【睡眠導入剤】非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使い分け

医療系
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここでは睡眠導入剤の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使い分けをまとめています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

先にまとめ:大まかな使い分け

  • ベンゾジアゼピン系にはサブユニット選択性はない
  • 非ベンゾジアゼピン系はα1サブユニット選択性が高い
  • 特にゾルピデムはα1に選択性が高く、α5への選択性が低い
  • α1選択性はゾピクロン<ゾルピデム
  • 口中の苦み:ルネスタ<ゾピクロン
  • ルネスタ服用時に飲酒は注意
  • 肝機能低下例にはゾピクロンやルネスタが良い
  • 腎機能低下例には通常量で使用可能
  • 麻酔前投与の適応があるのは、ゾピクロンのみ

ベンゾジアゼピン系との違い

非ベンゾジアゼピン系の作用は、ベンゾジアゼピン受容体に作用することで、睡眠効果を発揮します。

 

『非』とついてますが、これは構造上ベンゾジアゼピン骨格ではないので、『非』ベンゾジアゼピン系と呼ばれているだけです。

 

その為、ベンゾジアゼピン系であっても非ベンゾジアゼピン系でも、同じベンゾジアゼピン受容体に作用します。

しかし、厳密にはベンゾジアゼピンと作用点が異なるので注意が必要です。

 

薬剤名 半減期(hr) 主なCYP
超短時間型 ゾルピデム(マイスリー) 2 3A4,2C9,1A2
トリアゾラム(ハルシオン) 2~4 3A4
ゾピクロン(アモバン) 4 3A4
エスゾピクロン(ルネスタ) 5~6 3A4,2E1
短時間 エチゾラム(デパス) 6 2C9,3A4
リルマザホン(リスミー) 10 3A4
ブロチゾラム(レンドルミン) 7 3A4
ロルメタゼパム(ロラメット等) 10
中時間型 エスタゾラム(ユーロジン) 24 3A4
フルニトラゼパム(サイレース等) 24
ニトラゼパム(ベンザリン等) 28
長時間型 クアゼパム(ドラール) 36 2C9,3A4
フルラゼパム(ダルメート) 65 3A4
オレキシン受容体拮抗 スボレキサント(ベルソムラ) 10 3A
レンボレキサント(デエビゴ) 50 3A
メラトニン作動 ラメルテオン(ロゼレム) 1 1A2

 

むかたけ
むかたけ

今回は非ベンゾジアゼピン系のお話です。

 

サブタイプ:GABAA受容体

頭の中には精神の調律を司るGABAA受容体というものがあります。

GABAA受容体には、物質が結合する受容体があります。

 

このGABAA受容体の結合部位の70~80%は、ベンゾジアゼピン結合部位とされています。

他にはGABA結合部位などがあります。

 

ベンゾジアゼピン結合部位(ω受容体)

ちなみに、このベンゾジアゼピン結合部位はω受容体とも呼ばれています。

ω受容体にはいくつか種類があり、中枢型のω1とω2、末梢型はω3で分かれています。

 

中枢型のω1とω2は、主な分布が異なります。

ω1:小脳・黒質・淡蒼球
ω2:脊髄・海馬・線条体

 

GABAA受容体は、複数のユニットから成り立っています。

各ユニットはα、β、γ、σサブユニットからなります。

 

αサブユニット

このうち、ベンゾジアゼピン系受容体作動薬が結合するのはαサブユニットです。

さらにこのαサブユニットは、α1、α2、α3、α5のサブタイプが存在します。

 

結合するサブタイプによって効果が異なります。

α1:催眠作用
α2、α3、α5:筋弛緩・抗不安作用
※特にα2は抗不安、α5は筋弛緩が強いとされています。

 

ω1受容体にはα1が豊富で、ω2受容体は、α2、α3、α5が豊富と考えられています。

 

非ベンゾジアゼピン系受容体作動薬は、α1サブユニットに親和性が高いことが知られています。

そして、α5には特に親和性が低いとされています。

 

