【泌尿器】排尿障害治療薬の使い分け α₁遮断薬、抗コリン薬、β₃刺激薬

薬局業務
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここでは排尿障害治療薬のα₁遮断薬・抗コリン薬・β₃刺激薬の使い分けをまとめています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

先にまとめ:大まかな使い分け

  • α₁遮断薬:『尿の通りを良くする』
  • 抗コリン薬:『膀胱の緊張を和らげる』
  • β₃刺激薬:『膀胱の容量を増やす』
  • 薬剤選択は性別、前立腺肥大の有無等で選択

 

α₁遮断薬

  • シロドシンが優秀、ただ射精障害等に注意することと肝・腎機能低下時には用量調節が必要
  • 肝・腎機能低下時にはタムスロシンとナフトピジルが使いやすい
  • 相互作用はタムスロシンがもっとも少ない
  • 全薬剤で射精障害や術中虹彩緊張低下症に注意

 

抗コリン薬

  • 高用量のソリフェナシンはもっとも成績が良い
  • イミダフェナシンは夜間頻尿のエビデンスがもっともある
  • プロピベリンが最も忍容性が高く相互作用も少ない
  • 神経性の適応はプロピベリンのみ

 

β₃刺激薬

  • 有効性は抗コリン薬と同等とされている
  • ミラベグロンには生殖器系の警告文があるが、ビベグロンはない。
  • ビベグロンは肝・腎機能低下時の用量調節が不要で相互作用も少ない

 

薬の選択

排尿障害治療薬は大きく3種類に分けることができます。

  • α₁遮断薬
  • 抗コリン薬
  • β₃刺激薬

これらのお薬が排尿障害には使用されています。

 

薬の選択については、性別や前立腺肥大の有無で変わってきます。

 

男性の場合は前立腺肥大の有無を確認します。

→前立腺肥大があればα₁遮断薬を選択。
→前立腺肥大がなければ抗コリン薬やβ₃刺激薬を選択。

女性の場合は前立腺はありませんので、抗コリン薬かβ₃刺激薬を選択することになります。

 

薬効のイメージとしては、

α₁遮断薬:『尿の通りを良くする』
抗コリン薬:『膀胱の緊張を和らげる』
β₃刺激薬:『膀胱の容量を増やす』

こんなイメージです。

 

むかたけ
むかたけ

これらの文言は服薬指導でも良く使ってます。

 

α₁遮断薬

α₁遮断薬は主に3つが使用されています。

 

  • タムスロシン(ハルナール)
  • ナフトピジル(フリバス)
  • シロドシン(ユリーフ)

前立腺に存在するα₁受容体を遮断することで、尿道の内圧を下げて尿の通りを良くします

 

α₁受容体にはサブタイプがあります。

α₁A、α₁B、α₁Dの3つが有名ですが、α₁Bは血管に多く、α₁A、α₁Dは膀胱や前立腺に多いです。

α₁A:前立腺
α₁B:血管

α₁D:前立腺や膀胱

 

上記3つの薬剤は主にα₁Aとα₁Dに作用します。

心血管への副作用なども少ないことから、現在ではタムスロシン、ナフトピジル、シロドシンが主に使用されています。

 

α₁遮断薬 タムスロシン ナフトピジル シロドシン
受容体選択性 α₁全体
(主にα₁A、α₁D)
主にα₁D 主にα₁A
1日回数 1回 1回 2回
排泄経路 尿中・糞中 糞中 尿中・糞中
肝・腎機能低下時の減量 不要 不要 必要
海外承認 あり あり あり

 

有効性や副作用

基本的にはどの薬剤も同等とされていますが、シロドシンとナフトピジルを比較した試験でシロドシンの方が有意な改善が認められたこともあります。

しかし、シロドシンは他の2剤と比較して射精障害の頻度が有意に高かった報告もあるので注意が必要です。

 

α₁遮断薬の有名な副作用は射精障害だけではなく、術中虹彩緊張低下症も有名です。

眼関連手術前には眼科医にα₁遮断薬を服用している旨は伝えておいた方が良いでしょう。

 

相互作用

受容体選択性なので心血管系の副作用が少ないですが、ゼロではなく人によっては降圧作用が出るときもあります。

その為、PDE-5阻害薬とは併用注意となっています。

 

その他の薬物相互作用では、シロドシンは3A4代謝なので抗真菌薬との併用には注意が必要です。

3剤間ではタムスロシンが最も相互作用が少ないと言われています。

肝・腎機能低下時には、シロドシンのみが用量調節が必要で、タムスロシンとナフトピジルは不要とされています。

 

