【薬剤師向け】デパケンRとセレニカRの違いとは?バルプロ酸徐放錠の重要ポイント解説

医療系
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デパケンRとセレニカR…有効成分同じバルプロ酸ナトリウム徐放錠でしょ?
じゃあ、どっち使っても大丈夫…?

 

薬剤師の皆さん、こんな風にヒヤッとしたり頭を悩ませたりした経験、一度はありませんか?

今回は、そんなデパケンRとセレニカRの違いについて、現場でうっかりミスを防ぐためのポイントをまとめてみました。

医療業務の参考になれば幸いです✨

 

結論:成分は同じ。でも「別物」として扱う

いきなり結論から言っちゃいますが、「有効成分は同じ。でも別物として扱った方が無難」となります。

デパケンRとセレニカRの有効成分は、どちらも「バルプロ酸ナトリウム」。これは間違いありません😄

 

しかし、だからといって「じゃあ、どっちに変更してもOKね!」とはならないのがミソです。

この2つの薬は、有効成分の体の中での溶け出し方(溶出プロファイル)が異なるため、薬学的には別の医薬品として区別して扱う必要があります。

 

つまり、

有効成分は同じ「バルプロ酸ナトリウム」。

でも、薬の溶け方が違うから体内での動きも違う。

だから、お互いに変更する場合は処方医に確認を取った方が良い。

ということになります🖊

 

「え?どっちも有効成分同じの先発品でしょ?
メーカーが違うだけで、実質的には併売品みたいなものじゃないの?」

そんな声が聞こえてきそうですが、それもちょっと違うんです。

詳しく見ていきましょう😄

 

なぜ違う?デパケンRとセレニカRの「プロフィール」

この2つの薬剤が「別物」とされる最大の理由は、先ほども触れた「薬の溶け出し方(溶出プロファイル)」の違いにあります。

 

デパケンR錠: 服用後、約9時間で有効成分の約80%が溶け出す。

セレニカR錠: 服用後、約14時間で有効成分の約80%が溶け出す。

見ての通り、セレニカRの方がゆっくりと時間をかけて溶け出すように設計されています。

 

この「溶け出すスピード」の違いが、体の中での薬の動き(体内動態)に影響を与え、結果として半減期や定常状態(薬の血中濃度が安定する状態)に達するまでの時間も異なってくるのです。

 

※バルプロ酸ナトリウム自体の半減期は同じですが、製剤として体から消失するまでの見かけの半減期が異なります。

デパケンRの半減期は約12時間、セレニカRの半減期は約16時間と言われています。

このため、定常状態に達するまでや身体から薬が抜けきるまでに約1日の差が出ることがあります。

 

 同じ有効成分でも、「製剤技術」によって薬の効き方や持続時間がコントロールされている良い例ですね🤔

 

「使い方」を見れば一目瞭然?!セレニカRは基本的に「1日1回」

この溶け出し方の違いは、それぞれの薬の用法にも表れています。

 

セレニカR: ゆっくり溶けて効果が持続しやすいため、基本的に「1日1回」。

デパケンR: 「1日1~2回」。

 

一般名処方で「バルプロ酸ナトリウム徐放錠 1日2回」と記載があった場合、処方医の意図としてはデパケンRを想定している可能性が高いと考えられますね。

 

取り扱い注意!セレニカRは「一包化」が苦手なんです…

製剤的な違いは、こんなところにも影響します。

デパケンRでは可能な「一包化」ですが、セレニカRは基本的に不可とされています。

 

その理由は、セレニカR錠の吸湿性にあります。

湿気に弱く、一包化することで品質が変化してしまう可能性があるためです。

 

一包化希望ならデパケンRへ変更疑義

もしセレニカRを服用中の患者さんから一包化の希望があった場合は、安易に一包化するのではなく、医師にデパケンRへの変更が可能かどうか相談してみるのが良いでしょう🤔

患者さんのコンプライアンス向上という点で、医師も検討してくれるかもしれません。

 

後発医薬品(ジェネリック)のややこしい話…これがまた混乱を招く!

さて、ここからがさらにややこしさを増すポイント、後発医薬品の話です。

セレニカR錠の後発品は、実は存在しない?!(2025年6月時点)

まず、セレニカR錠400mgには、そもそも同じ規格の後発医薬品が存在しません。

セレニカR錠200mgについては、有効成分が同じ「バルプロ酸ナトリウム徐放錠」という名称の後発医薬品は存在します。

しかし、これらはあくまで「有効成分が同じ」というだけで、セレニカR錠特有のゆっくりとした溶出プロファイルを厳密に継承しているわけではないのです。

 

処方箋に「セレニカR錠」と銘柄指定で記載があった場合は、後発品への変更は慎重になる必要があります。

基本的にはセレニカR錠で調剤するのが無難です。

 

顆粒タイプはセレニカR顆粒の後発

バルプロ酸ナトリウム徐放顆粒」という後発医薬品がありますが、これはセレニカR顆粒40%の製剤的特徴を継承していると言われています。

現状、顆粒タイプの先発はセレニカRしかありませんからね🤔

もし顆粒から錠剤への変更を提案する際は、セレニカR錠を提案する方が製剤特性の観点からはスムーズかもしれません。

デパケンには「細粒」という剤形もありますが、これは徐放製剤ではありません!
全くの別物なので、混同しないように細心の注意が必要です。

 

薬剤師を惑わす!現場の「混乱ポイント」を整理!

