男性にとって婦人科系は取りつきにくい分野でもあります。
理由としては、男性には生理がありませんので、実感がわかず知識でしか覚えられないということもあります。
かくいう私も薬剤師ですが、男性です。
医療現場でもレディース薬の理解が乏しく、
『しっかり勉強しないとな~』
という気持ちがありました。
今回は男性でもわかるピルのお話になります。
生理周期
まずは生理周期の理解は必須です。
というか、これを理解せずにレディース薬を覚えるのは無理と言っても良いです。
薬の用法の中には、
『月経開始3日目に服用開始』
など、男性にとっては何かの呪文のような用法もあります。
女性には生理があるので、経験上の理解が可能ですが、残念ながら男性には生理がないので知識で頭に叩き込むしかありません。
逆に生理周期を覚えてしまえば、薬の理解に対するハードルはグッと下がりますので、ここは頑張って覚えましょう。
受精と排卵のメカニズム – からだと病気のしくみ図鑑 – goo辞書より
生理周期は簡単に言えば、
『赤ちゃんを迎え入れる為の身体の準備期間』
のようなものです。
その時に使われるホルモンは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)です。
正直、この2つさえ覚えてしまえばOKです。
卵胞ホルモン:卵胞を育てる。排卵させる。
黄体ホルモン:子宮内膜を厚くして着床しやすくする。妊娠の身体を維持する。
- 生理(月経)が始まる:生理出血
- 卵胞ホルモンにより卵胞が育つ
- 卵胞刺激ホルモンにより排卵
- 黄体ホルモンにより着床、妊娠しやすくなる
- 着床する→妊娠
しない→ 1へ戻る
このような生理周期のサイクルを繰り返しています。
このホルモン量を薬で増やしたり減らしたり、調節したりする事で、世の中の婦人科系の疾患に使用されています。
『え?こんな当たり前の事も知らないの??』
と思われる女性もいるかと思いますが、それほど一部の男性(特に私)にとっては生理というものは縁遠い物なのです😭
知識としてでしか理解出来ませんのでね…💦
疾患
婦人科系疾患は数多くありますが、私の経験上でよく見かけるのは以下のような疾患や症状です。
- 生理不順
- PMS(月経前症候群)
- 子宮筋腫
- 更年期障害
- 乳癌、子宮体癌
- 避妊薬
- 不妊治療
こんなところでしょうか。
その中でも生理不順やお肌トラブル、PMSでピルはよく使われますね😄
ピル
基本的にピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤になっています。
卵胞ホルモンと黄体ホルモンを一定量身体に入れることで、排卵を促すホルモンや黄体ホルモン等の分泌を抑えることで卵巣を休ませることが出来ます😄
ピル・緊急避妊(アフターピル) |広尾 峰岸産婦人科 | 東京港区・渋谷区の産婦人科・出生前診断 広尾駅徒歩1分 (minegishi-obgyn.com)より
ですので、避妊の他、生理による体調不良や周期の乱れを治す目的でピルを使用します。
と、ここで理解力皆無の私がピルに詳しい嫁さんに質問…
生理周期の乱れを治すっていっても、ピル飲んでる間は生理来ないんだから、飲み続けてたらサイクルもなくない?
ピルはあくまでもホルモン値の低下で排卵を止める形だから、ピルの休薬期間中に生理が来るのよ。
だから、生理が来なくてピルを使ってる人はピルを使って休薬期間に生理(消退出血)を起こす。
その後はピルを飲まなければ自然なサイクルになる可能性が高いから、サイクルを治そうとする場合はずっと飲み続ける訳じゃないのよ。
つまり、生理周期を治すためにピルを使う場合は、ピルを使うことで生理周期のリセットを図るって感じかな?
おおむねそんな感じだね!
低用量ピルによるニキビ治療について | 吉祥寺まいにちクリニック 内科・皮膚科・泌尿器科 (kichijojiclinic.com)より
ピルを使うケースとしては、ニキビ対策であったり、月経前症候群(PMS)のように生理中に起こる頭痛やメンタルの改善で使用ケースも多いです。
そのような場合にはピルを継続して服用します。
休薬期間があるのはなんで?