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抗コリン薬

膀胱にあるムスカリンM₃受容体を抑えることで膀胱の緊張を緩和するお薬です。

 

  • ソリフェナシン(ベシケア)
  • イミダフェナシン(ウリトス、ステーブラ)
  • プロピベリン(バップフォー)

上記3つの使用が多い印象です。

 

イミダフェナシンに関しては、M₁拮抗作用でも抗コリン作用を発揮すると考えられています。

M₁は神経終末にあり、アセチルコリンの放出量を調整する役割があります。

 

抗コリン薬 ソリフェナシン イミダフェナシン プロピベリン
効能・効果 過活動膀胱における尿意切迫感、
頻尿および切迫性尿失禁
  下記疾患または状態における頻尿、尿失禁
神経因性膀胱、神経性頻尿、不安定膀胱、膀胱刺激状態(慢性膀胱炎、慢性前立腺炎)
1日回数 1回 2回 1~2回
排泄経路 尿中・糞中
肝・腎機能低下時の減量 必要 必要 不要
海外承認 あり なし あり

 

基本的には有効性は薬剤間でもβ₃刺激薬とも同等とされていますが、試験結果などで違いもあります。

 

ミラベグロン(β₃刺激薬)と比較した試験では、ソリフェナシンの10mgで他と比べて有意に高い改善効果が認められています。

イミダフェナシンは、過活動膀胱の夜間頻尿の回数低下により睡眠の質の向上したことで、夜間頻尿ではもっともエビデンスがある薬剤です。

プロピベリンに関しては、他2剤にはない神経性の頻尿にも使えるのと、肝・腎機能低下時に用量調節が不要なことが特徴です。

副作用や相互作用に関しても、プロピベリンが最も忍容性が高く、相互作用も少ないとされています。

 

β₃刺激薬

抗コリン薬に変わるお薬として最近発売されたのがβ₃刺激薬です。

膀胱のβ₃受容体を刺激することで、膀胱を弛緩させ尿の蓄尿量を正常に戻すお薬です。

 

  • ミラベグロン(ベタニス)
  • ベオーバ(ビベグロン)

現在は上記2つのみの発売となっており、どちらも臨床で活躍しています。

 

β₃刺激薬 ミラベグロン ビベグロン
効能・効果 過活動膀胱における尿意切迫感、
頻尿および切迫性尿失禁
1日回数 1回
警告 あり なし
併用禁忌 フレカイニド
プロパフェノン
なし
排泄経路 尿中・糞中
肝・腎機能低下時の減量 必要 不要
海外承認 あり なし

 

β₃刺激薬は、抗コリン薬とほぼ同等の有効性とされていますが、抗コリン作用による副作用が少ないことから安全性には優れているとされています。

 

ミラベグロンとビベグロンも同等の有効性とされています。

 

ただ、付き合いのある医師達からは

医師
医師

『ビベグロンの方が良く効く』

 

という声は良く聞きます。

 

むかたけ
むかたけ

あくまでも私が話した医師達の体験談ですが…。

 

副作用ではありませんが、ミラベグロンでは動物実験では生殖器系に影響が出た報告があります。

 

その為、

『生殖可能な年齢の患者への本剤の投与はできる限りさけること…』

と警告文の記載があります。

ちなみにビベグロンには記載はありません。

ビベグロンの方が肝・腎機能低下時の用量調節が不要な点や相互作用の少なさからも使い勝手は良い印象です。

 

まとめ:大まかな使い分け

  • α₁遮断薬:『尿の通りを良くする』
  • 抗コリン薬:『膀胱の緊張を和らげる』
  • β₃刺激薬:『膀胱の容量を増やす』
  • 薬剤選択は性別、前立腺肥大の有無等で選択

 

α₁遮断薬

  • シロドシンが優秀、ただ射精障害等に注意することと肝・腎機能低下時には用量調節が必要
  • 肝・腎機能低下時にはタムスロシンとナフトピジルが使いやすい
  • 相互作用はタムスロシンがもっとも少ない
  • 全薬剤で射精障害や術中虹彩緊張低下症に注意

 

抗コリン薬

  • 高用量のソリフェナシンはもっとも成績が良い
  • イミダフェナシンは夜間頻尿のエビデンスがもっともある
  • プロピベリンが最も忍容性が高く相互作用も少ない
  • 神経性の適応はプロピベリンのみ

 

β₃刺激薬

  • 有効性は抗コリン薬と同等とされている
  • ミラベグロンには生殖器系の警告文があるが、ビベグロンはない。
  • ビベグロンは肝・腎機能低下時の用量調節が不要で相互作用も少ない

 

最後に

大まかな使い分けは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)

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