本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。
ここでは降圧薬のカルシウム拮抗薬の使い分けをまとめています。
私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。
先にまとめ:各薬剤の特徴
- アムロジピン:最も長時間作用型反射性交感神経刺激作用はなし。6歳以上の小児の高血圧の適応
- ニカルジピン、ニルバジピン:脳血管への特異性が高い
- シルニジピン、エホニジピン、アゼルニジピン、ベニジピン:頻脈を起こしにくい、抗タンパク尿作用(腎保護作用)あり
- ニフェジピン:妊娠20週以降に使用可能ただし20週未満には禁忌となっている。シクロスポリンとの併用で歯肉の腫れが出現しやすい
Ca拮抗薬の分類
カルシウム拮抗薬は主に3つに分類されています。
- ジヒドロピリジン系
- フェニルアルキルアミン系
- ベンゾチアゼピン系
こちらの三つに大別されます
ジヒドロピリジン系
アムロジピンやニフェジピン、シルニジピンなどが該当します。
主な適用は高血圧と狭心症になります
血管拡張作用が強力で、心収縮抑制作用や刺激伝導系の抑制作用はほとんどありません。
簡単に言えば心臓に影響することなく降圧効果を示すことができます。
ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬は、主にCYP3A4で代謝されるため、グレープフルーツジュースや他の薬剤との相互作用には特に注意が必要です。
ただ、グレープフルーツジュースに関してはジヒドロピリジン系の拮抗薬の中でも影響を受けるものと受けないものが分かれています。
その中でもアムロジピンは最も影響を受けにくいとされています。
薬剤名 | AUC変化比 |
アムロジピン | 1.08~1.16倍 |
ベニジピン | 1.59倍 |
ニフェジピン | 1.08~2.03倍 |
シルニジピン | 2.3倍 |
アゼルニジピン | 3.32倍 |
フェニルアルキルアミン系
ワソラン(ベラパミル)やべプリコール(べプリジル)などが該当します。
心臓への選択性が高く房室結節に作用します。
適用は頻脈性の不整脈となっています。
基本的に高血圧には使用しない為、注意が必要です。
ベンゾチアゼピン系
ヘルベッサー(ジルチアゼム)が該当します。
末梢血管拡張作用はジヒドロピリジン系と比較すると弱いです。
しかし、心臓にも作用し房室結節伝導を強く抑制し冠血流を増加させることができます。
主な適用は狭心症と本態性高血圧症(軽症から中等症)です。
カルシウム拮抗薬の中で不整脈として使えるのはフェニルアルキルアミン系となっています。
逆に高血圧症で使用可能なのはジヒドロピリジン系とベンゾチアゼピン系になりますので 注意が必要です。
高血圧症で使われるのはジヒドロピリジン系
高血圧の第一選択
カルシウム拮抗薬の中でも高血圧症として汎用されているのは、ジヒドロピリジン系です。
その中でもアムロジピンなどの長時間作用型が主流となっていて、単剤のみならず、ARB、利尿剤、スタチンとの配合剤も発売されています。
ちなみにジヒドロピリジン系で半減期が最も長いのはアムロジピンです。(35.4時間) 6歳以上の小児の高血圧の適応もあります。
『高血圧症治療ガイドライン2019』においてはカルシウム拮抗薬は ACE阻害薬、ARB、利尿剤とともに積極的な適用がない場合の高血圧に対しては第一選択に位置付けられています。
長時間作用型のジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬は糖、脂質、電解質代謝にも影響せず悪性腫瘍や心筋梗塞発症の増加がないことも確認されています。
特にジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬が推奨される病態としては、脳血管障害慢性期、左室肥大、狭心症などが挙げられています。
狭心症にも推奨
