【糖尿病】SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の使い分け

薬局業務
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本記事は私の薬剤師業務のあんちょこ、備忘録として記録しています。

ここでは糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の使い分けをまとめています。

私の業務経験や各書籍の情報を基に作成していますので、医療業務の参考になれば幸いです。

 

先にまとめ:大まかな使い分け

SGLT2阻害薬

  • 慢性心不全適応はフォシーガとジャディアンスのみ
  • 半減期の長い製剤から半減期が短い製剤に切り替えたことで、夜間頻尿の副作用が改善した報告がある
  • 最も半減期が短いのはデベルザ(5.4hr)
  • SGLT2阻害薬は主にグルクロン酸抱合の為、代謝拮抗等は少ない
  • 腎機能低下例には慎重投与。
  • クレアチニンクリアランス30未満では効果は期待出来ない

GLP-1受容体作動薬

  • 脳、胃、膵臓、肝臓など、多臓器に作用する。
  • 単剤では、低血糖リスクは低い
  • SU剤との併用で低血糖リスク増
  • DPP-4阻害薬との併用のは有効性や安全性は認められていない。
  • リベルサスはその日最初の食事又は飲水の前に、コップ半分程の水(120mL)で服用すること

糖尿病治療薬の選択

1型の場合はインスリン製剤が絶対的な適応になりますが、2型の場合は段階を踏みます。

いきなりSU剤を使うDr.もいますが、ガイドラインに沿うとビグアナイド系(メトホルミン)が第一選択になってます。

ちなみに『アメリカ糖尿病学会』『ヨーロッパ糖尿病学会』『日本糖尿病・生活習慣病ヒューマン学会』全部が推奨してますが、現場の主治医の判断に任せてる印象です。

 

ビグアナイド系(メトホルミン)は、インスリン分泌を促進することなく血糖を改善してくれます。

80歳以上や腎機能に問題があれば、DPP-4阻害薬も第一選択になります。

 

『糖尿病標準診療マニュアル』では、

  • 最初数ヶ月は食事・運動療法で様子を見ます。
  • それでダメなら薬を使います。
  • 薬を使う場合は基本的には1剤使って様子見。
  • 数ヶ月様子見てダメならもう1剤追加。

このような使い方をします。

 

詳しくはこちらをどうぞ。

糖尿病標準診療マニュアル – 一般社団法人 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会 (human-data.or.jp)

 

評価判定に一番使われる指標は、HbA1c<7%に近づいてるかどうかです。

  • 年齢や腎機能に問題なければ、ビグアナイドを選択。
  • ダメならDPP4阻害薬を上乗せ。
  • それでもダメなら、SU剤、SGLT2阻害薬、αグルコジターゼ阻害薬、チアゾリジン系などを組み合わせる。

このような形です。

 

ただ、心血管疾患の既往や心不全、微量アルブミン尿、蛋白尿、肥満を有する場合などには、SGLT2阻害薬を優先して使用する場合もあります。

また、eGFR が十分に保たれていない場合は GLP-1受容体作動薬の追加を推奨している場合もあります。

 

ちなみに欧米人はインスリン抵抗性が多いのに対して、日本人はインスリン分泌不全が多いのが特徴です。

なので、まずは食事や運動で身体のインスリン機能の改善化を図ります。

 

SGLT2阻害薬

グルコースは腎臓の近位尿細管のSGLT2を介して再吸収されるますが、SGLT2阻害薬はこのグルコースの再吸収を阻害することによって血糖降下作用を現します。

インスリン非依存的に血糖降下作用発現することから、1型糖尿病患者に対しても使うことが可能となっています。

 

循環血流量の是正などにより、心不全にも効果があるとされていています。

現在では、ダパグリフロジン(フォシーガ)エンパグリフロジン(ジャディアンス)で慢性心不全の適応が承認されています。

副作用

SGLT2阻害薬で主に報告されている副作用は、低血糖やケトアシドーシス、頻尿や脱水、皮膚症状、尿路感染症などが挙げられます。

SGLT2阻害薬の服用は 1日1回の内服製剤ではありますが、半減期は異なります。

 

症例報告レベルではありますが、半減期の長いSGLT2阻害薬から半減期が短い製剤に切り替えたことで夜間頻尿の副作用が改善したという報告もあります。

現場での副作用として多いのはやはり頻尿が多いのが印象的です。

その他、膀胱炎などにも注意が必要となっています

 

現在、最も半減期が長いものは、イプラグリフロジン(スーグラ)で、最も短いものは、トホグリフロジン(デベルザ)となっています。

 

薬剤名 半減期(hr)
スーグラ(イプラグリフロジン) 12
フォシーガ(ダパグリフロジン) 12
ルセフィ(ルセオグリフロジン) 11
デベルザ(トホグリフロジン) 5.4
カナグル(カナグリフロジン) 10
ジャディアンス(エンパグリフロジン) 9.9

 

代謝

SGLT2阻害薬は代謝系にCYP関連は少なく、主にグルクロン酸抱合により代謝されます。

 

腎機能低下例には血糖降下作用が発揮しにくいとされており、 クレアチニンクリアランスが30以上までは、慎重に投与することとなっています。

クレアチニンクリアランス30未満においては、効果が期待できないため投与しないこととされています

ちなみに透析性があるのは、現在のところはデベルザのみとなっています。

 

