ステロイドと耳にすると、ドーピングや副作用などの負のイメージが強いと思います。
アトピー性皮膚炎持ちの人は、既に塗り薬の使用でご存知の人も多いかもしれませんね。
今回はステロイドの概要、注意点だけではなく、ドーピングなどでも有名なアナボリックステロイドについても記事にしています。
ステロイドとは?
身体の中で副腎と呼ばれる臓器から作られるホルモンです。
コレステロールを原材料として作られます。
とても強力で、その作用は細胞1つ1つの遺伝子レベルにまで作用します。
ステロイドは大きくわけて3種類あります。
鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)
身体の中のミネラル分の調節を行うホルモンです。
鉱質コルチコイドではアルドステロンが最も有名で、腎臓でのミネラル分の調整をとるのに役立ちます。
多く作用し過ぎると、Na過剰に繋がり、高血圧などの副作用に繋がります
糖質コルチコイド(グルココルチコイド)
コルチゾールが最も有名で人体の糖質コルチコイドの9割を占めます。
消炎、鎮痛作用や免疫抑制作用がとても強力です。
一般的に炎症などの治療に使用される大半はこちらのステロイドに分類されます。
構造が鉱質コルチコイドに似ているため、鉱質コルチコイドの作用部位にも反応してしまう事があります。
その為、腎臓でのミネラル分の調整に影響し、血圧上昇や浮腫、低カリウム血症などのミネラル分に関わる副作用が時折出てしまうのが難点です。
ストレス時に分泌が多くなることから、別名ストレスホルモンとも呼ばれます。
作用のメカニズム
人の身体は細胞が何万、何億、何兆個と集まって出来ています。
その1つ1つの細胞の膜には脂肪酸と呼ばれるものが多量に含まれる形で構成されています。
外傷やアトピーなどで細胞が傷ついてしまうと、細胞膜の脂肪酸を材料にして、数々の炎症物質を作り出します。
ステロイドはここの脂肪酸に作用して、炎症性物質が出来るのを抑えると同時に、各細胞の遺伝子に作用して、炎症性物質が作られるのを抑えてくれます。
遺伝子の作用に関しては、平たく言えば、細胞代謝・分裂を抑制する方向に働きます。
抗炎症、免疫抑制、たんぱく質同化抑制、血糖値の上昇など細胞の増殖を抑えるように働きます。
糖質コルチコイドの作用は幅広く強力であるため、医療現場の各種治療でも重宝されています。
性ホルモン
男性ホルモンや女性ホルモンと呼ばれているものです。
先にお話した鉱質コルチコイドや糖質コルチコイドと似て非なるものと考えて良いかと思います。
男性ホルモンはテストステロンと呼ばれ、体内に入ると代謝されて効果を発揮します。
たんぱく質同化作用と呼ばれる作用により、通常よりも多くの筋肉を作る事が出来ます。
思春期の男子に分泌量が増え、第二次性徴期には男性らしい身体を形作るのに役立つホルモンです。
成長ホルモンの効果もありますが、この頃の男子の筋肉量が急激に増えるのは、このホルモンのおかげと言えます。
女性ホルモンはエストロゲンと呼ばれ、女性らしい身体を形成するのに役立つホルモンです。
免疫強化や血流改善、コレステロール量の調整、骨量の維持や脂肪の蓄積(エネルギーの保持)などにも役立ちます。
しかし、その反面として閉経後にホルモンバランスが乱れることがあれば、反動により更年期障害、骨粗しょう症、心血管障害などを引き起こすことも知られています。
アナボリックステロイド
ドーピングなどで有名な使うと筋肉がムキムキになるというのは性ホルモンのステロイドです。
筋肉ムキムキになるステロイドは俗にアナボリックステロイドと呼ばれています。
短期間に筋肉を増強出来るので、海外のボディービルダーなどは愛用しているケースが多いです。
テストステロンを材料に人工的に合成されたものが多く、男性ホルモンのメリットを色濃く残している反面、長期に渡る使用では副作用の問題も懸念されています。
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副作用
一般的にステロイドは少量でも長期に渡り使用していれば、副作用が発現することが知られています。
長期投与による副作用
数時間の大量投与
・高血糖
・不整脈
数日~
(中等度以上)
上記に加え精神障害や浮腫、高血圧
1~2ヶ月
(中等度以上)
感染症や骨粗鬆症、精神障害、消化性潰瘍、ムーンフェイス、ステロイド筋症、脂質異常症
3ヶ月以上
(少量でも)
感染症、ムーンフェイス、二次性副腎不全、骨粗鬆症・動脈硬化、白内障、緑内障、消化性潰瘍、高血糖
生体内でプレドニゾロン換算で2.5㎎~5㎎が作られます。
中等度とは10mg~30㎎を指しますので、生体内で作られる数倍量のステロイド量ということです。
アナボリックステロイドの副作用
特にアナボリックステロイドは副作用が多いことで有名です。
使えば寿命を縮めてしまうとまで言われていますが、それは心血管系への副作用が強いからでしょう。
血管もボロボロになりやすく、心臓に負担がかかります。
急性の心血管疾患のリスクが、通常の何倍にも上昇している状態です。
その為、アナボリックステロイド使用者は過度な有酸素運動は控えた方が良いと言われています。
経口摂取の場合では、肝臓を傷つけてしまう肝障害の副作用も報告されています。
その他、精神系にも影響することが知られています。
その原因はホルモンバランスの乱れによる精神的な不安定によるものと言われています。
その他、頭皮の脱毛や身体の多毛、ニキビなど、美容面での副作用の報告もあります。
そして、発がん性の報告も少なからず報告されておりますので、使用する際はリスクをしっかりと踏まえた上で使用してください。
どのようなときに使用する
アレルギー症状がひどい時の鼻炎、痒みなどの炎症止めや、喘息などでの気管支炎など、炎症疾患においては医療現場では重宝されています。
量を増やせば免疫抑制に作用するため、膠原病などの自己免疫疾患の治療にも使われます。
アトピー性皮膚炎で塗り薬で貰ってるが、ステロイド薬を飲んでるけど大丈夫?という質問はよくあります。
先にもお話したように、アトピーで使うステロイドは糖質コルチコイドが主です。
ですので、治療に使う量であれば何も問題はありません。
(但し、発現率は低いですが、外用薬では皮膚萎縮や過敏症などの副作用が認められた場合はすぐに中止してください)
内服薬の場合はムーンフェイス、倦怠感、心血管系等の副作用が特徴です。
医師と相談しながら服用するようにしてください。
急に止めると危険な場合があります。
何故急に止めてはダメなのか?
ステロイドホルモンは身体の中でも合成されています。
その分量の調整は緻密に行われており、身体の中で一定量に保たれるように調整されているのです。
長期でステロイドを内服していると、外から摂取するステロイド量に頼り、体内で合成するステロイド量を減らしてしまいます。
急に薬を止めてしまうと、体内のステロイド量が極端に少なくなってしまい、血糖値や血圧の変動など、代謝系に異常を来してしまう恐れもあります。
その為、ステロイドを止める際は少しずつ減らした方が良いと言われているのです。
医師や薬剤師と相談しながら中止していきましょう。
最後に
ステロイドと言うと怖いイメージですが、医療の現場では日常的に使用されています。
確かに副作用もありますが、治療上有益である場合の方が遥かに多いです。
医師や薬剤師と相談しながら正しく使用しましょう。
ではでは。
参考文献
「ステロイド薬の基礎」 東北大学大学院薬学研究科 平澤 典保
林瑶子 著 · 2014 — 薬物相互作用(29―ステロイド の薬物相互作用)