2021年12月24日に新型コロナに対する飲み薬が承認されました。
重症化を防ぐ飲み薬としては初めてです。
このモルヌピラビルとはどんなお薬なのでしょうか?
簡単に説明します。
2つ目の飲み薬については、こちらをご参考下さい
成分名と製品名
モルヌピラビルやラゲブリオと名前がいくつも出てきて混乱するかと思います。
成分名:モルヌピラビル
製品名:ラゲブリオカプセル200mg
となっています。
薬の有効成分がモルヌピラビル。
そのモルヌピラビルを使い、添加物等を混ぜて成型し、製剤にしたものがラゲブリオカプセルという形です。
ちなみにラゲブリオカプセル200mgの『200mg』は、『ラゲブリオカプセルの中に、モルヌピラビルという有効成分が200mg含まれています』という意味になります。
名前の由来
ちなみに『ラゲブリオ』という名前の由来は開示されておりません。
メーカーさん(MSD株式会社)のお話では、名前の由来を知ることで薬の効果効能への影響が出るのを防ぐ為とのことです。
その為、現在は名前の由来に関しては開示していないとのことです。
お薬の名前の由来を知ることで過剰に効果を期待してしまい、効果が変動してしまうこともありますしね。
効果
新型コロナウイルスによる重症化や死亡リスクを抑える効果が期待出来ます。
製薬会社のメルク社によれば、重症化や死亡リスクを約30%抑える効果があるようです。
10月の臨床試験の途中段階では、
『約50%抑える効果がありそうです』
と言われていましたが、臨床試験の結果では30%まで下がってしまった結果ですね。
ちなみにイギリスやアメリカでは既に承認済みですが、フランスでは発注を見送るなど、各国で対応が分かれているようです。
臨床試験で期待以上の効果が出なかったことが背景にあるようですね。
作用メカニズム
ラゲブリオカプセル 添付文書 (msdconnect.jp)より
『RNAポリメラーゼによって取り込まれ、RNA合成のエラーを起きやすくさせることでウイルスの増殖を抑えます。』
何を言ってるのかわからん
簡単に言えば、
『ウイルスがこれ以上身体の中で増えないようにしてくれます』
ウイルスが身体の中で増える為には、そのウイルス(RNA)のコピーを作り出す必要があります。
そのコピーを作り出すのに必要なものの1つが、RNAポリメラーゼと呼ばれる酵素です。
ウイルスがコピーを作り出す際にはこのRNAポリメラーゼが必要となりますが、この特性を利用して、モルヌピラビルはウイルス情報に入り込みます。
DNAやRNAなどの遺伝子情報は、塩基を含む物質が鎖のように繋がって出来てきます。
この塩基と呼ばれる物質自体は数種類しかありません。
しかし、この塩基の順番や組み合わせによって後に生成される物質が決まります。
つまり、この塩基の順番や組み合わせが遺伝子情報となります。
鎖のように連なった塩基の情報を、RNAポリメラーゼは写し取っていきます。
モルヌピラビルは転写されている塩基鎖に作用し、本来の塩基とは別の塩基に変化(誤認)させたりします。
結果、塩基配列が元の情報とは違う為、コピーがしっかりと行われずエラーとして処理されてしまいます。
工場のラインのように、一ヶ所に異常があると上手く進まなくなる感じですね。
このようにモルヌピラビルは、ウイルスのコピーの成功確率を下げてくれるお薬ということになります。
軽・中等症に適応
重症例の患者に対する効果は確立されていません。
あくまでも、
『これからのウイルスの増殖を抑える効果』
となります。
その為、感染してから一定時間が経過した状態だと、ウイルスが増えすぎていて効果が薄くなることが予想されます。
この考え方はインフルエンザのお薬と同じです。
インフルエンザの飲み薬も感染後一定時間内に薬を使用する事とされています。
その為、陽性診断後に速やかにお薬を服用する必要があります。
メルク社のデータでは、
『発症後5日以内の服用で、約30%の抑制』
と言われています。
飲み方
飲み方:1日2回 5日間服用
通常の使い方では、18歳以上には1回4カプセル(800mg)の用量となります。
発症後5日以内に服用しないと、十分な効果期待できない可能性があります。
現段階では、18歳未満に対する臨床試験は実施していないようです。
食事の影響はなし
飲み方に制限等はない為、お水以外の服用でも問題はなさそうです。
しかしデータが少ないお薬なので、心配であればお水での服用が良いでしょう。
食事の影響は受けない為、空腹時での服用でもOKです。
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副作用
現在のところは重大な副作用は起きてはいなさそうです。
