免疫反応は身体を外敵から守るためには必要不可欠なものです。
免疫は血液成分の白血球を介して行われています。
以前血液がどのように作られるかをお話しました。
顆粒球やT細胞、B細胞などのリンパ球がどのような流れでや働きで免疫反応を起こすのかのお話です。
免疫細胞が働くおおまかな流れをまず知りたい方はこちらへどうぞ。
白血球の働き
白血球は単球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球の総称です。
白血球の働きは何といっても免疫です。
身体に入ってきたウイルスや細菌を排除する役割があります。
白血球は骨髄球系とリンパ球系に分けることが出来ます。
おうち時間で低下する? 免疫とゴルフのはなし|topics|ゴルフトピック|GDO (golfdigest.co.jp)より
骨髄球系の白血球
骨髄球系の白血球は単球、好中球、好酸球、好塩基球があります。
単球
身体の中にも入ってきた異物を細胞に取り込み食べます。
同時に、侵入者が入ってきたこと知らせる警報を出します。
血液中から組織内に入り、約8時間かけてマクロファージになります。
細胞の中には消化酵素などが詰まっていて、外敵を貪食し殺菌を行います。
組織の異物を処理する細胞としても働きます。
好中球
白血球の50%を占め、血液中にもっとも多くみられる白血球です。
感染に対して最初に防御を行う免疫細胞の1つです。
単球と同様に、身体に侵入した細菌などを細胞に取り込み(貪食作用)、細胞内にある消化酵素で殺菌します。
必要があれば血液中から組織へと移行し、周囲の組織中に繊維を作る物質を放出します。
こういった繊維は細菌を捕らえ、細菌が体内に広がるのを防ぐとともに、破壊しやすくしてくれます。
炎症や感染症を引き起こしているときに増加する細胞です。
好酸球
取り込むには大きすぎる外敵も標的にします。
アレルギー反応に関係する細胞で、主に寄生虫やアレルギー疾患などで増加します。
好酸球が外敵を見つけると、酵素などを使って標的の細胞に穴をあけます。
細菌への活性は単球や好中球ほど高くなく、寄生虫などの大きな外敵に取り付いて動けなくし、殺傷を助ける役割が強いです。
好塩基球
外敵を取り込むことはしません。
アレルギー反応に関係する細胞で、細胞内の顆粒(ヒスタミンやロイコトリエン、ヘパリン)を放出し、即時型のアレルギーを引き起こします。
好塩基球の表面にある免疫グロブリンE(IgE)に抗原が結合すると、顆粒中からヒスタミンなどが放出されて即時型のアレルギー反応を引き起こします。
損傷した組織の血流量を増やして、腫れや炎症を引き起こします。
好中球と好酸球を問題部位に引き寄せる物質も作ります。
その食べた部品を使って、侵入者の情報をリンパ球などに知らせる役割もあります。
好塩基球からの情報を得たリンパ球は、ウイルスに感染した細胞を攻撃します。
リンパ球系の白血球
リンパ球は3つに分類されます。
NK(ナチュラルキラー)細胞、T細胞、B細胞です。
NK(ナチュラルキラー)細胞
NK細胞は形成された瞬間に外敵を殺傷する能力を備えているので『生まれながらの殺し屋』ということで名付けられました。
感染した細胞やがん細胞に取り付いて酵素などで細胞に穴をあけて壊します。
ウイルス感染などの最初の防衛役として重要な細胞となります。
T細胞
T細胞は胸腺呼ばれる場所で成熟し、自己と非自己を認識している物だけが、胸腺から放出されて血流やリンパ系を循環します。
抗原・外敵(非自己)の認識はほぼ無限に行うことが出来ます。
感染した細胞(非自己)に出会うと活性化されて、他にも同じような細胞がいないか探し始めます。
通常であればT細胞が直接非自己と出会うこともあれば他の免疫細胞の警報を聞いて活性化することもあり、活性化するには様々なパターンがあります。
活性化するとT細胞はどんどん増え、同時に役割を持ったT細胞に変わっていきます。
キラー(細胞傷害性)T細胞
非自己の細胞に酵素(パーフォリン)などを使って穴をあけて殺傷します。
ヘルパーT細胞
他の免疫細胞を助けます。
B細胞が提示してくれた抗原に対する抗体の産生を助けたり、キラーT細胞を活性化したり、マクロファージの貪食を手助けしたりもします。
