競技に臨む人なら誰でも耳にしたことがある言葉の1つに、ドーピングがあると思います。
風邪薬でドーピングに該当してしまった話もありますが、どうやって見分ければ良いのでしょうか?
今回は、身近なお薬である風邪薬のドーピング薬の判別方法と、ドーピングにならない為の服用間隔についてお話します。
ドーピングってなに?
ドーピングとは、
『スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為』
とされています。
簡単に言えば、運動能力を高めるための不正行為を指します。
ドーピングが発覚して優勝取り消しになった!
なんてお話は良く耳にします。
意図的にドーピングするのは絶対に駄目ですが、知らずに口にした薬などが実は禁止薬物に該当し、ドーピングになってしまうというケースもあります。
いわゆる『うっかりドーピング』というものです。
うっかりドーピングにならないように、薬の成分には注意する必要があります。
ドーピングになる薬・成分
代表的な禁止薬物の分類です。
この限りではありませんので、ご注意ください。
S1.蛋白同化薬 | 男性ホルモン、蛋白同化ステロイド、クレンブテロール |
---|---|
S2. ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質 | エリスロポエチン製剤、HIF活性化薬、成長ホルモン |
S3.ベータ2作用薬 | ①~④の吸入薬は、添付文書に従って使用される時は禁止ではない。 ①サルブタモール(24 時間で最大1600μg、いかなる用量から開始しても12 時間で800μg を超えないこと) ②ホルモテロール(24 時間で最大投与量54μg) ③サルメテロール(24 時間で最大200μg) ④ビランテロール(24時間で最大25μg) |
S4.ホルモン調節薬および代謝調節薬 | SERMs、抗エストロゲン薬、インスリン |
S5. 利尿薬および隠蔽薬 | 利尿薬〔降圧薬配合剤〕、イソソルビド、プロベネシド(※他の痛風治療薬は禁止ではない) ※局所眼科用使用の炭酸脱水素酵素阻害薬(ドルゾラミド、ブリンゾラミド等)は禁止でない |
S6.興奮薬 | エフェドリン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン(特に市販の感冒薬、鼻炎治療薬、鎮咳薬など)、起立性低血圧治療薬、メチルフェニデート ※点眼、点鼻に使用される血管収縮薬は禁止ではない。 ※アドレナリン(単独および局所麻酔薬との併用)の局所使用(鼻、眼等)は禁止されない ※コカイン・MDMAは濫用物質 |
S7.麻薬 | モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ブプレノルフィン、ペンタゾシン(向精神薬も禁止表では、麻薬のセクションに含まれる) ※コデインは、禁止物質ではない ※ジアモルヒネは濫用物質 |
S8. カンナビノイド | 大麻由来物質(ハシシュ/マリファナ)大麻製品、テトラヒドロカンナビノール ※カンナビジオールは除く ※テトラヒドロカンナビノール(THC)は濫用物質 |
S9.糖質コルチコイド | 抗アレルギー薬配合剤、プレドニゾロン 経口、経直腸、静脈注射、筋肉注射、口腔内使用(2021年3月22日付WADA通達)は禁止 ※外用、局所注射など禁止ではない |
https://www.toyaku.or.jp/health/usemedicine/nodoping_medical.htmlより
風邪薬でもドーピング
ドーピングの可能性として最も身近にあるのは風邪薬です。
え!?風邪薬ってドーピングになっちゃうの!?
と思われる方もいると思います。
正確には、風邪薬に配合されている成分によって、ドーピングになる可能性があるということです。
その為、しっかりと成分を確認してから風邪薬を選んで飲めば問題ありません。
風邪薬でドーピングになり得る成分
風邪薬には、エフェドリンと呼ばれる成分が含有しているお薬もあります。
エフェドリン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリンなどがそれに該当します。
エフェドリンは交感神経を刺激して、呼吸を楽にしたり、心血管系の循環を良くします。
しかし、それが競技成績に影響があるとされているため、禁止薬物に設定されています。
薬のパッケージに『ドーピング』の旨を書いてくれていればわかりやすいのですが、残念ながら書いていないので、成分表を確認しましょう。
逆に、エフェドリンが含有されていない風邪薬であれば、禁止薬物には該当しませんので、エフェドリンの有無を確認するようにしてください。
スポンサーリンク
漢方薬でも注意が必要
漢方薬は身体に良いといわれているから大丈夫!!