作用部位のまとめ

長くなりましたが、簡単にまとめると以下になります。

  • 脳内に精神の調律を司るGABAA受容体がある
  • GABAA受容体の主な結合部位は、ベンゾジアゼピン受容体(ω受容体)とされている。
  • ω受容体はω1~3までがあり、ω1ω2が中枢、ω3は末梢に分布。
  • GABAA受容体にはα、β、γ、σの種類がある。
  • ベンゾジアゼピンが結合するのは主にα部位
  • αにはタイプがあり、α1、α2、α3、α5がある。
  • それぞれのタイプで作用が違う
  • 催眠作用はα1、それ以外は筋弛緩・抗不安作用

 

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選択性

非ベンゾジアゼピン系受容体作動薬は、α1サブユニットに親和性が高いことが知られています。

 

しかし、ベンゾジアゼピン系睡眠薬には先程のサブユニットの選択性はありません。

なので、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の方が、筋弛緩や抗不安作用の症状が出にくいとされており、副作用のふらつきや転倒なども起きにくいことで有名です。

 

ちなみに、ゾルピデムの方がゾピクロンより、α1サブユニットに対する親和性が高いという結果があります。

ゾルピデムは他の薬剤に比べてα1の親和性が高く、α5の親和性が低いです。

その為、筋弛緩によるふらつきが他よりも出にくいことが特徴です。

 

副作用

ゾピクロンの副作用で多いのは、口中の苦味があります。

この副作用は、服用直後よりも翌朝に見られることが多いです。

これは、代謝物の苦味成分が唾液腺に現れるためと考えられています。

 

ゾピクロンの光学異性体のルネスタ(エスゾピクロン)は、この苦みが緩和されているのが特徴です。

ちなみにルネスタはアルコールと併用してしまうと作用が増強するおそれがありますので注意が必要です。

 

ルネスタの代謝酵素は主にCYP2E1と3A4です。

CYP2E1はアルコールの代謝酵素と同じですので、ルネスタの血中濃度が変動する要因となります。

その為、ルネスタ服用の患者に対しては日常的に飲酒しているか確認した方が良いでしょう。

 

ゾルピデムは肝臓や胆道系の検査値異常が見られることがあります。

肝硬変患者においてAUC5.3倍、Cmaxは2倍に上昇したとデータがあり、重篤な肝機能障害患者では禁忌ということになっています。

そのため、肝臓に心配がある方の場合は、ゾピクロンやルネスタを使うほうが良いとされています。

 

腎機能低下例に関しては、ゾルピデム、ゾピクロン、ルネスタは通常量での使用が可能です。

しかし、ルネスタはAUCや半減期の延長が認められているので、少量からの使用が推奨されています。

 

麻酔前投与

非ベンゾジアゼピン系で麻酔前投与の適応があるのは、ゾピクロンのみです。

ルネスタはゾピクロンの光学異性体ですが、麻酔前投与の適応はありませんので注意が必要です。

ベンゾジアゼピン系のレンドルミンは不眠症の他にも麻酔前投与にも適用がありますが、レンドルミンに関しては、0.5㎎は麻酔前投与にのみ適用が通っており睡眠薬として利用が出来ませんのでご注意ください。

 

 

むかたけ
むかたけ

睡眠導入剤としてのレンドルミンは0.25㎎のみですね。

 

まとめ:大まかな使い分け

  • ベンゾジアゼピン系にはサブユニット選択性はない
  • 非ベンゾジアゼピン系はα1サブユニット選択性が高い
  • 特にゾルピデムはα1に選択性が高く、α5への選択性が低い
  • α1選択性はゾピクロン<ゾルピデム
  • 口中の苦み:ルネスタ<ゾピクロン
  • ルネスタ服用時に飲酒は注意
  • 肝機能低下例にはゾピクロンやルネスタが良い
  • 腎機能低下例には通常量で使用可能
  • 麻酔前投与の適応があるのは、ゾピクロンのみ

最後に

大まかな使い分けは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)
睡眠薬酒石酸ゾルピデム(マイスリー錠)の薬理学的特性と臨床効果 日薬理誌

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