サプレッサー(制御性)T細胞
免疫反応の終結を助ける物質を作り出したり、時には身体に有害な反応が起こるのを防いでくれます。
免疫細胞が働きすぎてオーバーヒートしないようにする為の細胞ですね。
T細胞が最初に抗原に出会うと、ほとんどが本来の機能を果たしますが、一部は抗原を記憶する役割のメモリー細胞となって、抗原を記憶しておき、再び遭遇したときにより活発に反応します。
B細胞
B細胞は抗原に結合出来る受容体と呼ばれる特別な部位を持っています。
B細胞もT細胞と同様に、抗原の記憶、認識はほぼ無限に行えます。
主な目的は抗体を作ることです。
B細胞は抗体を放出して、その抗体は抗原にくっついて、抗原を攻撃したり、無力化することが出来ます。
細胞ごと攻撃するT細胞に対して、B細胞は抗体を作り、ウイルスそのものを不活性化させます。
抗体の説明は後述します。
さらにB細胞はT細胞に抗原を提示して、T細胞を活性化します。
T細胞は活性化すると外敵を探し始めるので、連鎖的に反応が起きるということですね。
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一次免疫反応
抗原が受容体に結合すると、B細胞がメモリー細胞か形質細胞になります。
形質細胞は抗原に刺激されると抗体を作り出します。
最初に抗原と遭遇してから、それぞれの抗原に特異的な抗体が十分作られるまでに数日以上はかかります。
このように一次免疫反応はゆっくりと進みます。
二次免疫反応
一次免疫反応以降は、B細胞がいつ同じ抗原に遭遇しても、メモリー細胞が素早く反応して、増殖して、形質細胞に変化して抗体を作ります。
この反応は1次免疫反応よりも遥かに迅速で、非常に効率的です。
ワクチンによる予防接種は、この一次免疫反応と二次免疫反応を利用した方法なのですね。
樹状細胞
身体中に存在する細胞で、抗原提示の為の細胞です。
抗原を取り込んで分解、提示することで、ヘルパーT細胞が抗原を認識出来るようにします。
T細胞とB細胞は抗原を提示されると活性化します。
サイトカイン
免疫細胞同士の情報伝達物質のことです。
活性化をさせるものもあれば、活性を抑えて免疫反応を終わらせるサイトカインもあります。
サイトカインのうち、インターフェロンと呼ばれる物はウイルスの増殖を抑えます。
アレルギー発症の本当の仕組み 免疫反応の“はじまり”を解き明かす | アトピーを知ろう! あとぴナビJP (atopinavi.jp)より
抗体
免疫反応とは?免疫が働く仕組みと異常な免疫反応の代表例 | やさしいLPS (macrophi.co.jp)より
抗体は免疫グロブリンとも呼ばれています。
IgGなどと表記されますが、Ig(immuno globulin)の略で、最後のアルファベットは抗体毎の名前です。
・細胞が外敵を取り込むのを助ける
・外敵の不活性化
・補体と協力して直接攻撃する
・付着して細胞への侵入を防ぐ
・補体系の活性化
・NK細胞などを助ける
抗体にはジグソーパズルのピースのように抗原と結合出来るような形となっています。
抗原毎に形が変わる部分を可変領域、形が変わらない部分を定常領域といいます。
※全く同じ抗原ではなくても、形が非常に似ていれば結合することもあります。
抗体の構造とは?|バイオのはなし|中外製薬 (chugai-pharm.co.jp)より
可変領域は抗原毎に決まった形をしていますが、定常領域を切り替えることは可能です。
抗体は5種類ありますが、定常領域の違いで分類されています。
免疫グロブリンM(IgM)
組織ではなく血液中に存在します。
細菌などの抗原と初めて遭遇したときに作られる抗体です。(一次免疫反応)
Mが抗原につくと、補体系が活性化されます。
それにより他の免疫細胞が活性化します。
免疫グロブリンG(IgG)
人の身体の中では最も多い抗体です。
過去に出会ったことがある抗原に遭遇したときに作られます。(二次免疫反応)
一次免疫反応に比べて多く、そして迅速に産生されます。
薬王堂|新型コロナウイルス抗体検査 (cellspectyakuodo.com)より
細菌やウイルス、真菌や有毒な物質から体を守ります。
