルボシステインは、このうちのフコースの濃度を減少させる作用を持っています。
フコースが減少すると、シアル酸/フコース比は上昇しますので、粘度は低下します。
結果、粘性の低くサラサラした痰に変わります。
カルボシステインはCOPDの急性増悪の抑制効果が示されています。
特に、カルボシステインは去痰作用だけではなく、抗炎症作用や抗オキシダント作用も関係しているとされています。
アンブロキソールは肺に作用して滑りを良くする
アンブロキソールは肺表面のサーファクタントを増加させる事が主な作用となっています。
気道液のゾル層とゲル層の間のサーファクタント層を厚くして、痰の気道粘膜の粘着性を低下させます。
他にも、肺胞表面の水分の表面張力を弱めることで、肺の伸縮をしやすくする働きもあります✨
例えるなら、『洗剤』と同じように界面活性剤として作用し、表面がツルツルになって汚れが落ちるイメージです😄
適応症の違い
作用機序が異なる為に適応症も2剤で若干異なります。
共通する適応症は以下の疾患です。
下記疾患の去痰
上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核
慢性副鼻腔炎の排膿
上記に合わせて、
カルボシステインだけの適応症は、上気道炎の去痰、滲出性中耳炎の排液(ドライシロップ、シロップのみ)
アンブロキソールのみの適応症は塵肺症、手術後の喀痰喀出困難の去痰
となっています。
湿性咳嗽の治療
湿性咳嗽(喀痰を伴う咳)の治療では、咳自体の抑制ではなく、気道過分泌の抑制と喀痰の排泄促進を目的とします。
嚢胞性線維症に対して、カルボシステインとアンブロキソールでの効果比較をした報告があります。
結果、80日間の投与で、痰の粘稠度や弾性は両剤に差はありませんでしたが、咳スコアはカルボシステインでのみ有意に改善したとされています。
痰と侮ることなく…
『両方とも痰の切れを良くする薬です』
と説明するのは簡単ですが、作用機序が違うため2剤しっかり服用した方がが良いです。
…ということを患者に説明しておかないと、
『なんで効果同じなのに2つ飲まなきゃいかんの?
…2つ飲んでも意味なさそうだし、めんどいからどっちかだけで良いや』
という風に受け取られてしまう可能性もあります。
しかし、時には痰が致命的になることもあります。
気管支喘息がひどい時など、炎症で狭くなった気管支に痰が引っ掛かり、窒息死してしまった例もあります。
咳止めで有名な成分である『リン酸コデイン』は市販薬でも多く使用されています。
しかし、リン酸コデインの禁忌の1つには『気管支喘息発作中の患者』とされています。
これはリン酸コデインの作用により、痰の粘度が高くなってしまうことで、窒息のリスクが高くなってしまうことによります。
お年寄りなどは喀痰能力の低下を考慮してカルボシステインなどを長期で服用しているケースもよく見られます。
『あたしゃ何でこんな薬飲んでるんだろう?
別に痰が絡むとか困ってないけど…』
ということで、家族や自己判断で薬を中止してしまうことも少なくないようです。
たかが痰と侮ることなく処方薬は継続して貰いたいですね😃
最後に
医療現場ではカルボシステインもアンブロキソールも一緒に処方されるケースが非常に多いですね🤔
その際には、患者さんにはしっかりと意味あって両方処方されている旨を伝えたれると良いですね✨
参考になれば幸いです。
ではでは。