という方は多いですが、漢方薬は特に注意が必要です。
麻黄湯と呼ばれるお薬は、風邪やインフルエンザの時に良く使われますが、こちらには生薬である麻黄(マオウ)が配合されています。
そして、この生薬の麻黄にはエフェドリンが含有されているのです。
その為、漢方薬でも麻黄が配合されているものは禁止薬物に該当しますので、ご注意ください。
漢方薬は中の成分の記載で、『エフェドリン』と記載されていないケースもありますので、心配であればお店の薬剤師に相談してみましょう。
アレルギーの薬でも注意
市販の花粉症薬や鼻炎薬などは、様々な成分が配合されているケースが多いです。
風邪薬でなくても、エフェドリンが含有されているケースもあります。
鼻炎に風邪薬を使用されている方も多いと思います。
花粉症や鼻炎などのアレルギー関連で薬を使用する際は、是非成分表の確認をおすすめします。
競技や条件によって異なる
禁止薬物が入っていても、競技や禁止薬物の含有量によってもドーピングの基準が異なります。
基本的には、禁止薬物の記載があれば服用しないことが無難ですが、やむを得ない場合は、競技団体に相談するようにしましょう。
身体の中に残っていなければOK
ドーピング禁止薬には常に禁止されるものと、競技時に禁止されるものがあります。
エフェドリンは興奮薬に分類される為、競技時に禁止される薬物になります。
その為、競技時でなければ服用しても問題ありませんのでご安心下さい。
しかし、競技前などに体調が悪く、風邪薬を服用したい場合などは十分にご注意下さい。
エフェドリンが抜けるまでの時間
一般的にエフェドリンの消失半減期は3~6時間とされています。
その為、エフェドリンが血中から消失までに、1~2日はかかる計算です。
しかし、消失半減期はあくまでも血中の消失を表したものです。
ドーピング検査は血液や尿を調べます。
その為、風邪薬服用後に1~2日経過して、血液中にはなくても、その先の尿中に残存している可能性はあります。
尿が排泄されて初めて身体から完全に抜けるということになります。
その為、風邪薬を飲んでから競技に臨むのは、最低でも3日以上は空けた方が良いでしょう。
漢方薬は避けた方が無難
2017年の禁止薬物の改定により、新たにヒゲナミンと呼ばれる物質が追加されました。
ヒゲナミンは中枢興奮や心血管系に影響を与える物質です。(S3.ベータ2作用薬に該当)
こちらの物質ですが、ドーピングで常に禁止される薬物に指定されました。
先の『麻黄湯』や『葛根湯』にはヒゲナミン含有の生薬は配合されていません。
しかし、ヒゲナミンは多くの生薬に含有されている為、全てを把握することが難しいと言われています。
漢方薬は特定の成分を完全に把握することは難しい為、ヒゲナミンを知らない間に摂取してしまう恐れが十分にあり得ます。
その為、漢方薬は必須でなければ服用しないことが無難でしょう。
まとめ
- 成分表に『エフェドリン』の記載があったら要注意。
- 風邪薬だけではなく、漢方薬やアレルギー薬の用途で使う薬でも注意。
- 風邪薬(エフェドリン含有)を服用したら、最低でも3日以上空けて競技に臨むこと。
- 必須時以外は、漢方薬は避けた方が無難
最後に
ドーピングは選手生命に直結する事です。
その中でもうっかりドーピングは、本当に悔しい思いをすることになるでしょう。
しかし、適切に対処すれば問題ありません。
薬の購入や服用の際はご注意下さい。
ではでは。
参考文献
https://www.toyaku.or.jp/health/usemedicine/nodoping_medical.html
Global DRO – Home
アンチ・ドーピング – JSPO (japan-sports.or.jp)