薬局で働いてるとこんな質問をよくされます。
血圧の薬の服用って、朝でも夜でも効果は同じですか?
今回は血圧のお薬を服用する時間についてのお話です。
薬を服用する時間が気になる方の参考になれば幸いです。
夕の降圧薬
たまに処方内容で他の薬は朝食後なのに、血圧の薬だけが夕食後に設定されている処方があります。
なので、
血圧の薬を朝食後にすれば、1日の服用回数が1回にまとまるから夕食後じゃなくて朝食後に飲んでもよい?
という質問がたまにあります。
血圧の薬の代表格でアムロジピンというお薬があります。
今回はアムロジピンを例にご説明します。
アムロジピンの半減期は約36時間です。(ノルバスク5mg例)
ノルバスク錠添付文書より
その為、一週間程度服用を継続すれば定常状態になり血中濃度は安定します。
半減期や定常状態に関してはこちらをご参考下さい(^ω^)
なので、アムロジピンを朝飲もうが夕飲もうが、
結局は定常状態になっているので効果は対して変わらないように思われます。
しかし、こんな研究があります。
降圧薬を朝投与した場合と夜に投与した場合の心血管障害の発生割合を確認する研究です。
結果的に、
『夜に投与した場合は、朝に投与した場合と比べて心血管障害の発生割合が0.39倍低下した』
という研究結果が出ました。
降圧剤を夜に服用した方が脳卒中等のリスクが下がるということですね。
血中濃度のピーク
血中濃度的にはいくら定常状態になっているとはいえ、服用のタイミングが違えばお薬の血中濃度ピークも違います。
定常状態とは血中濃度が一定の濃度に保たれていることを指しますが、血中濃度が全く同じというわけではありません。
定常状態も厳密に見れば『山あり谷あり』な濃度推移となっていますね(*´Д`)
その為、夕に服用することで夜間に徐々に血中濃度が立ち上がり、夜間や早朝の高血圧を効率良く抑えることが出来ます。
先程のアムロジピン(ノルバスク)の血中濃度推移を見てみましょう。
服用後の約6時間後に血中濃度がピークになっているのがわかります。
つまり、定常状態時における血中濃度のピークも服用後の数時間後にやってくるということです。
その為、夕食後や寝る前に降圧剤を服用すれば、夜間や早朝時には血中濃度が高い状態となります。
逆に朝服用した場合、定常状態時といえども夜間や早朝時には血中濃度が低い状態ということになります。
多くの降圧剤は数時間以内にピーク
ちなみにこれはアムロジピンを例にしている為、ピークが6時間となります。
他の降圧剤の場合は半減期もピークも異なりますので、ご注意ください。
まぁ、多くの降圧剤のピークは数時間以内に現れるので似たようなものですが(;^ω^)
中には1~2時間でピークになる降圧剤もあります。
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血圧が上がるタイミングは人それぞれ
血圧に関しては昼間に高くなるタイプもあれば夜間に高くなるタイプもいて人それぞれです。
そして、一般的には夜間や早朝に血圧が高くなってしまうタイプの方が脳卒中等のリスクは高いです。
特に、早朝に急激に血圧が上がるタイプは最もリスクが高いとされています。
危険な早朝高血圧 | 高橋医院 (hatchobori.jp)より
その為、夜間や早朝に血圧が高くなるタイプの人が夜に血圧の薬を飲むと、効率的に夜間や早朝の高血圧を抑えられます。
もし、血圧の薬が敢えて夕食後や寝る前などで処方されていたらその人は夜間や早朝の高血圧症の可能性が高いです。
その為、
夜の血圧の薬を朝飲んでも良いですか?
という質問に対しては、
敢えて夕食後に設定してる場合もあります。
なので、1度主治医と相談の上判断した方が良いです。
というような形でお話するようにしています。
ちなみに、血圧の薬を夜飲んだ方が良い理由を血中濃度の振り幅メインで説明しましたが、他にも要因があることは示唆されています。
- 代謝に関わる肝臓への血流量が昼より夜の方が少ない
- タンパク結合率は薬剤によって日内変動がある
- 腸の蠕動運動は昼より夜間の方が少ない為、夜間の方が吸収が小さくなる
- 食事と絶食の関係上、胆汁は朝に最も溜まりやすいので、脂溶性薬物は朝吸収されやすい傾向にある
などなどの生理活性も要因になってそうですね(*´Д`)
最後に
少しでも脳卒中とかのリスクを下げたいようであれば夜に降圧剤を飲んだ方がよさそうですが、血圧のタイプにもよるのでしょうね…(;^ω^)
血圧の薬に関しては、服用時点を変えたいときは主治医と相談するのが無難ですね。
参考になれば幸いです。
ではでは。
参考文献
『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門』柴田重信