血液中のみならず組織にも存在します。
母体から胎盤を通じて胎児に移行する唯一の抗体です。
新生児が自分で抗体を作り出すまでは、母体由来のIgGが守ってくれます。
免疫グロブリン製剤は主にIgGで構成されていて、病気の治療で最も使われる事が多い抗体です。
免疫グロブリンA(IgA)
鼻や眼、肺、消化管などの粘膜で覆われた体表面から、異物の侵入を防ぎます。
血液中や粘膜からの分泌物(涙や唾液)や初乳(出産後、母乳が作られるまでの数日間に分泌される)の中に含まれています。
その為、母親が子供に授乳を行うこととは、子供の免疫力を向上させることにも繋がります。
免疫グロブリンE(IgE)
即時型のアレルギーの引き金になります。
血液中の白血球(好塩基球)や組織の肥満細胞と結合すると、これらの細胞がヒスタミンなどを放出して炎症が引き起こされたり周囲組織が損傷したりします。
免疫グロブリンD(IgD)
未成熟のB細胞の表面に存在していることが確認されています。
B細胞の成長を助ける役割も確認されています。
血液中にも少量あるようですが、詳しい役割などは現在のところ不明です。
補体
補体は免疫反応を補助するたんぱく質の総称です。
抗体と抗原が結合しただけでは抗原を死滅させることは難しいです。
そこで、補体が抗原と抗体の複合体を形成することで、他の免疫細胞に発見されやすくなったり、複合体の反応で、抗原に穴をあけて排除出来るという働きがあります。
抗体がなくても抗原に直接反応するケースも認められていて、補体系と呼ばれるようになっています。
『抗体の働きを補完する』という意味で補体と名付けられました。
血清中の補体は9つのたんぱく質から出来ていて、抗体を介する経路はC1~9と表記されます。
抗体を介さない経路ではB因子やD因子などもあります。
免疫反応とは?免疫が働く仕組みと異常な免疫反応の代表例 | やさしいLPS (macrophi.co.jp)より
免疫細胞の流れ
1つ1つの細胞の役割の説明だけだとわかりづらいかと思いますので、外敵が入ってきたときに身体の免疫細胞がどのような流れで作用するのかを見ていきたいと思います。
抗体は補体と協力し、外敵に対処します。
その外敵や武器情報などはメモリー細胞に記憶される事となります。
キラーT細胞は外敵の情報がわかり次第殲滅に向かいます。
これらの免疫反応の制御にはサプレッサーT細胞が関わっています。
抗体などを利用した免疫は、特定の外敵に対して獲得した免疫の為、獲得免疫と呼ばれています。
実際には各免疫細胞同士が複雑に絡み合って反応しています。
ワクチン
免疫反応の外敵という部分をインフルエンザウイルスなどに置き換えると、ワクチンなどの予防接種のメカニズムとなります。
ワクチンはウイルスを弱毒・不活化しており、ウイルスの形だけを認識させるための物です。
その為、ワクチンで身体のだるさや熱が出ることは身体の免疫が反応してくれている証でもあります。
酷くならなければ焦らずに安静にしましょう。
弱毒・不活化したウイルス(一部)を投与→ 免疫細胞が抗体を産生→ 実際にウイルスが侵入してきた際に、迅速かつ強力な免疫反応を引き起こす。
ウイルスの型が違えば、今までの抗体は使えません。その為、変異型等が現れた場合は、抗体を新たに作るところからやり直しになります。
血清・免疫グロブリン製剤
血清療法は別の動物(製剤によってはヒトでも)に抗体を作らせて、その抗体を投与することで外敵への対処を行うものです。
自分が作る抗体まで時間がかかるため、別から抗体を入れて補充して、外部と内部の抗体で対処します。
ヘビやボツリヌスの毒素など、毒性や致死性が高いものや緊急性が高い場合や難病などには免疫グロブリン製剤としても使用されています。
最後に
いかがでしたでしょうか?
免疫がなければ人というのは簡単に目に見えない外敵に倒されてしまいます。
身体の中で様々な免疫機能が働いてくれますが、さすがに万能ではありません。
手洗いうがいマスクをして、外敵を侵入させず、規則正しい生活を保って免疫を維持しましょうね。
ではでは。
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