とある日に患者さんにこんな質問をされました。
先生に『咳喘息』って言われたんですが、気管支喘息とは違うのですか?
今回は気管支喘息と咳喘息の違いに関するお話です。
気管支喘息と咳喘息で混乱している方の参考になれば幸いです。
気管支の炎症
気管支喘息も咳喘息もメカニズムは似たようなものです。
気管支喘息はアレルギー物質などによって引き起こされる気管支の炎症が原因です。
咳喘息の原因は咳過剰による咳の誘発となりますが、
好酸球などの免疫によりアレルギー反応が起きてしまう結果、気管支の炎症が引き起こされてしまいます。
メカニズムは同じようなものですが、症状は少し異なります。
呼吸苦や喘鳴はなし
最大の違いは呼吸困難が伴うかどうかです。
呼吸困難と耳にすれば、今にも窒息しそうな状況を連想しがちですが、単に息苦しく感じるのも呼吸困難の状態と言えます。
気管支喘息の発作は、アレルギー物質(ハウスダスト等)で引き起こされる気管支の収縮によるものです。
当然、空気の通り道が狭まるので苦しくなります。
しかし、咳喘息は気道が敏感になることでの咳誘発です。
咳込みはするものの、明らかな呼吸困難はありません。
その為、気管支喘息によくある喘鳴(胸がゼイゼイ、ヒューヒューと鳴る感じ)はありません。
咳喘息には呼吸苦や喘鳴がないことが一番の特徴です。
治療薬
気管支喘息には抗アレルギーや吸入ステロイドがよく使用されます。
原因が気管支炎ですので、まずは炎症を抑える・予防することが第一です。
詳しくはこちらをご参考ください
咳喘息は繰り返す咳で気管支や気道に炎症が起き、咳が誘発されてしまう状態です。
こちらもまずは炎症を抑えなければいけません。
その為、咳喘息の方にも気管支喘息の患者と同じように抗アレルギーや吸入ステロイドが処方されます。
気道や気管支の炎症をそのままにしておくと、また咳を誘発したり、本当に気管支喘息に移行する恐れもあります。
そのままにしておくと、数年以内に咳喘息の患者さんの3割は気管支喘息に移行すると言われています。
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咳止めは効かない
気管支喘息も咳喘息も気管支部分にアレルギー反応が生じてしまっている状態です。
その為、
咳止めを使っても元のアレルギーが起きている炎症部分をどうにかしないと咳は収まりません。
咳止めの中には、コデインリン酸塩など呼吸抑制の効果を持つ薬もあります。
基本的に咳止めに気管支喘息の適応はありません。
中には気管支喘息発作時には禁忌になっている薬もあります。
これは、咳止めの呼吸抑制作用で喘息発作を悪化させてしまう恐れがあるからです。
気管支喘息などの息苦しい時にこのような咳止めを使用してしまうと、症状が悪化してしまう恐れがありますので注意が必要です。
試しに咳止めを処方することも
喘息既往歴のない患者さんが、
『風邪で咳が止まらなくて困って受診した』
というケースがあります。
このような患者さんには、試しに咳止めを出す事もあります。
『咳止めを使ってみて効果があまりなければ咳喘息の可能性が高い』
ということを確認するためですね。
その為、患者さんに対して、
『これで良くならなければ咳喘息の可能性があるので、再度受診してください』
とお話することもあります。
気管支喘息の一歩手前扱い
症状は違うものの、おおまかな病態は気管支喘息も咳喘息も変わりはありません。
放置しておくと、気管支喘息に移行するリスクもあります。
その為個人的には、
『咳喘息は気管支喘息の一歩手前の状態』
の扱いにしています。
咳喘息の患者さんに喘息禁忌薬(β遮断など)が処方されている場合、念のため処方医には確認するようにしています。
まとめ
- 気管支喘息も咳喘息もアレルギー反応による気管支の炎症が主な原因
- 咳喘息は呼吸苦や喘鳴はない
- 咳喘息の治療薬は基本的に気管支喘息と同様
- 咳止めは効かない
- 放置すると約3割が気管支喘息に移行
- 気管支喘息の一歩手前の状態扱い
最後に
咳が1ヶ月近く止まらない時は、もしかしたら咳喘息かもしれません。
そのような場合はお近くの医療機関への受診をおすすめします。
気管支喘息と咳喘息で混乱している方の参考になれば幸いです。
ではでは。