『急性冠症候群ガイドライン2018年』では、冠攣縮性狭心症を合併又は冠攣縮が原因で発症したことが明らかな患者に対しても使用されます。
虚血発作予防を目的として長時間作用型カルシウム拮抗薬を投与することは推奨されています。
このガイドラインではアムロジピン10mgは、エナラプリル20mgとプラセボと比較して有意に心血管イベントの発生を抑制することが示されました。
現在はニフェジピンCRが主流
短時間型のニフェジピンは急激な降圧により反射性頻脈脳梗塞などを誘発するため、現在は推奨されていません。
なので現在は 徐放性のニフェジピンCR錠が多く利用されています。
効果も副作用もニフェジピンが上
アムロジピンは血中半減期及び作用時間が長く効果発現が緩徐です。
ニフェジピンとアムロジピンの降圧効果の比較では、ニフェジピンの降圧効果が僅かに強い反面、副作用も多かったと報告があります。
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チャネルのサブタイプ
カルシウムチャンネルのサブタイプは分布により名前が異なり、 L 型・ N 型 ・T 型があります。
- L型:心筋や血管平滑筋
- N型:神経終末
- T型:腎臓
一般的に血圧に大きく関わるのは血管平滑筋にあるL型になります。
サブタイプごとに特徴的な作用を有しています。
カルシウムチャネルを拮抗することによる副作用は、強力な血管拡張に伴う低血圧、動悸、頭痛、ほてり、顔面紅潮、浮腫の他に歯肉の腫れや便秘などが知られています
- L型のみに拮抗:ニフェジピンやアムロジピン
- L型とN型に拮抗:シルニジピン
- L型とT型に拮抗:アゼルニジピン
- L型・N型・T型に拮抗:ベニジピン
N型は交感神経終末に存在しノルアドレナリンを分泌、T型は心臓の洞結節、房室結節などに存在しています。
そのため N 型 T 型に拮抗すると L 型に見られる心拍数の増加や血漿エピネフリンの増加は認められないとされています。
腎臓には細動脈ごとにサブタイプが異なる
腎臓は糸球体細動脈ごとにサブタイプが異なるので、少し複雑です。
- 輸入細動脈には L 型・T 型・N 型
- 輸出細動脈には T 型・N 型
このような分布となっていて、細動脈の収縮にかかわっているとされています。
そのため、T型やN型に拮抗するジヒドロピリジン系は腎保護、尿蛋白減少作用を目的に処方されることが多いです。
L型・N型に拮抗するシルニジピンは、RA系阻害薬に追加投与した時の蛋白尿の減少作用がアムロジピンに比較して優れている可能性が示唆されています。
ただし、糖尿病患者における尿蛋白減少作用は有意ではなく長期的な予後については不明です。
ぶっちゃけ、L型しか拮抗しない薬(アムロジピンやニフェジピン)以外は腎保護作用の目的もあると思って良いでしょう。
妊婦
妊婦への投与に関しては、降圧治療ガイドライン上では妊娠周期により第一選択が異なります。
- 妊娠20週未満:メチルドパ、ラベタロールが推奨
- 妊娠20週以降:ニフェジピンが全ての剤形で有益性投与
- 妊娠中の全期間:ニカルジピンの注射剤
- 高圧が不十分な場合 上記の3台に加えてヒドララジンを加えた4体を第一選択とし2から3剤を併用することとなります
利尿剤に関しては、循環血流量が低下するため新たには処方はすべきではないとされています。
まとめ:各薬剤の特徴
- アムロジピン:最も長時間作用型反射性交感神経刺激作用はなし。6歳以上の小児の高血圧の適応
- ニカルジピン、ニルバジピン:脳血管への特異性が高い
- シルニジピン、エホニジピン、アゼルニジピン、ベニジピン:頻脈を起こしにくい、抗タンパク尿作用(腎保護作用)あり
- ニフェジピン:妊娠20週以降に使用可能ただし20週未満には禁忌となっている。シクロスポリンとの併用で歯肉の腫れが出現しやすい
最後に
大まかな使い分けは以上となります。
医療業務の参考になれば幸いです。
ではでは。
参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)