本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。
ここではナウゼリンとプリンペランの簡単な違いを説明します。
私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。
先にまとめ
- ナウゼリン脳まで届かない。プリンペラン脳まで届く
- プリンペラン錐体外路リスクあるが、中枢性の吐き気の範囲広い
- ナウゼリン上部消化管機能向上によるレボドパ吸収高める
- 妊娠時はプリンペラン。授乳時はナウゼリンが選択しやすい
大きな違い
血液脳関門
血液脳関門(BBB)を通るかどうかの違いが大きいです。
ナウゼリンはBBBを通ることは出来ませんが、プリンペランは通ります。
つまり、中枢性の吐き気に特に有効なのはプリンペランということになります。
『え?ナウゼリンも一部の中枢性の吐き気に効くよね?』
ということですが、中枢性の主な吐き気の原因となる化学受容器引金帯(CTZ)にはBBBがありません。
その為、BBBを通らないナウゼリンでも一部中枢性の吐き気に有効となります。
BBBを通過するかしないかで副作用リスクも変わってきます。
一般的にはBBBを通過するプリンペランの方がナウゼリンと比べて錐体外路症状の副作用リスクも高めです。
その為、パーキンソン病など、運動機能障害の心配がある患者にはナウゼリンが選択しやすいと言われています。
その反面、中枢性の吐き気に関してはプリンペランの方がナウゼリンよりも効果範囲が広いのが特徴です。
中枢性の吐き気の例
・精神的な要因
・血液中の化学物質
・三半規管の異常
末梢性の吐き気の例
・胃腸障害
・物理的刺激
ちなみにナウゼリンは上部消化管運動を向上させる為、『レボドパ』の吸収率を改善する働きもあります。
ですので、ナウゼリンには『レボドパ製剤投与時』にも適応がありますね😄
※ナウゼリン添付文書より
有効率89.1%はなかなかの高水準ですね✨
妊娠、授乳時
一般的には妊娠時は『プリンペラン』、授乳時は『ナウゼリン』の使い分けとなります。
妊娠時:プリンペラン
授乳時:ナウゼリン
これの使い分けは主に安全性によるもので、オーストラリア基準とMedications and Mothers’ Milkによる評価に基づきます。
妊娠中の安全性オーストラリア基準には7段階のカテゴリがあり、それぞれ【A】【B1】【B2】【B3】【C】【D】【X】とあり、【A】が最も安全とされています(【X】が最も危険)
妊娠時の場合、ナウゼリンは【B2】、プリンペランは【A】とされています。
プリンペランは最も安全な【A】評価の為に、優先して妊娠時には使用されます。
授乳中の安全性Medications and Mothers’Milk基準では、5段階のカテゴリがあり、【L1】【L2】【L3】【L4】【L5】とあり、【L1】が最も安全とされています。(【L5】が最も危険)
授乳中ではナウゼリンは【L1】、プリンペランは【L2】となっています。
ナウゼリンが最も安全とされる【L1】評価の為、一般的に授乳時にはナウゼリンを選択することが多いです。
まとめ
- ナウゼリン脳まで届かない。プリンペラン脳まで届く
- プリンペラン錐体外路リスクあるが、中枢性の吐き気の範囲広い
- ナウゼリン上部消化管機能向上によるレボドパ吸収高める
- 妊娠時はプリンペラン。授乳時はナウゼリンが選択しやすい
最後に
簡単にではありましたが、以上がナウゼリンとプリンペランの違いです。
参考になれば幸いです。
ではでは。