多くのピルは生理周期28日に合わせて28錠製剤となっています。
28日中21日は有効成分入り製剤を服用し、残り7日は休薬(プラセボ)となります。
※ヤーズ配合錠は28錠中24錠が有効成分入り、4錠がプラセボという休薬期間が短めの製剤となっています。
ピルを飲んでる間は子宮や卵巣が休んでいる状態になります。
ですので、この休薬期間がないとずっと子宮や卵巣を休ませてる状態が続き、逆に不調に繋がります。
休薬期間は子宮や卵巣の働きを正常に保つために必要なものとなります。
避妊でピルを使用してる場合にも生理(消退出血)の確認により、避妊成功の確認も出来ますので、休薬期間は治療する上で重要となります。
ピルの中でもヤーズフレックス配合錠は連続120日服用可能ですが、それでも4日間の休薬期間は設定されています。
低用量ピルと超低用量ピル
卵胞ホルモンの量が0.03mgより少ない薬を超低用量ピルといい、それ以上の薬を低用量ピルとしています。
低用量ピル:ルナベルLD、トリキュラー、マーベロンなど
超低用量ピル:ルナベルULD、ジェミーナ、ヤーズなど
名前の通り、超低用量ピルの方が卵胞ホルモンの含量は少ない為、低用量ピルで副作用(頭痛や吐き気)が酷い場合は超低用量ピルを使用する場合もよくあります。
ただ、個人差もあり超低用量ピルよりも低用量ピルの方が合っているということもありますので、使ってみてから…という形になりそうですね💦
ルナベルなどはLD(Low Dose)とULD(Ultra Low Dose)の記載があるので非常にわかりやすいですね✨
ピルの種類
世代 | 特徴 | 薬剤 | 〇用量ピル | 相 |
第一世代 | 黄体ホルモンのノルエチステロン含有。 国内で初めて承認製造されたピル。 生理出血量の軽減や生理痛軽減効果高め ほかの世代に比べて不正出血の頻度は高め |
ルナベルLD/ULD | 低/超低 | 一相 |
フリウェルLD/ULD (ルナベルのGE) |
低/超低 | 一相 | ||
シンフェーズ | 低 | 三相 | ||
第二世代 | 黄体ホルモンのレボノルゲストレル含有 第一世代に比べて不正出血少な目かつ 生理周期のコントロール作用向上。 男性ホルモン作用ある為にニキビ対策等 には不向き。 |
トリキュラー | 低 | 三相 |
アンジュ | 低 | 三相 | ||
ラベルフィーユ (トリキュラーのGE) |
低 | 三相 | ||
ジェミーナ | 超低 | 一相 | ||
第三世代 | 黄体ホルモンのデソゲストレル含有 黄体ホルモンの働きが強く男性ホルモン の活性を抑える効果あり。 肌荒れやニキビ対策に向いている。 |
マーベロン | 低 | 一相 |
ファボワール (マーベロンのGE) |
低 | 一相 | ||
第四世代 | 黄体ホルモンのドロスピレノン含有 ステロイドではなく利尿ホルモンを基に しているため、むくみにくい。 |
ヤーズ | 超低 | 一相 |
ヤーズフレックス | 超低 | 一相 |
※GEは後発品(ジェネリック医薬品)のことです。
ピルの中でも一相性と三相性と種類がありますが、これは製剤中に含まれているホルモン量の違いにあります。
一相性は休薬期間のプラセボを除く製剤中のホルモン量が同じ作りになっています。
対して、三相性は内服薬カレンダーに合わせて生理周期に近いホルモン量に設定されていることが特徴です。
その為、一定量の一相性はニキビに良く効き、三相性はPMSなどに良く効くとされています。
トリキュラーの画像ですが、プラセボを除きしっかり3色に分かれていてわかりやすいですね😄
ピルの重篤な副作用として、血栓症が知られています。
以下のような血栓症の副作用症状が現れた場合はすぐに医療機関へ受診をお願いします。
- 頭痛、胸痛、腹痛
- 舌のもつれ
- 息苦しさ
- 視野の狭窄
- むくらはぎの浮腫や赤み
避妊薬
ピルは排卵を起こさせないという特徴から、ピルは避妊薬としても使用されます。
低用量ピルは避妊薬として適応がありますが、超低用量ピルに関しては避妊薬としての臨床試験がないために注意が必要です。
緊急避妊薬としてはノルレボなどの黄体ホルモン製剤が知られています。
低用量ピルのトリキュラーの黄体ホルモン(レボノルゲストレル)含有量は0.05mg。
対して、緊急避妊薬であるノルレボは1.5mgです。
低用量ピルに対して30倍の黄体ホルモンが含有されていることになります🤔
黄体ホルモンは副作用として悪心症状や頭痛、消退出血などがありますので注意が必要ですね。
最後に
すごく簡単にではありましたが、レディース薬に関してはまずは生理周期をしっかり把握することで理解しやすくなります。
男性にとっては婦人科系は取りつきにくい部分もありますが、理解を深められると良いですね✨
参考になれば幸いです。
ではでは。