ここまででも十分ややこしいですが、さらに現場を混乱させる要因がいくつか存在します…😭

 

混乱ポイント①:「徐放A錠」と「徐放B錠」って何だったの?

バルプロ酸ナトリウム徐放錠には、「徐放A錠」「徐放B錠」という区分がありました。

 

一般的には、

徐放A錠 ≒ デパケンRの仲間

徐放B錠 ≒ セレニカRの仲間

と認識されていましたが、これは薬事法規や添付文書で定められた公的な統一用語ではありませんでした。

申し訳ありません😣💦⤵訂正です💦

「バルプロ酸ナトリウム徐放A錠」「バルプロ酸ナトリウム徐放B錠」は、日本薬局方に収載されている公的な規格名称となっています。

訂正前の記事を読んで混乱させてしまった方、申し訳ございませんでした😣💦⤵

 

さらにややこしいことに、デパケンRの後発品なのに「徐放B錠」という名称で販売していたメーカーも存在したのです💦(理由は後発医薬品の商品識別の為、とされていますが…)

これには、

「え?BってことはセレニカRの後発じゃないの?」

と混乱した薬剤師さん。いるのではないでしょうか?

はい、私です(苦笑)

 

幸い、現在では後発メーカーが「徐放A錠」という名称に移行(または統一的な名称に)しており、以前のような混乱は減ってきています。

 

混乱ポイント②:レセコンが「変更OK」って言っちゃう問題!

これが一番厄介かもしれません😱

処方箋に一般名処方で「バルプロ酸ナトリウム徐放錠200mg」と記載されていた場合、多くの薬局のレセコンでは、デパケンR(またはその後発品)も、セレニカRも選択・変更できてしまうケースがほとんどです。

 

ひどい時には、処方箋に「セレニカR200mg」と銘柄指定されていても、デパケンRの後発医薬品が変更候補として表示されることすらあります。

 

なぜこんなことが起こるの?

理由は単純で、レセコンが「有効成分が同じであれば後発品として変更可能」というルールに基づいて処理しているからです。

デパケンRもセレニカRも有効成分は同じバルプロ酸ナトリウムなので、システム上は区別されにくいのです。

 

最も怖いのはコレ!

この「レセコン上での安易な変更」が、レセプト(診療報酬請求)で引っかからずに通ってしまう可能性が高いこと💦

特に1日1回処方の場合、レセプト上ではデパケンRなのかセレニカRなのかを判別するのが困難なため、間違いに気づきにくいという側面があります。

 

最近では、「【般】バルプロ酸ナトリウム徐放錠(先発セレニカR)」や「【般】バルプロ酸ナトリウム徐放錠(1日1回タイプ)」といった、処方医からのメッセージとも取れるコメントが括弧書きで記載されている処方箋も見かけます。

これはセレニカRでの調剤を意図している可能性が高いですが、もしこれを見落として(あるいはレセコンの促すままに)デパケンRの後発品を調剤したとしても、レセプト審査で直ちに返戻や減点となるケースは考えにくいのが現状です。

 

紙レセである場合は話が変わってきますが、電レセの場合、病院側がレセプトに何かしら特別なコメントを入れなければ通る可能性は高いと言えます。

何故なら、レセプトの情報としては一般名処方に対して、その一般名に合致する有効成分・剤形・規格の医薬品(例:デパケンR)が調剤されていれば、形式的には「一般名処方のルール内での調剤」と見なされる為です。

審査機関も膨大なレセプトを処理するため、括弧書きのコメントまで全件詳細に読み込み、調剤された薬剤との整合性を一件一件厳密に照合するのは現実的に難しいのかもしれませんね…😅

 

サクッとまとめ!混乱のタネはコレだ!

  • デパケンRとセレニカR、有効成分は同じバルプロ酸ナトリウム!
  • でも、薬の溶け出すスピード(溶出プロファイル)が違う! (だから体内動態も違う)
  • それなのに、有効成分が同じだからレセコン上では変更できちゃうことが多い!
  • さらに、変更してもレセプトで通っちゃう可能性が高いから、間違いに気づきにくい!

 

デパケンR vs セレニカR 違いが一目でわかる(かもしれない)比較表

 

特徴項目 デパケンR錠 セレニカR錠
有効成分 バルプロ酸ナトリウム
バルプロ酸ナトリウム
溶出の目安 約9時間で80%溶出
約14時間で80%溶出
用法・用量 1日1~2回
原則として1日1回
一包化 可能
不可(吸湿性のため)
後発医薬品 複数あり
厳密な意味での後発品はなし (2025年6月時点)
顆粒の特徴 - (細粒は徐放性なし)
後発の徐放顆粒はセレニカR顆粒の製剤特徴を継承

※半減期や定常状態までの時間は製剤によって異なるため、詳細は各薬剤の添付文書をご確認ください😄

 

最後に

「デパケンRとセレニカRの違い」これは、本当に多くの薬剤師さんが一度は「おや?」と立ち止まるポイントではないでしょうか🤔

そして、その違いをしっかり理解しておくことは、患者さんへ適正な薬物療法を提供する上で非常に重要です。

 

特に新人薬剤師さんが入ってきた際には、この「デパケンRとセレニカR問題」は必ず一度は教育しておきたい必須項目と言えるでしょう✨

 

この記事が、日々の医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

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