薬とお酒は一緒に飲まない方が良いことは、なんとなくわかると思います。
理由がわからなくても、多分やめといた方が良いだろうと察する方は多いです。
中でもカロナール(アセトアミノフェン)との組み合わせは、特に控えた方が良いと言われています。
今回はその理由をお話させていただきます。
軽くなら…
お酒を飲みたい方が薬剤師に質問すると、
薬飲んでる間でもお酒飲んで大丈夫?
ほろ酔いぐらいなら・軽くなら・嗜む程度なら…
と曖昧な表現で返答される時があると思います。
毎日飲むお薬の場合だと、控えるとずっとお酒が飲めないことになってしまいます。
本当は控えてもらった方が良いのですが、過度に禁酒するのも精神衛生上良くありません。
お酒が薬に与える影響は、
- お酒が薬代謝を邪魔して、薬効が強く出てしまう。
もしくはその逆。 - 一時的な脱水により薬効に差が生まれる。
- お酒と一緒になることで吸収率に差が出る。
などなど、要因は様々です。
薬とお酒の関係性では主に代謝について考えますが、お酒の代謝は個人差が大きく一概には言えないところがあります。
その為、薬剤師側としても、
ほろ酔いぐらいなら・軽くなら・嗜む程度なら…
というような曖昧な返事が多くなってしまいます。
ただ、そんな曖昧なお酒とお薬ですが、私でも『お酒は控えて下さい』と言うお薬があります。
それが風邪薬です。
風邪薬の中でも有効成分が『アセトアミノフェン』の風邪薬を飲んでいる期間はお酒は控えた方が良いです。
アセトアミノフェンは市販薬や医療用薬でも幅広く扱っているお薬の成分です。
アセトアミノフェン含有の風邪薬は、『医療総合サイトQLife(キューライフ)』で検索可能です。
何故駄目なのか?
それは、アセトアミノフェンが代謝される時に出来る物質に肝障害性がある為です。
アセトアミノフェンは身体で代謝されるときは、肝臓のCYP450と呼ばれる代謝酵素で代謝されます。
それにより出来た代謝物は、N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)と呼ばれます。
通常なら、グルタチオン抱合という代謝によってこの代謝物は無毒化されます。
しかし、お酒を飲んでいる条件下だと環境が変わってしまいます。
お酒はアセトアミノフェンを代謝するCYP450を誘発してしまいます。
すると、どんどんアセトアミノフェンが代謝されていき、代謝物はどんどん増えていきます。
増えた代謝物(NAPQI)をグルタチオン抱合で代謝しようとしますが、徐々にグルタチオンが足りなくなってしまいます。
結果、代謝物のN-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)がどんどん増えてしまい、肝障害が起きてしまうといったメカニズムです。
もちろん、お酒だけではなく、基になるアセトアミノフェンが大量にある事でも、代謝は促進されますので、注意が必要です。
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個人差が大きい
実際にお酒と風邪薬を一緒に飲む人もいますが、風邪の時に大量にお酒を飲んだり、アセトアミノフェンを過剰量で服用するのは稀なケースです。
ただ、お酒の代謝に関しては個人差がありますし、お酒を飲む分量に関しても個人差があります。
しかも、代謝物を無毒化する反応に必要なグルタチオンも、栄養状態や体調、年齢によって体内の合成量も変化します。
人によっては肝障害が起きる可能性がどうしてもあるので、
風邪薬とお酒は一緒に飲まないで下さい!
と、強く言っています。
ちなみにアセトアミノフェンの添付文書には、長期の大量服用時に注意するように警告文があります。
まとめ
- アセトアミノフェンの代謝物が肝障害の原因
- お酒がアセトアミノフェンの代謝を助けてしまう
- アセトアミノフェンの量が増える事により、代謝物がどんどん増える
- 代謝物の無毒化が間に合わなくなり肝障害
- アセトアミノフェン大量投与は要注意
最後に
お薬服用中のお酒は絶対的に中止する必要はないと思っています。
しかし、お酒と風邪薬の組み合わせは控えた方が良いといつも患者さんにはお話しています。
どうしてもお酒が飲みたい場合は、アセトアミノフェンが含有していない風邪薬にしておきましょう。
ではでは。