【糖尿病】造影剤使用時にメトホルミンを休薬する理由

薬局業務
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薬局で仕事をしているとこのような質問を受けることがあります。

 

『今度造影剤を使うからメトホルミンて薬を中止するように言われたけど、どういうこと?』

 

今回は造影剤使用時にメトホルミンを休薬する理由についてお話します。

造影剤やメトホルミンをお使いの方の参考になれば幸いです。

 

メトホルミン

そもそも、『メトホルミン』ってなんぞや?

という方もいると思います。

 

メトホルミンとは糖尿病治療薬です。

血糖値を下げるお薬の1つとして、現場ではよく処方されています。

 

添付文書上での作用メカニズムは、

メトグルコ錠250mg.pdfより

ということになっています。

 

難しくてわからん

 

本当にざっくり説明してしまえば、

 

『身体の代謝(糖利用)を上げて血糖値を下げる作用』

 

と言ったところでしょうか(;^ω^)

 

『すげー!代謝が上がって血糖値も下げれるんならどんどん使おう!』

 

と言いたくなりますが、そこはお薬ですのでちょっとタンマです。

さすがに使い過ぎるとリスクもあります。

 

乳酸

身体の糖分がエネルギーとして利用される際には、少なからず『乳酸』というものが発生します。

この乳酸ですが、有酸素時時には発生は少なく、無酸素運動時によく発生します。

 

 

むかたけ
むかたけ

糖(グルコース)は酸素(О₂)がない条件下だと、乳酸に変わりやすくなるということですね。

 

酸素が不十分な条件下では乳酸が産生しやすくなる

ということですね。

 

よく全力疾走とか筋トレとか高強度の運動をやってて

『あー乳酸めっちゃたまってるわー』

 

という疲労物質で知られているあの乳酸ですね。

 

乳酸アシドーシス

メトホルミンは代謝を上げてどんどん糖分をエネルギーに替えてくれます。

しかし、糖代謝のペースが上がり過ぎてしまうと、酸素が間に合わなくなってしまい乳酸がどんどん作られてしまいます。

 

 

乳酸という物質は酸性です。

むかたけ
むかたけ

『酸』て付いてますしね。

 

乳酸は微量であれば問題はありませんが、多くなりすぎると身体の酸性とアルカリ性のバランスが崩れてしまう原因となってしまいます。

 

乳酸が増えすぎて身体が酸性に傾きすぎてしまう症状を

『乳酸アシドーシス』

といいます。

 

実は、メトホルミンの副作用では低血糖症状と同じぐらい、この乳酸アシドーシスが重要となっています。

 

乳酸アシドーシスの主な症状は

  • 息がフルーティーな香り
  • 極度の倦怠感
  • 筋肉のけいれん
  • 腹痛や下痢
  • 頭痛
  • 過呼吸
  • 意識障害

など多岐に渡ります。

 

人間の身体は完全な中性ではなく、若干アルカリ性に傾いています。

 

むかたけ
むかたけ

pHでいうと、約7.4の弱アルカリ性ですね。

 

その為、今までアルカリ性でうまく代謝出来ていたものが、アシドーシス(酸性化)により身体の各種代謝がうまく出来なくなってしまいます。

身体が酸性に傾いてしまうことで生じる有害な作用

ということになります。

 

フルーティーな香りの息は、ケトン臭と言って、糖分すら失われて代わりにケトン体を代謝している兆候ですので注意が必要です。
ちなみにケトン臭は酸っぱいリンゴのような臭いとも言われています。

 

造影剤とは?

造影剤』と聞いても馴染みがあまりない人は多いと思います。

造影剤は身体の中の血管や臓器の状態などを検査する際に使用される薬剤になります。

 

 

造影剤を入れることで臓器の形がくっきりとわかります。

 

むかたけ
むかたけ

有名どころは健康診断などで行われる胃の造影剤『バリウム』ですね。

 

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メトホルミンと造影剤がダメな理由

いよいよ本題です。

何故メトホルミン服用時に造影剤を使うことがダメなのでしょうか?

 

それは、

『造影剤を使用することで、メトホルミンの乳酸アシドーシスのリスクが上がってしまう』

という理由があるからです。

 

メトホルミンも造影剤も『腎臓』で代謝、排泄されるお薬です。

その為、造影剤を使うと一時的にメトホルミンの血中濃度が上がってしまいます。

 

結果、通常よりも多いメトホルミンを服用したことと同じになり、乳酸アシドーシスになりやすくなってしまうのです。

 

ちなみに造影剤は『ヨード造影剤』がアウトなだけです。

他のタイプの造影剤ならセーフとなっています。

 

胃の検査時で使用することで有名な『バリウム造影剤』はヨード造影剤ではないのでセーフとなりますね(‘ω’)ノ

 

添付文書でもヨード造影剤使用時はメトホルミンを休薬するように書かれていますね。

 

 

いつからやめる?

メトホルミンの半減期は約4~5時間です。

その為、飲んでから24時間後には身体から抜けています。

 

身体から薬が抜けるまでの時間についてはこちらの記事をご参考下さい。

 

メトホルミンを休薬してから24時間以上経過していれば、ヨード造影剤を使用しても問題はないでしょう。

そして、検査後のメトホルミンの再開に関しては、ヨード造影剤投与後48時間以上経過した後となっています。

 

 

この辺りはわかりやすく

医師

『検査当日±2日間はメトホルミン休薬』

としている病院が多いようですね。

 

メトホルミン含有薬

メトホルミンは成分名で、薬の名前の製品名は違うことが大半です。

 

現在日本で発売されているメトホルミン含有薬は以下の通りです。

  • グリコラン
  • メトグルコ
  • 各種メトホルミン後発
  • メタクト配合錠
  • エクメット配合錠
  • イニシンク配合錠
  • メトアナ配合錠

※2022年9月時点

 

こちらに該当するお薬を服用している際は、ヨード造影剤の使用時には休薬する必要がありますのでご注意ください(*’ω’*)

 

まとめ

  • メトホルミンは代謝(糖利用)を上げる糖尿病治療薬
  • 乳酸アシドーシスに注意
  • 造影剤の中でもヨード造影剤がアウト
  • 検査当日±2日間はメトホルミン休薬

 

最後に


  

『造影剤使うから薬中止して』

と、いきなり言われても造影剤に馴染みがないとびっくりしますよね~。

こちらの記事が造影剤やメトホルミンをお使いの方の参考になれば幸いです。

ではでは。

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