インフルエンザでは高熱や痛みを伴うことが多いです。
その時に解熱鎮痛薬を使うことがよくあります。
インフルエンザに対して禁忌レベルとして知られているのがボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)です。
しかし、中には同じNsaids系であるロキソニンが処方されていることもあります。
今回はインフルエンザに対してボルタレンが使えない理由をお話しさせていただきます。
参考になれば幸いです😄
Nsaids系ではボルタレンが最強クラス
Nsaids系の中で最も強力な薬がボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)です。
その強力さは添付文書にも明記されています。
他のNsaids系成分よりも強力である旨が記載されていますね🤔
解熱鎮痛作用が強いのは場合によっては良いことです。
特に、打撲などの外傷に対する痛み止めとしてはうってつけです。
しかし、その反面副作用も強くなります。
Nsaids系の主作用のメカニズムはPG(プロスタグランジン)の生成抑制です。
PGは生理代謝には欠かせない物質です。
炎症を促進させるPGもあれば血管内皮細胞の修復に関わるPGもあります。
ボルタレンはこのPG抑制作用も他のNsaids系に比べて強いとされています。
記載のナプロキセン(ナイキサン)は、ロキソニンと同系統のプロピオン酸系に属しています。
インフルエンザ脳症のメカニズム
インフルエンザ脳症のメカニズムは全て解明されていませんが、インフルエンザウイルスによる脳浮腫や脳圧亢進による血管内皮細胞の障害と考えられています。
ボルタレンを使うことで、血管内皮細胞の修復に関わるシクロオキシゲナーゼ系やPGを過剰に抑えてしまう為に、血管内皮細胞の修復が間に合わず予後不良となってしまいます。
その為、ボルタレンや一部のNsaids系(メフェナム酸やアスピリン)の添付文書に、原則としてインフルエンザ患者には用いないことが記載されています。
※アスピリンは15歳未満が対象
ボルタレンで有意に死亡率が多い
ボルタレン錠のインタビューフォームでは、インフルエンザ脳炎・脳症時における死亡率がジクロフェナクで有意に高いことが記載されています。
その為、ボルタレンに関しては、インフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症している患者には禁忌となっています。
インフルエンザには絶対使用出来ない?
禁忌でインフルエンザの文言があるので絶対使えないと言えば、そうではありません。
あくまでも、『インフルエンザの臨床経過中の脳炎・脳症の患者』に禁忌となっていますので、脳症・脳炎の患者でなければ問題ないことになります。
脳炎・脳症はウイルス性疾患で発症することが多く、発症すると頭痛や吐き気が生じ、症状が重くなると嘔吐やけいれん、意識障害が多くのケースで伴います。
小児の異常行動もこれらの脳のダメージにより関連していると考えられています。
その為、極論インフルエンザであっても脳炎・脳症でなく、特別な理由があればボルタレンを使用することは可能です。
しかし、現実的にはボルタレンを使ってまで解熱鎮痛を行うメリットが少なく、逆にデメリットのみが多くなるのでボルタレンは使用されていません。
脳炎・脳症の心配がないと医師から診断された患者に対してはブルフェン(イブプロフェン)やロキソニン(ロキソプロフェン)が処方されることもありますが、基本的にはNsaids系はあまり使用せず、アセトアミノフェンを使うことが多いです。
インフルエンザにロキソニンは処方される
あくまで現場感にはなってしまいますが、インフルエンザに対してロキソニンは処方されます💦
しかし、前述したようにいくつか条件があっての処方です。
- 脳炎・脳症のリスクが低い(成人など)
- インフルエンザによる頭痛や関節痛の訴え
などなど、あくまでも医師の診断あってということですが、ボルタレンよりも低リスクであるロキソニンやブルフェンは処方されることがあります。
患者にも確認しながら投薬はしていますね👌
しかし、小児に対しての処方はさすが疑義照会を行いますが…😅
最後に
脳炎・脳症のリスクがなければボルタレンも極論使用可能でしょうが、リスクの方が大きいので使わない印象です。
圧倒的にアセトアミノフェンの使用が多いですが、条件によってはロキソニン等を選択する医師もいますので、ケースバイケースですね😃
参考になれば幸いです。
ではでは。