1%~5%未満の確率で報告されている下痢や悪心、めまいや頭痛等が多いようです。
副作用の報告は少なめのようですね。
妊婦には投与しない
動物実験では、胎児毒性が報告されているようですので、妊婦又はその可能性がある方には投与出来ません。
授乳婦に対してはデータが少なく、何とも言えないようです。
その為、有益性が大きければ、慎重に投与する形となっています。
注意点
2022年9月16日よりラゲブリオは国購入品から一般流通へと切り替わりました。(薬価2,357.8円)
それに伴いラゲブリオ登録センターも閉鎖となります。
以下記事は2022年9月15日以前の内容としてご参考下さい。
医療機関に行っても貰えない
こちらのお薬の流通については、国(厚生労働省)が管理しています。
その為、通常のお薬のように医療機関に行けば貰えるお薬ではありません。
感染拡大を防ぐために、陽性者が自宅で受けとります。
その為、厚生労働省が取り扱いが可能な医療機関をリスト化して管理しています。
『病院や薬局に行けば貰える!』
というわけではありませんので、ご注意下さい。
モルヌピラビルの医療機関及び薬局への配分について (mhlw.go.jp)
登録している医療機関にしか扱えない
ラゲブリオ登録センターに登録している医療機関にしか扱うことが出来ません。
ログインページ-ラゲブリオ®登録センター (force.com)
このラゲブリオ登録センターへの登録も、新型コロナウイルス関連に対応可能な医療機関として各都道府県に登録された医療機関のみが登録可能となっています。
その為、全ての医療機関で登録が可能となるわけではないので注意が必要です。
新型コロナウイルス関連に対応可能な医療機関の医師は、ラゲブリオを備蓄できる薬局に投薬を依頼する必要がある為、登録医療機関のリストを持つ必要があります。
現在はそのリストは開示されていない為、国や登録医師以外は、対応医療機関・ラゲブリオ登録センターへ登録済み医療機関を調べることは難しいというようになっています。
今後は開示される可能性もありますので、今後の情報を待つことにしましょう。
2022年2月時点ではラゲブリオ登録センターに登録・ログインすればラゲブリオを扱える医療機関を調べることが出来るとのことです。
ログインページ-ラゲブリオ®登録センター (force.com)
卸(問屋)も国が指定
お薬の流通は国が管理しているので、当然卸に関しても国が指定しています。
基本的には都道府県単位で担当卸が振り分けられています。
スズケンや東邦薬品に振り分けられている現状のようです。
備蓄は必要最小限に
ラゲブリオの所有権は国(厚生労働省)となっており、薬価は0円に設定されています。
各薬局の在庫数量は必要最小限にするように言われています。
しかし、具体的な数量についての指定はありません。
おおよそですが、薬局につき2~3名分を越えない量で備蓄していることが多いようです。
国に所有権がある為、現在どれほどの数量が出回っているかはメーカーさんでも把握出来ていないそうです。
2022年4月19日12時(正午)よりラゲブリオの在庫上限が緩和されました。
供給を担う薬局の在庫数上限10人分 → 50人分へ変更
ウイルスを消滅させるわけではない
『あくまでもウイルスの増殖を防ぐお薬』
となります。
その為、服用した後も既存のウイルスは残っています。
お薬服用後も、ウイルスが体外に排泄され切るまでは油断しないようにしましょう。
発症後7~10日は感染のリスクがあるとされていますので、服用後も感染拡大には注意しましょう。
まとめ
- あくまでウイルスの増殖を抑えるお薬
- 軽・中等度が対象
- 18歳以上に1日2回 1回4カプセル(800mg)を5日間服用
- 発症後5日以内に服用
- 副作用の報告は少なめ
- 妊婦への投与は不可
- 流通は国が管理
- 取り扱う医療機関も登録等が必要になる
- 取り扱い医療機関を個人的に探すことは現状難しい
最後に
遂に経口薬が承認されました。
しかし、重症化を抑える薬であって、ウイルスを消滅させる薬ではありません。
やはり基本は感染予防で、『感染しない・させない』が一番だと思います。
手洗いうがいマスクは続けるようにしましょうね。
ではでは。
参考文献
新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
厚生労働省 モヌラピラビル承認 プレスリリース
ラゲブリオカプセル 添付文書 (msdconnect.jp)
抗ウイルス剤 ラゲブリオ®|MSD Connect
LAGEVRIO_ A4_2p_A_211223 (msdconnect.jp)
モルヌピラビルの医療機関及び薬局への配分について (mhlw.go.jp)