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GLP1-作動薬

GLP-1は消化管から分泌される内因性のホルモンの一種で、血糖依存的にインスリンを分泌させる働きを持ちます。

それに加えて、グルカゴンの分泌抑制作用を持ち、インスリン感受性の向上や食欲抑制、胃内容物排出低下により体重減少の効果があるともされています。

 

生体内の GLP-1は DPP-4により生体内で速やかに分解されてしまうため、GLP-1の作用を長時間持続できる GLP-1受容体作動薬が開発されるに至りました

簡単に言うとGLP1受容体が作動すると、

  • 脳では満腹感を促進して食欲を抑制。
  • 胃では胃の働きをゆっくりする。
  • 膵臓ではインスリンの分泌を促進、β細胞を増殖させ細胞死を抑え、グルカゴンの分泌も抑制。
  • 肝臓では糖の過剰産生を抑える。

 

このように、各臓器に対して作用します。

おおよそHbA1cを0.5~1.4%低下させる報告があります。

 

GLP-1受容体作動薬は、インスリンの分泌を血糖依存的に促進するため単独では低血糖を起こしにくいことが特徴です。

 

他の内服の糖尿病治療薬と比較して、食欲抑制や胃内容物の排出抑制の作用があるため、体重増加の抑制や体重減少が必要な場合に有効です。

心血管イベントや腎障害の発症リスク低減に関するエビデンスを報告されているので、合併症のリスクが高い患者にも投与が行われます。

 

GLP-1受容体作動薬の経口薬

ほとんどは注射製剤でしたが、2021年に内服のリベルサス錠(セマグルチド)が承認されました。

なので、現在では注射薬以外のGLP-1受容体作動薬も処方が可能になりました。

 

服用時の注意点

リベルサスは食事の影響を受けることから、基本的には空腹時服用となっています。

それに加え、服用する水分量によっても影響を受けます。

 

基本的には、その日最初の食事又は飲水の前に、コップ半分程の水(120mL)で服用することとされています。

コップ1杯分(約240mL)で服用した場合、AUCが40%程も低下してしまう報告もあります。

 

その為、胃の水分量によっても吸収が低下する恐れがある為、その日最初の食事前又は飲水前にという制限があります。

そのような服用の注意から、服用後30分は飲食や他の薬との併用は控えるように言われています。

 

むかたけ
むかたけ

そんなこともあるので、多くのDrは服用時点を起床時にしています。

 

ちなみに、14mgを使いたい場合、7mgを2錠で代用することはできませんのでご注意ください。

 

奇数処方日に注意

リベルサス錠はPTPをミシン目以外に切ることは出来ません。

吸湿性の関係で、PTPをミシン目以外で切ってしまうと薬がダメになってしまいます。

その為、患者への説明時には、PTPはミシン目以外で切らないように指導する必要があります。

 

ミシン目は2錠ずつとなっている為、奇数日処方の場合はミシン目以外で切らなければなりません。

その際は、疑義紹介をして偶数日に変えてもらうなどの措置をとりましょう。

 

相互作用

相互作用については他の糖尿病治療薬との併用により血糖降下作用が増強されることがあります。

特に、SU剤については低血糖のリスクがより増大するため、併用する際はSU剤の減量を考慮する必要があります。

 

いずれの薬剤においても、DPP-4阻害薬との併用については有効性や安全性については認められていません。

DPP-4阻害薬を使っても十分な血糖コントロールが得られない時は、長時間にわたって作用して空腹時血糖も食後血糖も下げるGLP-1受容体作動薬への切り替えの検討するのが良いとされています。

 

ビデュリオンについては、SU剤、ビグアナイド系 、チアゾリジン系と併用可能であり、インスリンとの併用は認められていません。

加えてに内容物排泄遅延に伴い、クマリン系薬剤(ワーファリンなど)やスタチン系(ロスバスタチンなど)を併用した場合吸収に影響を与えるおそれがあります。

 

SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、薬理作用の点から体重減少の効果も期待できますので、巷ではダイエット目的で使用されているケースが多いです。

多くは最初の1か月程は、水分量の減少や食欲抑制で体重は落ちます。

しかし、あくまでも過剰な糖分や水分・代謝系の是正を行うだけですので、生活習慣を変えない限りはそれ以上の効果は見込めない可能性が高いので、注意が必要です。

 

まとめ:大まかな使い分け

SGLT2阻害薬

  • 慢性心不全適応はフォシーガとジャディアンスのみ
  • 半減期の長い製剤から半減期が短い製剤に切り替えたことで、夜間頻尿の副作用が改善した報告がある
  • 最も半減期が短いのはデベルザ(5.4hr)
  • SGLT2阻害薬は主にグルクロン酸抱合の為、代謝拮抗等は少ない
  • 腎機能低下例には慎重投与。
  • クレアチニンクリアランス30未満では効果は期待出来ない

GLP-1受容体作動薬

  • 脳、胃、膵臓、肝臓など、多臓器に作用する。
  • 単剤では、低血糖リスクは低い
  • SU剤との併用で低血糖リスク増
  • DPP-4阻害薬との併用のは有効性や安全性は認められていない。
  • リベルサスはその日最初の食事又は飲水の前に、コップ半分程の水(120mL)で服用すること

最後に

大まかな使い分けは以上となります。

医療業務の参考になれば幸いです。

ではでは。

参考文献
今日の治療薬2022
第3版腎機能別薬剤投量POCKETBOOK
各薬剤添付文書
基礎からわかる類似薬の服薬指導(ナツメ社)

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